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★【フィリピン・デザインの現在②】自然から生まれる南のデザイン 若手の育成に力注ぐケネス・コボンプエ氏 

ケネス・コボンプエ氏
コボンプエ氏のブース

 フィリピン・セブ島出身のインテリアデザイナー、ケネス・コボンプエ(Kenneth Cobonpue)氏は、籐、麻、木などの天然素材を使い、フィリピンの伝統技術とモダンなデザインを融合させた家具で世界的に知られている。「オーシャンズ13」などハリウッド映画にも多数採用され、ジュリア・ロバーツをはじめ多くのハリウッド・スターたちに愛用されている。若手の育成活動も積極的に行っているコボンプエ氏にフィリピンのデザインの未来について聞いた。

職人の高齢化が課題
 ――フィリピンのデザインの未来のために何が必要だと思いますか。
 結局は、製造業を強化しなければならないと思います。デザインは常にものづくりと一体のものであり、国の力となるものです。
 従って、製造業をフィリピンに呼び戻すことが大切であり、現実的には労働に見合った賃金のことを意味しています。
 それが現実であり、常にデザイナーを確保するためには、デザインの教育もとても重要です。最大の問題は労働力の高齢化です。それは日本だけでなく、すべての発展途上国が同じ問題を抱えています。

 経済が発展し、国が工業化されると、自分の手を使って働きたいと思う人はほとんどいなくなります。
 それは農業も同じで、従事者の平均年齢は50代になっています。織物職人も高齢化しています。私たちには技術を学ぶ場所がなく、ただ伝統として受け継がれてきました。美術学校はありますが、織物や木工彫刻を学ぶところはありません。それは伝統として受け継がれるべきものなのですが、ただ目の前を通り過ぎてゆくだけで、学校で学ぶようなことではなくなっています。だから職人の数が減ってしまうのです。

 職人たちにとっては、子どもたちが自分の手を煩わせて仕事をしないことが夢なのです。大学に送り、銀行や海外のオフィスで働かせることを夢見ています。若い世代に再び手仕事の魅力を感じてもらう必要があります。
 そうすることによって、暮らしを豊かにしなければなりません。それが基本的にデザインの力であり、必要なことなのです。ヨーロッパでは、バッグを作る職人が誇りを持って仕事しています。こういうことを職人に教え込まなければなりません。

南ならではのデザイン
 ――日本ではスカンジナビアンのデザインが普及しています。フィリピンをはじめとした南のデザイナーはそれとは少し違う考えを持っているのではないでしょうか。
 そのとおりです。北ヨーロッパは、南スペイン、イタリアなどとは違います。暖かい場所には、その気候にあったデザインがあります。
 天候とも関係があり、寒いときは、手織りの椅子ではなく、布の温かみを感じる椅子に座りたいと思いませんか? 寒い国でスカンジナビアンデザインが人気なのはそのためです。
 たとえば、私たちの最大の市場は米国ですが、ロサンゼルスやフロリダなど気候が温暖な地域になります。ヨーロッパでも同様で、南部では非常に好調ですが、北部はそれほどではありません。つまりそれは文化的なことなのです。

ヨーロッパとアジア/strong>
 ――ヨーロッパとアジアのデザインの違いもあると思います。
 それは難しいですね。現在は、ヨーロッパとアジアのデザインを区別するのは非常に難しいと思います。ヨーロッパの人がアジアのブランドのためにデザインをして、その逆もあります。
 つまり、それは単に特定の国の好みということになります。暖かい国では手織りの方がよく、スカンジナビアンの椅子や非常にシンプルな木の椅子は寒い国に向いています。
 オーストラリアでも、天候のおかげで手織りのものがとてもよく売れます。南アジアの主要国や南アフリカでもビジネスはうまくいっています。しかし、韓国、日本、北欧ではそれほど好成績ではありません。フィリピンの家具は、南ヨーロッパ、スペイン、ギリシャ、イタリアなどのリゾート地などに向いています。

ケネス・コボンプエ 1968年生まれ。87年ニューヨークのプラット・インスティテュートで工業デザインを学ぶ。学位取得中、イタリア・フィレンツェ近郊の革と木工の工房で修業を積んだ。94年ドイツ・ロイトリンゲンのバーデン・ヴュルテンベルク州輸出アカデミーで家具のマーケティングと生産を学び、その後ビーレフェルトとミュンヘンで働いた。96年に故郷のフィリピン・セブに戻り、インテリア・クラフツ・オブ・ザ・アイランズ社(ICI)の経営に携わる。ICIはケネスの母ベティ・コボンプエが1972年に設立した家具デザイン・製造会社で、籐加工の新技法開発で知られる。天然繊維や素材を媒体としてモダンデザインに新たな可能性を見出し、現在のコレクションを構成する作品を生み出していった。

ケネスさんの代表作Bloom chair
人気作品を見ようと多くのバイヤーが訪れていた

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