■日本の家具・内装材市場の現状
　辻　藤田代表理事、コロナ禍の中で家具販売も大変でしょうが、昨年の下半期から今年上半期までの家具販売の状況はいかがですか。
　藤田　コロナの影響で２年間開催できなかった旭川デザインウイークを、今年は６月18日から26日まで９日間、40団体近い産業界が実行委員会を組織し、規模を拡大して開催することができました。その中の５日間、「Ｍｅｅｔ　ｕｐ　Ｆｕｒｎｉｔｕｒｅ　Ａｓａｈｉｋａｗａ」として家具の展示会を開催しました。全国からさまざまな業界関係者が旭川にお越しいただき、本当にありがとうございました。
　コロナは旭川家具にとっても大きな打撃でした。在宅勤務が増えて働き方が大きく変わり、ネットのＥＣ事業が大きく伸びて、当初は安い価格の製品がかなり動いていましたが、昨年から今年にかけて、平均単価が上がって持ち直してきています。ここにきて円安の影響もあって、海外からの問い合わせも非常に増えています。当社は、去年の後半から１００％以上の生産を続けても追い付かないくらいの活況です。
　一方、材料については苦労しています。ウッドショック以降は当社もかなり厳しい状況です。道産材については、旭川家具工業協同組合で「ここの木の家具・北海道プロジェクト」を進めており、７年前の国産材利用率26％から昨年の統計では50％まで伸びています。では、輸入材が減るかというと、まだまだ需要があり、国産材だけでは難しいところがあります。
　辻　カンディハウスの染谷社長、家具の生産・輸出状況についていかがですか。
　染谷　昨年秋に緊急事態宣言が解除されて、そこからさまざまな販路でマーケットが活性化しました。働き方改革もあって、自宅で過ごす時間が増える中で、新規需要の前に、まず椅子の張り替えなど修理の需要が増えました。衣食住といわれますが、そろそろ住の部分が先頭に立ってライフスタイルが変わっていくことにつながるのかなということを感じています。
　もう一つ、レジデンシャルとオフィスの境目がなくなって木製家具の領域が広がってきており、需要の手応えを感じています。せんだって発表した木製チェアも、雰囲気のあるデザイン性の高い椅子ということで大変好評を博しています。
　今後のマーケットに関しては、国内の人口が減少する中、海外輸出に力を入れる企業戦略は変わらず、円安もあって米国、欧州、アジアへの拡大戦略が直近の課題になっています。香港のディーラーが旭川に来たり、メキシコからも来日の話があったり、輸出という観点から追い風なのかなというところです。
　辻　カンディハウスの吉田さんは資材を担当されていますが、アメリカ広葉樹に関するお考えをお聞かせください。
　吉田　その前に一つお聞きしたいのですが、アメリカ広葉樹の入手が厳しい状況にある中で、去年の秋から今までの出材の状況はいかがですか。
　辻　丸太の出荷はあまりよくありません。一番大きな障害は、人件費が高くて人を集められないことです。インディアナ、ケンタッキー、オハイオ、イリノイ各州の最低時給８㌦50㌣では誰も働いてくれません。マクドナルドや食料品店で12㌦ほど、製材、家具関係だと最低でも15㌦。アメリカ広葉樹の価格が下がっていくことが考えられる今、調整局面を迎えていますが、高い給料で人を雇うことができないために製材量を増やすことができない状況が続いています。
　吉田　「ここの木の家具・北海道プロジェクト」が始まる以前は、当社で国産材の占める割合は数パーセントでした。20年ほど前は、マホガニーなど多様な樹種を使っていました。それがだんだんと淘汰（とうた）されて「ここの木の家具」が始まる直前は、ほぼナラとウォルナット、一部戦略的にヒッコリー。ウォルナットは全体の４割を占めていました。ナラは中国やロシアから入ってきていたものが大多数でした。「ここの木の家具」以降は北海道産材の活用が増えました。当初はいきなり１００％だと森に負荷をかけるということで、当面は50％を目指そうという話からスタートして、昨年はほぼ50％ほどでした。
　一方で輸入材の入手が困難になっていることから、国産材をもう少し増やしていかざるを得ないだろうと考えています。ただ、ここ十数年、世界的に人気になっているウォルナットの輸入は引き続き進めていかなければいけないと思っていますが、現状で何か戦略的に新しい樹種を見つけて購入しようという考えには至っていません。
　辻　ＡＨＥＣとしてヒッコリーに力を入れていますので、使っていただけると非常に助かります。

※アメリカ広葉樹輸出協会懇談会フリーディスカッション＜３＞こちらから