ニュース2025.04.08
東南アジア最大級の見本市「マレーシア国際家具見本市(MIFF)2025」が4月1日から4日までの4日間、同国の首都・クアルンプールで開催された。家具新聞はMIFFの創設者でチェアマンのタン・チン・フアット氏とゼネラルマネージャーのケリー・リム氏に米国の相互関税の影響や日本の家具業界と市場開拓へのアドバス、MIFFの今後について聞いた。
共に夢を語れる見本市に
MIFF創設者・チェアマン タン・チン・フアット氏に聞く
――世界経済はいま、大きく変化しています。MIFFを通じて30年以上にわたり世界とマレーシアの家具業界の変遷を見てきた中、現状についてどのようにご覧になっていますか。
貿易面で顕著なのは、米国が中国やカナダ、メキシコなどを対象に高い関税を課す動きが進んでいることです。マレーシアのような家具輸出国にとっては好機と捉えています。また、これを生かすために価格と品質などのバランスを見直す時期に来ていると感じています。
――MIFFはどのように応じていく考えですか。
われわれは毎年、さまざまな変化を取り入れています。1年を通じて人材採用や企画立案を行い、国内外の出展者により良い環境を提供できるよう、多くの方面に呼び掛けています。信頼関係ができている出展者にはアプローチを変えたほうがいいなどと助言することもあります。こうした結果、マレーシアの家具業界は徐々に勢いを増してきており、われわれもプレーヤーとして一定の役割を果たすようになったと自負しています。
具体的には10年以上力を入れているデザイン面で良い人材が増えてきました。来場者もデザインを求める人が多くなっていると感じます。今後はデザインを見るためにMIFFに来たいと言っていただけることが、見本市として成功したかどうかの指標になると思っています。
――日本の家具業界は国内市場の縮小を補うため、輸出に力を入れようとしています。輸出志向の見本市として基盤整備を進めてきた実績を踏まえ、日本について思うところはありますか。
一般論として事業というのは、変化に適応することが重要です。その上で日本の家具業界が輸出拡大を目指すなら、数量より品質を重視してシフトを進めるべきです。低価格市場に参入しなくても、輸出を伸ばせる可能性がある国だと思います。
私が見る限り、日本の家具業界は製造能力が過剰な状態にあります。工場・設備、人材などを含めた実際の稼働率は3~6割ほどではないでしょうか。生産コストが高くなっているとの声も聞かれますが、その背景には「本来持つ能力を生かし、売るべきものを売り切れていない」という理由もあるようです。
――日本が国外で市場を拡大するにはどのような戦略が必要でしょうか。
世界との競争に本気で勝とうと思うなら、多様な生活様式に即した製品開発を加速させるべきです。私は日本を訪れるたび、この面で常に変化し、前進していると感心します。それに比べてマレーシアはまだ材料を売っている感じです。マレーシアはいま、木材資源が減少し、材料生産コストも高くなっています。だからこそ、デザイン面のてこ入れを図り付加価値を向上させなければいけないという課題があります。
それに対して日本は国内の木材資源の詳細な統計・情報に基づき、生産コストを正確に算出し、市場が求める家具を開発しやすい環境があります。また、日本の家具業界は優れた技術を有しています。今より少し視野を広げ、多様な市場で変化する生活様式を意識した製品をアピールしていけば、売り先が増えるのは間違いありません。われわれは、日本で輸出に興味を持っている企業があり、その背景や製造している製品、そしてどのようなビジョンを描いているのかというような情報をいただければ、積極的に力になりたいと考えています。日本と連携し、共に夢を語れる見本市をつくることを願っています。
世界に開かれた見本市へナビゲート機能強化
ゼネラルマネジャー ケリー・リム氏
今年のMIFFでは、新たに広州デザイン・ウイークと組んだ企画を打ち出し、世界に開かれた見本市としての特徴強化に努めた。従来のデザイン賞に加え、バイヤーとデザイナーをつなぐ接点を増やすことを狙いとした。若者に向けて家具業界が職務経験を積む上で魅力的で成長機会にあふれていることも伝えたかった。もちろん、このような試みがすぐに結果が出すとは考えていない。時間はかかるだろうが、根気強く続けたい。
家具は人々の生活の一部であり、その様式に焦点を合わせれば、さまざまな構成要素がある。MIFFはマレーシアだけではなく、世界30カ国・地域以上にわたる事業網を持ち、新たな機会を捉えるめに参加者の意見に耳を傾け、開かれた気持ちで運営している。
来訪者や出展者からの聞き取りでは、近年は特に持続可能性(サステナビリティー)やデジタルソリューションへの関心が高まっていることが分かった。国・地域を越えた供給網(サプライチェーン)が複雑化する中、どうすれば取引を円滑に進められるのかといった問い合わせも増えている。今後はより良い展示方法だけでなく、バイヤーが支障なく供給者を検索し商談に入れるようなナビゲート機能の拡充を図る。あらゆる側面から新たな取り組みに挑戦し、見本市の価値を高めていく。
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