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★JAPAN FURNITUREブランドを世界へ 飛騨のトークショーで語られた日本の家具づくりの本当の姿と未来

藤田哲也氏
田中明市長

 飛騨の家具フェスティバルのメイン会場、飛騨・世界生活文化センターでは初日の7月2日、ゲストにJAPAN FURNITURE(ジャパンファニチャーの)の指揮を執る日本家具産業振興会IFFT委員会委員長の藤田哲也氏(旭川家具工業協同組合理事長 、カンディハウス代表取締役会長)、高山市の田中明市長を迎え、飛騨木工連合会理事長の白川勝規氏(シラカワ代表取締役会長)とともに、日本の家具の未来をテーマにしたオープニングトークが開催された。司会進行は飛騨の家具フェスティバル企画委員長の岡田明子氏(飛驒産業代表取締役社長)が務めた。

集中から分散へ
 日本家具産業振興会は4月に、IFFT委員会を中心に進めているジャパンファニチャーのプロジェクトについて発表した。6月から7月に全国各地で開催されるオープンファクトリーと10月と11月に行われる分散型エキシビションの2期にわたるイベント、これらをまとめるインターネットのブランドサイトで構成されている。
 IFFT委員会は、藤田氏を委員長に、日本家具産業振興会の岡田贊三会長(飛驒産業代表取締役会長)と布川徹(冨士ファニチア代表取締役会長)、森田耕司(コクヨ執行役員)の両副会長も加わり、当初は12人のメンバーで議論が進められた。6月から岡田明子氏(飛驒産業社長)も加わった。
 プロジェクトの実施にあたって、グッドデザイン賞審査委員長で、大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクターを務めるクリエーティブディレクターの齋藤精一氏(パノラマティクス主宰)、グッドデザイン賞審査副委員長を務めるプロダクトデザイナーの倉本仁氏(JIN KURAMOTO STUDIO代表取締役)をアドバイザーとして迎えた。
 北海道東川町を拠点に活動し、旭川家具工業協同組合のブランド・エクスペリエンスディレクターを務める村田一樹氏(Back&Forth代表取締役)がクリエーティブ・ディレクターとしてまとめ役を務めている。

日本の家具をひとつの力に
 1979年に始まったIFFT(東京国際家具見本市)は、日本を代表する家具見本市として、時代の変遷とともに形を変えながら続いてきたが、出展者が減少傾向にあり、1つの展示会場に集中する形での開催は限界に来ていた。世界の流れを見ても、デンマークの3DAYS OF DESIGNのような分散型イベントで成功している事例も出てきている。
 ジャパンファニチャーでは、全国各地の工場や東京にあるショールームなどの施設を有効に使うことを前提にプロジェクトが進められている。「なんのためにやるかという、日本の家具が一つになるための大義が重要だった。北欧家具やイタリアモダン家具などそのエリアの名称で呼ばれている。ど真ん中だったが『ジャパンファニチャー』と銘打った」という藤田氏は来場者に次のように語りかけた。
 「日本の家具をひとつの力に―。日本の美意識、ものづくりの精神、地域の協業やそれぞれの個性…ジャパンファニチャーはそれらが息づく、日本の家具の価値を国内外に発信するプロジェクト。全国の家具メーカーや工房、関連事業者350社以上が加盟する日本家具産業振興会が主体となり、日本の家具をひとつのブランドとして育て、世界へ届ける新たな挑戦がここから始まる」
 例年10月に開催されていた飛騨の産地展が、7月開催に変更されたため、旭川、飛騨、大川の3つの産地展が、6~7月に集中することになった。そこで6月25日から7月25日までの1カ月を「家具づくりの現場を旅する31日間」というキャッチで「JAPAN FURNITURE MONTH」とした。
 さらに東京で行われる秋の複数のイベントが、今年から会期を合わせて開催されることになり、国内、海外からの来場が期待できることから「JAPAN FURNITURE SHOW by IFFT」が10月31日から11月9日まで開催される。キャッチは「合同から分散―IFFTの舞台は東京の町へ」。
 ジャパンファニチャーのホームページは、イベントの内容が紹介され、各社の得意分野などを統一されたフォームに落とし込んでわかりやすくまとめられている。

