連載

平成カウントダウン 新時代の指針〈上〉
マカロニデザイン 欲しい人に、欲しい家具を

木取りから加工、椅子張り、塗装、納品まで全てを仕事としたいと語る野﨑氏
ショールームには、インテリア小物や、アンティークなドアノブなどが並ぶ

 「家具が売れないこのご時勢、何とかならないか」。メーカーから悲鳴に近い声が上がっている。この市況の厳しさの中、ユーザーニーズを的確につかみ、ビジョンを持って家具をつくり続けている会社がある。昨年、横浜の街中にある工場の建屋にショップをオープンしたマカロニデザイン。「欲しい人に欲しい家具を納め、良い家具を作れる人材を育てられる環境がつくりたい。それが僕らの存在理由」。同社の野﨑義嗣代表の軸はぶれない。平成が終わろうとする今、新たな時代を迎える業界の可能性を探りつつマカロニデザインを訪ねた。(若林良行記者)



 京浜東北・根岸線の山手駅から、幕末の横浜開港時に駐留していた英国軍の射撃場の跡地だという直線道路を抜けた住宅街の一角にその店はあった。しゃれた喫茶店風の店構え。古いドアノブをひねって店内に入ると、趣のある丸テーブルや質素な木の椅子が置かれ、テーブル上にはガラスのコップなどインテリア小物がならび、初めて訪れた人はアンティークショップと思うかもしれない。
 この店こそが『若くてナイーブな発想と、確かな職人芸が生きている家具のニュートレンド』と評される木製家具製造・販売のマカロニデザインの工場に併設されたショールーム兼インテリアショップ「MACARONI LABO」だ。
 「ショールームは窓口です。興味を持った方が入って来られて話が始まり、ここで家具を作っていることや、注文家具のプロセスを分かりやすく理解していただければと思っています」と語るのは同社代表の野﨑氏。
 野﨑氏は2008年7月に「株式会社マカロニデザイン」を設立。15年に現在地へ移転し、設立10周年を迎えた昨年7月にMACARONI LABOをオープンした。
 ショールームの奥の工場内は、1階に材木置き場や製品倉庫。中2階には椅子に布地を張るミシンが置かれた「張り場」がある。張り場を設けるに当たっては、熟練した職人の指導を受け、張りの技術を学んできた。「箱もの家具とともに、椅子も制作したいという思いが、ようやく形になってきた」と野﨑氏は語る。
 さらに階段を上った2階は木工機材を備えた工房で、椅子やテーブル、収納家具などを制作する。
 「一点物の受注から空間デザインまで、的確な提案ができるよう、丁寧なモノづくりを心掛けています」という野﨑氏が、設立当初から思い描いている家具製作の姿は、できるだけ自分たちの手の届く範囲で働きたいというもの。工程ごとに細分化され、外注も多い家具製作だが、野﨑氏は、顧客と打ち合わせをして、お客さんが望む製品のデザインを描き、図面を起こして制作、納品まで社内で全てをやる仕事をしていきたいと考えている。(次回に続く)


 ◆マカロニデザイン(神奈川県横浜市中区本郷町2―35―5、電話045―309―6061)。

昨年オープンしたショールーム「MACARONI LABO」。軒先には鉋(かんな)のデザインと「Die Hobelbank」(作業台、ドイツ語)の文字が掲げられている
中2階の一室には椅子に布地を張る「張り場」が設けられている

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