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★アメリカ広葉樹輸出協会懇談会 フリーディスカッション<3> 秋以降 調整局面に

匠工芸
社長
桑原 強氏

■今後の日本の木材・家具市場動向
 辻 匠工芸の桑原社長、無垢のアッシュなどいろいろな樹種を使っていただいていますが、これからどのような樹種を使われますか。
 桑原 弊社はナラとウォルナット2本立てで開発していますが、かわいらしさのある製品の開発に際しては、ホワイトアッシュを使おうかということで進めています。木材の価格に関しては20%以上上がったので、さすがに自分たちの努力では吸収できないと思い、値上げを決行しました。その影響もあって販売量が落ちたのですが、コロナの影響で最も大きいのは、東京の人が動かないことによって受注量が減ったことです。それを打破しようと思い、物に自分たちの気持ちを乗せて届けようということで「つくっているのは、心地です。」というスローガンを掲げて、長く使ってもらえることを念頭に開発を進めています。
 旭川デザインウイークを終えて、純国産に周りが目を向けていることを感じました。コロナの影響でオフィスもまた違った感じで構えようという動きがある中、木製家具に注目が集まってきています。そこに今は突破口があるのではないかと思います。木材問屋さんに状況を教えてもらいながら、いい樹種があればそれを使って新商品開発を進めるのも一つの手かなと思います。
 辻 北日本木材の高原社長、今年の秋以降にウォルナットやホワイトオークの価格が頭打ちになるかもしれませんが、これらの樹種以外でも家具メーカーへのプロモーションを考えていますか。
 高原 これまでも家具メーカーをはじめとしたお客さまがどのようなことを考えているのか情報交換しながら、こちらからも提案を行ってきました。ナラ、オークの需要はかなり底堅いところがありますので、今期も原木調達は先月で終わりました。この年末年始は、仕入れに苦戦しましたが、目標通りの仕入れ数を確保できました。それを乾燥させて販売するのは来年になります。
 今後の新しい樹種の仕入れに関しては、実は試したいことがあります。以前、レッドオークを少し仕入れていたのですが、結構、不要在庫になってしまったことがありました。これからは、もう少し提案の仕方を変えてやってみようと思っています。
 辻 山田木材工業の岩下社長、御社は家具メーカーや木工職人にアメリカ広葉樹を販売されていますが、ウォルナットやホワイトオーク以外の要求はありますか。
 岩下 何か新しい樹種はないかという話はよくありますが、すでに皆さんいろいろとやっていて、対応するのは難しい状況です。ウォルナットに関しては、とても心苦しいのですが、今年仕入れたものを来年販売するときに、また値上げしなければいけない状況です。そうしないと単価的に合わなくなりますので、ぜひご協力をお願いしたいと思います。厳しい状況ですが、お互いに頑張れるようにやっていけるかなと思っています。
 辻 いさみやの關口社長、いろいろな樹種にトライされていますが、今後はいかがですか。
 關口 樹種にこだわらずに使っていければと思っているのですが、特注家具を専門にやっていますので、基本的にはお客さまのご意向に沿ってということになります。ただお客さまには、あまり樹種にこだわらずに北海道産ナラ、ホワイトオーク、レッドオークと分け隔てせずに使えるようにしていただければ、価格も変わってきますとお伝えしています。
 辻 ヒッコリーに興味を持たれる可能性はありますか。
 關口 伝え方次第だと思います。コロナ前までは「米国産ホワイトオークは、流通量が安定していて使いやすいですよ」とお伝えしていましたので、まず頭の中にはホワイトオークがありますが、今からでも家具業界、木材業界挙げて伝えていけば、ヒッコリーやチェリーなど別の樹種の指定もお客さまから来るにではないかと思います。
 辻 私どもとしては今年後半から来年にかけてチェリーとヒッコリーを推していこうと思っていますので、よろしくお願いします。フロアーに関してはいかがですか。
 高橋(昭和木材社長) ホワイトオークとレッドオークの価格は、10年以上前は大して変わりませんでした。逆にレッドオークの方が高かったのですよ。なぜかというとアメリカの家具のほとんどがレッドオーク主体で、ホワイトオークは乾燥が面倒だからです。それが今ではホワイトオークが高くなったので、私はレッドオークの方がいいと言って、カナダとアメリカの国境あたりを探して結構いいレッドオークを持ってきて「さぁこれからレッドオークの時代だ」と言っていたのですが、家具メーカーさんが「なじまない」と言ったので、ルーマニアの奥地からオークを持ってきたのですが、これも違うと言われました。ホワイトオークの価格が限度を超えて、やっとほかの樹種に変えようということになってきたのですが、そもそも論として、日本はあまりにも木材のグレードに厳しすぎると思います。それで木材が全部中国に行って、主導権を握られてしまいました。節だらけであろうと、中国は隅から隅まで全部木を使うからこそシェアを伸ばしてきたのです。
 今また新たな樹種と言っていますが、もともとウォルナットばかり追いかけないで出てくる広葉樹をみんな使って、あるものを使えばいいというのが私の持論だったのですが、やっとそういう時代が来ました。
 辻 ほかに質問があればお願いします。
 藤田 全国の木製家具メーカーの皆さん同じ考えだと思うのですが、原材料である木材が安定して供給されないと、安定したものづくりができなくなります。その中で国産材の需要が上がっています。その大きな要因はウッドショックだったのですが、材料が思うように手配できなくなると同時に価格が上がり、結果的に先が見えなくなって経営が不安定になっているメーカーもあります。
 このことを解決するために、川上にいらっしゃる山を持っている方々の現地の木材流通の安定化をぜひお願いしたいと思います。
 辻 アメリカの方も住宅着工率が急激に落ちていますから、今年の秋以降は需給のバランスがとれて間違いなく調整局面に入ってくると思います。そこに中国の爆買いが入らなければ、価格は落ち着くと思います。

北日本木材
社長
高原 昌央氏
山田木材工業
社長
岩下 誓氏
いさみや
社長
關口 洋平氏

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