組合がなくなると産地が消える
 JAPAN FURNITURE MONTHについて藤田氏は「ものづくりの現場が注目されている。特に手づくりの木工加工は、一般市民も非常に興味を持っている。ものづくりだけではなく、海外からのお客さまも含めて、そこに行けばさまざまな文化に触れることができることも、非常に大切なことだと思う」と考えを述べた。
 JAPAN FURNITURE SHOW by IFFTについては「東京各所のギャラリーやショールームを会場とした分散型エキシビションとして再構成する。企画展やトークイベント、レセプションも開催する。これから正式に説明会を開き、参加者を募集していく。既に手を上げられているメーカーさんもいる」という。
 白川氏は「飛騨の家具フェスティバルでホテルやレストランをテーマにしたこともあったが、ウェブで発信する難しさを感じていた。ジャパンファニチャーは、秋までに参加することになっている40社を倍増させないといけないが、手ごたえをしっかり感じている。集中から分散することによって各社のイベントが深堀りされる」と期待を述べた。
 田中市長は「飛騨の家具は100年を超える歴史を持ち、デザインも年々変わって、非常に身近なものになっている。それぞれのメーカーは、自分の企業だけの発展ではなく、まとまって飛騨の家具を前面に出して提案し、独自のブランドを立ち上げて今に続いており、それが大きな力であり強みになっている」とひとつにまとまる大切さを強調した。「昨年訪問した旭川は、独自のデザインでしっかりとした家具作りをしており、大川はまた違った特徴を持つなど産地のバラエティーがある。その集大成がジャパンファニチャー」とエールを送った。
 藤田氏はジャパンファニチャープロジェクトを紹介した後に「日本の家具産地をまわる中で、組合がなくなると産地がなくなるんだと思った。私は旭川家具工業協同組合の理事長を務めているが、組合があるから旭川家具と名乗れて発信できる」と日本の家具産地の現状について話した。
 藤田氏が代表理事を務めている北海道家具工業協同組合連合会も、小樽や帯広にあった組合がなくなり、いまは旭川と北見が残るのみとなっているという。「強みを皆さんで生かすためにジャパンファニチャーのプロジェクトは重要」と訴えた。

日本の地域の強みを生かして
 藤田氏分散型のイベントとして活況を呈している3DAYS OF DESIGNも視察した。3社の出展からスタートして、いまや400社以上が参加するイベントに成長した。アプリでデジタルチェックインできるようになっており、イベントの情報が地図などですべてわかるようになっている。「完全にフリーでオープンで、どなたでもウエルカム。気持ちのいい空間でお出迎えしてくれた」と感想を話した。40~50社が小規模にまとまって展示している施設もあった。地元にショールームがないところは、ギャラリーを借りたり、地元の業者とコラボして出展たりしているところもあったという。
 白川氏は「東京にショールームを持たないところは飛騨にもある。そういったところがギャラリーを借りて参加できるようになれば、みんなが参加できるような形になっていく。その辺は柔軟性を持って進めていただければと思う」と進言した。
 コペンハーゲンを頻繁に訪れているクリエーティブ・ディレクターの村田氏もトークショーに飛び入り参加して、デンマークの暮らしと家具を紹介するとともに「3Days of Designは、デンマークがもともと持っている良さとコペンハーゲンが持っている良さを最大限に生かし切った結果」紹介した。「飛驒の家具という無形資産をみなさんは作られている。私たちは旭川家具という無形資産を長年作り続けてきた。日本の家具を無形資産として、一つのブランドとして発信する」とジャパンファニチャーへの協力を訴えた。
 白川氏は高山と旭川で行政レベルの相互訪問や情報交換が進んでいることを挙げて「国産材活用について旭川が先行しているが、飛騨もどんどん進めていく。行政レベルでも仲良くしていただきながら、われわれと一緒に日本の暮らしを良くしていきたい」と抱負を述べた。
 司会を務めた岡田氏は「世界の事例を産地を超えて、企業を超えて共有して『こんなところがいいね』と語り合い、感想をシェアできるとまたさらに発展していくのではないか。コペンハーゲンの事例をそのままトレースすることはできない。自分の強みが何か、しっかりとみんなで共有してそれを周りにも伝えていく、そんな作業がこれからもますます重要になってくる」と意見を述べた。
 藤田氏は「IFFT委員長として非常に忙しい状況。産地に説明に行ったり、オンラインでも説明会を何度も開いているが、実際にトップの方々と会って、日本の家具のために、日本の生活文化を向上するために、日本の家具をブランディングして世界に出るために、いろいろとお話すると、協力しないとだめかな…と言っていただける経営者が多い。岡田会長からもとにかく推進してくれと強く言われている。日本の家具をいかに発展していくかを本気でいま考えて進めているので、ぜひみなさんも関係者の方も参加いただき、一緒に盛り上げていきたい」と呼び掛けた。
 田中市長は「木を伐り、職人さんが家具を作られて、それが今のような形になっているという流れができている。それは高山だけでなく旭川も同じ。一人一人の思いが形になり、座り心地も違う。それをジャパンファニチャーとして、さまざまな思いを一つにまとめていく。それぞれ違いを認識しながら、日本の家具の未来をますます輝かしいものにしていきたい」と応援して締めくくった。

村田一樹氏
白川勝規氏
岡田明子氏

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