ニュース2025.08.29
家具工房KOMA(東京都武蔵村山市)は、南青山に開設されたレストラン「maerge」のためにデザインされた椅子「maerge chair」制作の1年半におよぶ軌跡をたどる催しをKOMAショップ青山支店で開催している。
同社によると、この取り組みはミシュランの星を持つシェフ・柴田秀之氏が世界一のレストランを目指して各分野の一流のプロを集めたプロジェクトで、KOMAへのリクエストは「料理が美味しく食べられる、最高のスポークチェアをつくってほしい」というものだった。
始まりのプロトタイプ
KOMA代表の松岡茂樹氏は、レストランの規模や椅子の脚数を想定しながら製作をスタートしたが、最初のモックアップで突き当たった問題は「肘を置いて座った時に感じる圧迫感」と「笠木が高いことによる窮屈感」。
後脚上部の圧迫感は、わずかにアールを緩やかにすることで干渉を避けた。さらに、窮屈感も笠木の高さを若干低くした結果、身体を伸ばした際の快適さが改善された。
だが松岡氏には、まだジレンマがあった。柴田シェフからは「アームはテーブルの下に収めたい」という要望があったが、アームの高さを下げると快適な座り心地とのバランスが崩れてしまう。
座り心地を徹底追求
アームの高さに悩んだ松岡氏は2種類の椅子を柴田シェフに座り比べてもらうことにした。KOMAの代表作cocoda chairには、座り心地を重視したスタンダードタイプと、テーブルの下に収まるロータイプがあって、20㍉だけアームの高さが違う。
座り比べた柴田シェフは「こんなに違うとは思わなかった」と驚いたという。「世界中のレストランを回ってきたが、これまでテーブル下に収まるアームしか座ってこなかった。これが普通だと思っていた」と柴田シェフ。
そして松岡氏が導き出した答えはアームは理想の高さに変更し、アームの奥行き方向の長さを短くすることで収納性を確保する設計だった。
造形へのこだわり
次に求められたのは「美しさ」。目指す空間は世界一のレストランだ。そこでKOMAの造形力が生かされたのは前脚のデザインだった。
「前脚を真っ直ぐにすると、どうしても硬い印象になる。だから少し曲線を入れて、座り心地は変えずに柔らかい表情と美しさを表現した」と松岡氏。
こうして何度も試作を繰り返し、細部にわたる対話と調整を経てMaerge chairは誕生した。それは単なる一脚の椅子ではなく、料理と空間、そして人をつなぐための“体験の一部”としてデザインされた椅子に仕上がったという。
◇Maerge chairの展示は、9月9日までKOMAショップ青山支店(東京都港区北青山2―11―16)。営業時間は11時~18時。
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