ニュース2025.11.27
せっかく採用した人材が早期離職してしまう。そんな悩みを抱える家具業界の経営者は多いのではないでしょうか。私自身、三代目として会社を継いだ当初は同じ状況でした。しかし、評価制度を根本的に見直すことで、現在では離職した社員が、複数社を経験した後に「やっぱり銀座英國屋に戻りたい」と再入社するほど、働きがいのある組織に変わりました。その核心は、従来の「成果評価」から「試行錯誤評価」への転換でした。
なぜ成果評価では人材が定着しないのか
多くの企業では成果評価(目標に対する達成度合い)で社員を評価します。しかし、これには大きな落とし穴があります。
まず、成果は「本人の努力」以上に外部環境や運に左右されます。家具業界なら、住宅着工件数、担当したお客さまのふところ事情など、本人ではコントロールできない要因が売り上げに大きく影響するでしょう。
さらに問題なのは、成果評価においては社員が「上司に怒られない最低ラインだが、確実にクリアできる低い目標」を設定してしまうことです。このような目標は、達成したとしても、本人にとって価値ある成長目標にはなりません。結果として「成長の実感」を得られず、「働きがい」を感じられないのです。
「試行錯誤評価」がもたらす効果
銀座英國屋が導入した評価制度では、目標達成度は見ていません。代わりに「その目標に向かって諦めずに、試行錯誤していたか?」を評価軸にしています。この評価制度により、社員は「本人が価値を感じる目標」かつ「会社業績に寄与する目標」を設定するようになりました。なぜなら、達成度で評価されないため、失敗を恐れずに挑戦的な目標を立てられるからです。
ある若手社員は「売上1億円」を目標に設定しました。一般的に優秀と言われるアパレル販売員で売上3千万円程度。どれだけ挑戦的な目標かご理解いただけるかと思います。
短期的な業績リスクを経営陣が背負う制度
なお、この「試行錯誤を評価」は、短期的な業績リスクを経営陣が背負う仕組みでもあります。成果評価なら「社員が稼いだ利益の一部を還元する」という社員にリスクを背負わせる形ですが、試行錯誤評価では「まず会社が投資し、中長期的な成果を待つ」形になるからです。
しかし、この投資こそが人材定着の鍵です。安心して挑戦できる環境があってこそ、社員は持てる力を発揮し、真の成長を遂げられるからです。
長期的な差別化ポイントを築き上げる制度
家具業界でも、デザイン提案力や施工技術の向上、顧客対応力の強化など、数値化しにくく、かつ、育成に時間が掛かる重要な能力があるはずです。そして、それらこそが、長きにわたってお客さまから選ばれる差別化ポイントになるのではないでしょうか?
それらは成果評価では育成しにくいため、「試行錯誤評価」を採用されてみることをご提案します。
なお、銀座英國屋は、2019年11店舗から2025年9月時点で4店舗と店舗数は半分以下になっていますが、売り上げは+7%と上回っています。これは接客・フィッティング・縫製という、数値化しにくく、育成に時間が掛かるものを磨いてきたからだと考えています。
こばやし・えいき 1981年東京生まれ。2004年慶應義塾大学経済学部卒、ワークスアプリケーションズ入社(大手企業向けERPパッケージソフトの開発・販売)、06年銀座英國屋入社(25歳)、09年銀座英國屋代表取締役社長就任(28歳)、24年社長15年目。一橋大学MBA・明治大学MBA。組織論、青山学院大学ファッション-ビジネス戦略論、100年経営企業倶楽部のゲスト講師を務める。後継者育成相談協会理事長。
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