連載2020.09.02
この連載記事を基に来春予定している出版に当たり、私はC&Rイームズ(チャールズ&レイ・イームズ)の複合的多面性を語るつもりだが、今回は主にプロダクトデザイン系の図面について記す。
ハーマンミラー社から1950、60、70年代の図面の公開許諾を受けたので、出版の際に、本に付属させたCDに可能な限り多くの図面を収録する予定だ。
図面については、1964年に株式会社モダン・ファニチャー・セールス(現ハーマンミラージャパン)がイームズ作品を中心に国産化して以来、今日まで当時の図面では生産していないことから、イームズ研究者である私のところに「来てくれた」という経緯があった。
既に使われていない図面だが、私にとっては、イームズのプロダクトデザイン系の最も進化の著しい原点的な作品(図面)であり、極めて貴重な存在であったのだ。その図面は、主に部品の詳細図が大半を占めていた。それらには私なりの大きなコンセプトの一つである「巨視と微視」を判別できる要素が含まれているのだ。
量産化とは、基本的にはKDシステム(Knock Down=組み立て、解体の繰り返し可能)で、特にイームズ作品(ハーマンミラー製品)は、別格であることが分かる。出版の際にも貴重な部品図面を載せて解説したい。
しかし何分、およそ50~70年前の図面(当時のコピー)であるため劣化も激しく、図面上の英文解読は難しいものもある。
イームズ作品に関心ある人々は、主にチェアに引かれていると想像している。確かにチェアには魅力がある。しかし私は、彼のテーブルのデザインも大好きで、その構造、KD方法、素材の扱い方、そして膨大なバリエーションとそれを表現するシステムは素晴らしいものだ。出版した際にご覧いただけると思っている。
これらの図面を基に2013~18年に武蔵野美術大学で「イームズの図面研究」を行ったことも付記させていただく。
今、C&Rイームズの多才を通して全貌を探ると、プロダクト系と映像系および万博などエキシビション系の新しい見せ方などにおいて、共通する重要なキーワードやキーセンテンスを読み取れる。出版時、新説を披露できればと原稿用紙に向き合っている。
図面を語る際に、やはり気になるのが日本における量産化の図面であり、比較すると面白い。日本の製造業は古くから経験値(知)を積み上げて成長してきた。そのため日本の家具業界においては、ハーマンミラー社のような合理的な部品図面はなかった。実際には東京五輪や大阪万博を経て、新しい暮らしへと変貌する際に、スチール家具の量産化が始まり、精密な図面製作へと進んでいった。
ハーマンミラー社の図面は量産用として世界的に良いお手本といってよいだろう。
ちなみにC・イームズは10代のころに父親を亡くし、高校に通いながら鉄鋼所で働いていたことで図面力が育ったようである。そのころから天賦の才は芽生え、後年には二物どころか三物以上を授かり、多領域の才覚者になっていく。
そのような観点から、イームズは「ルネサンス人間」と言われている。いっそのことダビンチとの比較を語っても面白いと思っている。もちろん言うまでもなく、時代と背景が大きく異なるため、安易に書けないのは承知しているが……。
※次回は10月7日号に掲載します。
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