ニュース2026.06.05
nat新オフィスは明治通りに面した住友不動産原宿ビル3階の全フロアを使っています。このビルの外壁はガラスカーテンウォール、室内は外光あふれる無柱空間になっており、フロアの内側に邪魔な柱が一切なく、すべて外周に配置されています。まさに私が提案したかったアートギャラリーのあるオフィスを提案できるいい空間だと思いました。
オープニングテーマは「美防災とストレス緩和」です。江戸の元禄時代に活躍した絵師・尾形光琳が描いた「風神雷神図屏風」(重要文化財、東京国立博物館蔵)を特殊プリントで室内に配置しています。
実際の絵は2つ折り「二曲一双」の屏風に描かれており、中央にはあえて何も描かず右側に風神、左側に雷神が大きく離れて配置されたダイナミックな奥行きと緊張感を感じさせるものです。その絵にある無限の空間をオフィスで再現しています。
昔の日本は、台風や落雷によって起こされる火災は「風神と雷神が怒って暴れているせいだ」と信じられていました。光琳の風神雷神はどこか人間味のあるユーモラスな表情をしています。
今年は東日本大震災から15年、熊本地震から10年の節目に当たります。風神雷神図の選択には、自然災害への祈りと、防災・減災を願う気持ちが込められています。
なぜオフィス空間にアートが必要なのか。最近では植栽の緑が使われることも多くなっていますが、育てて維持するためのストレスを感じているケースもあります。特殊プリントのアートは手間もかからず、例えば季節によって作品を掛け替えることもできます。
私は神経美学によるエビデンス(科学的根拠)に基づいたアートとストレス緩和効果について「Evidence based Design OrientⓇ(エビデンスに基づくデザイン創造)」として研究を進めてきました。このオフィスにもストレスチェックができる「脳シェルター」を設置しています。
神経美学は2014年に英国ロンドン大学神経生物学研究所が発表した「人は美しいものを見ると脳の血流量が増加し、認知症の進行を遅らせる可能性がある」という知見に基づいています。私たちは、実際に展示会で、アート作品を飾った小空間を設けて、来場者にリラックスしてもらった後に、心拍数などの測定によるストレスチェックやアンケートを行って毎年データを集めてきました。
これまでのストレスチェックの結果から、アート作品によってストレスが緩和され、ウェルビーイング(心身と社会的な健康)に深く関わり、脳の活性化にも役立つことがわかっています。最近は、経営者が美意識を鍛えるための本も出版されています。これからのオフィスは、よりクリエーティブな環境が求められる時代に確実になってきます。
次回はエビデンスが実証された印象派のクロード・モネの絵によるアート展をここで開催します。モネの美しい光の色彩と楽しく温かなリゾートのようなインテリアをぜひ見ていただきたいと思っています。
これらの研究を集大成した「アート インテリア 環境カウンセラー国際科」のオンライン講座を秋に開講します。海外からも学ぶことができます。6月24日にこの新オフィスでオープンスクールを開催して、その内容の詳細を発表することになっています。職人さんはじめ家具づくりに携わっているみなさんも、ぜひこのオープンスクールに参加していただきたいと思っています。
まちだ・ひろこ 武蔵野美術大学産業デザイン科卒。スイスで5年間家具デザイン研究。1975年米ボストンへ。「ニューイングランド・スクール・オブ・アート・アンド・デザイン」環境デザイン科を卒業。77年帰国。日本で初めて「インテリアコーディネーター」のキャリア提唱。78年町田ひろ子インテリアコーディネーターアカデミー、85年学校法人町田学園設立。アカデミー校長として教育活動に努める。
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