ニュース2026.07.09
米国産広葉樹の魅力を世界に広め、輸出を促進する米国農務省の外郭団体「アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)」は6月23日、家具・内装材としてのアメリカ広葉樹の可能性について理解を深めるための「アメリカ広葉樹インテリアデザイナーセミナー」をヒルトン大阪(大阪市北区)で開催した。米国大使館農産物貿易事務所所長のライアン・ベッドフォード氏は「アメリカ広葉樹の魅力を広く伝えたい」とあいさつした。AHEC日本代表の辻隆洋氏は、アメリカ広葉樹の合法性、持続可能性と環境対応について解説した。講師に招かれた建築家の川村弥恵子氏(北海道札幌市、TAO建築設計)は広葉樹を使った住宅内装の事例を紹介。また、ジョージ・ナカシマの家具を製造・販売している桜製作所(香川県高松市)の永見宏介氏は、そのデザインの真価とアメリカ広葉樹の魅力について語った。同セミナーは、米国農務省海外農務局、米国大使館農務部のほか、今回は日本商環境デザイン協会関西支部、日本インテリアプランナー協会関西の後援で開催された。
■アメリカ広葉樹の豊かな資源とその魅力を広く伝えたい
ライアン・ベッドフォード氏は、人口減少や住宅着工数の減少、資材高騰といったインテリア業界を取り巻く厳しい状況の中で「だからこそ本物の木が持つかけがえのない価値を考える機会にしたい」とあいさつした。
印刷技術の進歩によって木目調の建材などが普及しているが「関西万博(大阪・関西万博)でも感じられるように、本物の木に触れた時の温かさ、安心感、心に響く豊かな表情は人工素材では再現できない。本物が持つ価値こそ、これからの空間づくりにおいて重要になる」と強調。
続けてアメリカ広葉樹を活用する今回の登壇者を紹介し、「豊かな資源を持続可能に供給できるのがアメリカ広葉樹の強み。AHEC(アメリカ広葉樹輸出協会)とともにその魅力を広く伝えたい」と訴えた。
■合法性、持続可能性と環境への対応を紹介
AHEC日本代表の辻隆洋氏は、アメリカ広葉樹の合法性、持続可能性と環境への対応について説明した。
日本では2001年にグリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)、17年にクリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)が施行された。グリーン購入法は06年に改正され、調達品目の追加や判断基準が強化された。クリーンウッド法は23年に改正され、木材の合法性確認が川上(伐採)から水際(輸入)までの木材関連事業者に対して義務化され、小売業者も登録対象に追加された。
辻氏は、「アメリカ広葉樹輸出協会は改正クリーンウッド法においても、合法木材供給事業者認定団体になっている。当協会が発行しているResponsible Procurement Policy(責任ある調達方針、RPP)と、American Hardwood Environmental Profile(アメリカ広葉樹環境プロファイル、AHEP)の2つの合法証明は、日本でも活用されている」と説明した。
■アメリカ広葉樹の森林蓄積量は増加傾向
米国では人工衛星によって、森林資源の蓄積量や伐採状況を郡単位まで把握している。米農務省森林局の森林分析調査(FIA)プログラムによると、1953年から2017年にかけてアメリカ広葉樹の森林蓄積量は52億立方㍍から120億立方㍍に増え、増加率は130%を超えている。
アメリカ広葉樹の森林は、全体の約78%を個人オーナー(私有林)が占めている。2018年の統計を見ると、約3億立方㍍の成長量に対して伐採量は半分ほどの約1億4000万立方㍍にとどまるため、本来は伐採を増やす必要がある。ただ、経済状況や人手不足の関係で伐採が難しい現状があるという。
また、広葉樹の伐採量は針葉樹を上回っているものの、落雷や山火事などによる枯死・倒木量が年約1億立方㍍に達していることが問題視されている。放置すれば二酸化炭素(CO2)の排出量増加につながるため、適切な森林管理の観点からも伐採量を増やす必要がある。
同協会のメンバーから日本へアメリカ広葉樹を輸入する際、製品にはAHEPによる合法証明が添付される。「これは改正クリーンウッド法が要求している合法証明に合致するもので、林野庁のホームページにも掲載されている。供給量や成長量、カーボンオフセットなどの情報がすべて網羅されており、持続可能性の証明書として活用できる」と解説した。
■ヒッコリーやチェリーもぜひ使ってほしい
樹種については、現在日本ではアメリカ広葉樹のレッドオークとホワイトオークが多く使われている。ウォルナットは価格が高騰しているが、辻氏は「ヒッコリーやチェリーなど、まだあまり使われていない樹種もぜひ使っていただきたい」と勧めた。
「チェリーは経年変化で色に深みが出てくる。非常に美しいので、ぜひデザイナーのみなさんも試してほしい。価格的にもこなれている」と述べ、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージック(王立音楽院)のホールで美しく経年変化した事例を紹介した。
また、「ハードメープルは日本ではまだ馴染みが薄いが、非常に優れた樹種」であり、欧州のダイニングやリビング、レストランなどで広く使われているという。
「チューリップウッド(イエローポプラ)は内装材にもおすすめしたい」。海外では心材と辺材を混ぜながら、ナチュラルな色むらをデザインとしてうまく活用している。
「日本の家具業界でホワイトオークからレッドオークへ切り替える動きがあり、協会としては大変感謝している。ぜひ内装材としても使っていただきたい」と、フローリングに採用されている海外の事例を挙げた。
「ヒッコリーは硬質で非常に優れた木材。デザイナーにはぜひ選んでほしい。在庫を持つ国内企業を紹介することもできる」と、フローリングなど内装材への活用を呼びかけた。
「日本の場合はエクステリア(外構)に針葉樹を使うケースが多いが、欧州ではホワイトアッシュやイエローポプラなど、低価格帯の広葉樹を使う事例が増えている」とし、心材・辺材を問わず熱処理(サーモウッド等)を施した材をエクステリアに用いるトレンドを紹介。また米国では、CLT(直交集成板)にイエローポプラを使った事例が出てきており、「低価格でありながら構造的にはかなりの耐久性がある」と推奨した。
最後に、米国出身の20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトの『自然はすべての装飾品のインスピレーションである。木は人間にとって普遍的な美しさを持っています。あらゆる素材の中で、最も人間的な親しみを感じさせるものです』という言葉を引用。「木材は素晴らしい素材。いま日本は非常に厳しい経済状況にあり、円安でアメリカ広葉樹が相対的に高価になっているが、本物の価値を再度ご検討いただき、インテリアの内装や家具材としてぜひ使ってほしい」と締めくくった。
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