連載

UR団地に見る国産材活用の今㊤ 団地ジャーナリスト 長谷田一平 浜見平団地 自転車置き場、ごみ集積所など 進む低層への活用

平屋の低層建築物の外観
浜見平団地の国産材を活用した自転車置き場

■CLTで伸びる木造率
 実例紹介の前に、まずわが国の国産材の活用状況を簡単に述べておこう。林野庁が今年3月に発表した「20年度の公共建築物の木造率調査」によると、10年前は8・3%だった公共建築物への国産材活用率が、13・1%となり、10年前より5㌽以上も増加。特に国が積極的活用を求めている低層の公共建築物(3階建て以下)に関しての木造率は、10年前の17・9%が26・5%と10㌽近くも伸びた。この上昇の背景には、林野庁と国土交通省が14年に連携して発表した新しい木造建築材CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー=直交集成板)の普及が大きく影響したと言える。CLTはコンクリートに匹敵するほどの強度を保ち、しかも変形しにくい特徴がある。

■いつも木の香りが
 URはそのCLTを活用して昨年3月から6月にかけて、浜見平団地で低層建築物を建設した。同団地は、54年前に建設した賃貸住宅の建て替えを05年から開始し、現在も進行中だ。全3300戸の団地を将来1600戸~1700戸前後の戸数にする計画のようで、今年6月現在、1400戸が完成し従前居住者が戻り入居した。
 CLT工法が採用された低層建築物は、従前居住者の戻り入居が今春始まった5~8階建て119戸の中・高層住宅がある13街区7号棟の近くにあった。建物は写真の通り平屋で延べ126平方㍍。この中に自転車置き場とごみ集積所、オートバイ置き場、防災備蓄倉庫を収容した。
 UR本社技術・コスト管理部によると、低層建築物の構造は木造CLT工法。壁や梁、床には愛媛県産スギを活用、屋根の母屋は岩手県産のカラマツ、垂木は福島産のスギを使ったという。
 バス通りに面して立っていた平屋の低層建築物はダークブラウンで統一され、窓部分などにはアクセントとしてスチール柵が設けられており、一見するとすてきなラウンジ風。オートバイ置き場と防災備蓄倉庫は鍵がかかっていて残念ながら見学することはできなかったが、39平方㍍のごみ集積所と43平方㍍で42台収容の自転車置き場は日中誰でも入れるので内部をのぞいてみた。
 いずれも天井と室内の壁面は全面が木材で覆われており、その木材の存在感と芳香に圧倒された。利用者は「入るといつも爽やかな木のいい香りがするので、すごくいいです」とうれしそうに語る。
 UR本社技術・コスト管理部設計課長の桑原太刀男氏は「集合住宅は耐火建築物として造れとの縛りがあるので国産材の活用はなかなかできない。でも集会所や自転車置き場などといった低層建築物なら、その縛りの外なので国産材を使える可能性はある。国策として国産材の活用が求められているのでURとしても今後何ができるか考えていきたい」と語る。
 次回は花畑団地(東京都足立区)の実例を紹介する。


 はせだ・いっぺい 1947年東京都生まれ。74年に団地新聞「KEY」に入社。公団住宅を中心に40年近く団地を取材。UR、国交省、全国公団住宅自治会協議会、日本住宅管理組合協議会などを担当。編集長、編集主幹を歴任後、2010年からフリーになる。著書に「フォトアーカイブ昭和の公団住宅」(智書房)がある。

連載の最新記事