連載2019.01.01
木材利用の転機となる森林環境譲与税の全自治体への譲与(配分)が2019年度からの実施に向けて進められている。初年度の譲与総額は200億円。国税として1人年額1000円徴収される森林環境税の課税がスタートする24年度の税収は約620億円と見込まれている。譲与税の使途の検討を進めている各自治体で今、何が起きているのか。家具業界は、環境譲与税をどう生かせばよいのか。
森林環境譲与税は区市町村やそれを支援する都道府県に対し、私有林人工林面積、林業就業者数、人口数によって案分し、配分される。
県独自の「森林(もり)づくり県民税」を06年度から導入、「森の力再生事業」の財源にしている静岡県の川勝平太知事は18年度12月定例県議会で、40年先を見通した林業経営に向け、荒廃森林を再生し、森の恵みを次世代に継承するため、環境譲与税をきめ細かな就労支援などに活用することを明らかにした。若者対象の現場見学会や新規就業希望者向け相談会、課題に応じた技術研修などを実施する。
私有林人工林面積で日本一の広さを持ち、人口は80万人を超えて全国17位にランクする政令指定都市・静岡県浜松市。天竜区などの北部森林地域は天竜材で知られ、国の林業成長産業化地域モデル地域に指定されている。同市には初年度約1億2000万円が配分される見通しだが、森林整備や森林施業の合理化に関する基本方針などの見直しを進め、林業・木材産業の振興に取り組んでいく。
人口371万人で日本の区市町村では最も多い横浜市は、森林環境譲与税の使途について、老朽化する市立小中学校の建て替えの際に使用する国産材の購入に充てる考えだ。横浜市税制調査会の試算では、19年度は1億4000万円、以後、段階的に譲与額は増加し、33年度は4億8000万円になると見込んでいる。
同市は09年度から市域の緑の減少に歯止めをかけ、「緑豊かなまち横浜」を次世代に継承するために独自の「横浜みどり税」(市民税均等割額に900円を上乗せ)を行っている。導入した09年度からの9年間で、樹林地約850㌶の保全を行い、緑地の減少に歯止めをかけてきた。
森林環境譲与税は横浜みどり税とは目的が異なるとして、学校の建て替えに活用し、国産木材の価値やぬくもりを子どもたちに伝えていくという。
東京都23区の中で最大の人口93万人を誇る世田谷区には1億2400万円が配分される見通しだが、森林環境税などの使途として「都市と山村との交流」などが挙げられている。同区は1981年に人口3500人の群馬県川場村と協定を結び、区立小学校の全5年生が農業体験や環境活動に参加するなどして交流の輪を広げている。
人口272万人の大阪市は、19~21年度は約1億円、22~24年度は約1億5000万円、25~28年度は約2億2000万円、29~32年度約2億8000万円、33年度以降は約3億4000万円と見込んでいる。公共建築物などにおける木材の利用促進や普及啓発としての木育などの施策を進める同市は、新たな財源活用に取り組んでいる。
一方、人口97万人の政令指定都市・千葉市には初年度約4000万円の配分が見込まれ、間伐など森林整備や木材利用の促進など検討している。
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