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★【銀座英國屋 ・小林英毅社長⑯ 人材採用と定着のポイント】「小さな悩みも相談できる1on1」で人材定着

銀座英國屋 代表取締役社長 小林 英毅氏

心理的障壁を下げる仕組みづくり
 人材の定着において、多くの経営者が見落としがちなのは「小さな悩みを相談できる環境」の重要性です。大きな問題になる前に、小さな疑問や不安を解消できれば、社員の離職は大幅に防げます。
 銀座英國屋では、この「小さな悩みも気軽に相談できる関係性」を構築するため、月1回の1対1ミーティング、いわゆる1on1を導入しています。ここで重要なのは、相談のハードルを下げる工夫です。

なぜ相談できないのか
 社員が上司に相談できない理由は主に2つあります。
 1つ目は「人数の問題」です。大勢の前で発言するのは誰でも怖いものです。しかし1対1なら「ほかには誰も聞いていない」ので、質問や相談がしやすくなります。
 2つ目は「タイミングの問題」です。上司に相談するために時間を取ってもらうのは申し訳ないと感じる社員は少なくありません。月1回「何もなくても話せる機会」が定期的にあれば、小さな問題・不安・疑問も相談しやすくなるのです。

ランチタイムの活用
 銀座英國屋はこの1on1をランチタイムに実施しています。ランチ代は会社が負担します。会議室での面談は「話題がなくなったら解散」となりがちですが、ランチであればささいな内容やプライベートの話も出やすくなります。
 実は、プライベートを把握していることは、上司が部下をサポートする上で非常に重要です。体調、育児、介護といった状況を理解してこそ、的確なサポートができるからです。
なお、連載第3回でお伝えした現経営者と後継者での「週1ランチ」とは異なり、「小さな悩みも気軽に相談できる関係性」の構築を目的とする一般社員との1on1は月1回で十分です。信頼関係が構築されれば、日々の業務中に問題解決が可能になるため、1on1の時間の8割は仕事以外の話になることも珍しくありません。

試行錯誤を評価するからこそ機能する
 この1on1を機能させる上で重要なのは、相談することへの心理的抵抗を取り除くことです。
 銀座英國屋では、相談や質問を前向きに捉える文化を大切にしています。相談することは、問題解決に向けて動いている証拠であり、決してマイナスではありません。また、上司の役割は部下の問題解決をサポートすることだと明確にしています。
 ここで注意が必要なのは、成果主義が強調され、上司の評価に部下の成果が組み込まれている環境では、1on1がむしろ「詰める場」になってしまう危険性があることです。相談しても無理を言われない、的確なサポートが得られると分かっているからこそ、社員は安心して相談できるのです。

今後の展開と課題
 なお、現在の銀座英國屋での1on1は「信頼関係構築」と「小さな悩みの相談」が主目的ですが、将来的には「成長サポート」により重点を置いていきたいと考えています。
 そして、設定したゴールへの到達に向けた問題解決の場として機能させるなら、週1回の頻度が適切だとも考えています。
 オーダー家具業界でも、職人の時間のかかる育成や技術継承において、このような定着を目指した「相談しやすい環境」づくりが有効ではないでしょうか。月1回のランチから始めてみることをお勧めします。

こばやし・えいき 1981年東京生まれ。2004年慶應義塾大学経済学部卒、ワークスアプリケーションズ入社(大手企業向けERPパッケージソフトの開発・販売)、06年銀座英國屋入社(25歳)、09年銀座英國屋代表取締役社長就任(28歳)、24年社長15年目。一橋大学MBA・明治大学MBA。組織論、青山学院大学ファッション-ビジネス戦略論、100年経営企業倶楽部のゲスト講師を務める。後継者育成相談協会理事長。

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