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★【アメリカ広葉樹インテリアデザインセミナー㊤】動きを止めず木を許容 家具に学んだ精度で設計する建築家の川村弥恵子氏

床暖房を備えた「モミジノイエ」(写真:Hiroo Namiki)
川村弥恵子氏

私と木とのつきあい方 建築家の川村弥恵子氏(TAO建築設計 代表取締役)

 アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)は11月26日、インテリアデザインと広葉樹をテーマにインテリアコーディネーターらを招いてセミナーを東京都千代田区の帝国ホテル東京で開催した。北海道を拠点に広葉樹を使った建築や家具を手掛けている建築家の川村弥恵子氏(TAO建築設計 代表取締役)と箱物から脚物への転換を図り、デザイナーの小泉誠氏とタッグを組んだコレクションを発表している若葉家具(広島県府中市)の代表取締役社長である井上隆雄氏によるアメリカ広葉樹を活用した事例などが紹介された。講演に先立ちAHEC日本代表の辻隆洋氏がアメリカ広葉樹の合法性、持続可能性、環境への対応について説明した。「アメリカ広葉樹インテリアデザインセミナー」を次号にわたって紹介する。

 川村氏は高層ビルなどを設計している会社で仕事をしていたが「スケール感が合わないというか、超高層や高層ビルの設計にすっきりしないものを感じてプラベートで家具をつくりはじめた」。
 米国デンバーの設計事務所に勤めたのちに一時帰国した時、住宅の仕事を手伝った。そこで「自分が求めてるのはこれだと。スケール感といい、施主の顔が見える感じといい、自分で仕事を作って、自分で家具が作れるという。なんか目から鱗(うろこ)が落ちるような思いだった」とそのまま国内で仕事をして現在に至る。
 川村氏は設計で木を多用するが、特に広葉樹が好きだという。その理由は「硬いから。そして色がいっぱいあるから。針葉樹は淡い色が多い。広葉樹はホワイトアッシュ、ウォルナット、チークなどあって使い勝手がよく、いろいろなテイストで内装を展開できる。さらに、木目が美しい」ことを挙げた。「塗装をかけた時に木目が浮かび上がる広葉樹独特の感じが好き」という。ウォルナット、アッシュ、エンジュ、チークといったさまざまな広葉樹を使った事例を紹介した。
 「家具の精度はもうミリ単位で、ねじを1ミリ、3ミリで入れるという、建築とは気にする単位が全く違う。その精度で建築を考えられるようになった」ことが、家具デザインをやって良かったことだという。
 川村氏が手掛けた「モミジノイエ」は、木製サッシにホワイトアッシュ、フローリングにナラを使った。階段と天井、壁と家具、建具、全てタモを使っている。
 無垢の木を住宅に使うコツは「温度、湿度両方とも極端な環境に置かない。固定しない。無垢は動くため、ある程度、許容してあげること」を心掛けている。「これって、人間が求める環境に近いのではないか。木も人と同じなのかもしれない。生き物というか、人が嫌なものは、きっと木も一緒で嫌なんだよねという、そんな結論に達した」。
 北海道の「モミジノイエ」は、床暖房を採用している。40度の温水を流す導管を使って、暖房によって温められた部屋の空気が、冷たい窓ガラスによって冷やされ床面に下降するコールドドラフト対策を施している。無垢のフローリングをそのまま生かして「春とか夏の熱環境を作ることができる」というその独創的な仕組みを詳しく説明した。
 「木材イコール扱いづらいというところもあるが、付き合い方さえ覚えてあげればクレームにならない。極端な環境に置かない。あとは動きを留めないでいてあげる。あとは濡らさないでいてあげるということ」。
 川村氏は、木と向き合い広葉樹の特性と家具作りで学んだ精度の加工を生かしたインテリアデザインのさまざまな事例を紹介した。

<プロフィル>
かわむら・やえこ 1964年札幌市生まれ。89年北海道大学工学部建築工学科卒、入江三宅設計事務所(東京)入所、93 年AssociatesIII(アメリカ コロラド州)勤務、96年帰国、TAO建築設計開設、2000年TAO建築設計設立。主な作品:「円山川の家」(2018年)、「十勝整形外科クリニック」、「こばと薬局みなみ」(2015年) ほか。主な受賞:北海道建築士事務所協会札幌支部「きらりと光る北の建築賞」(2002年、2016年)、帯広市まちづりデザイン賞/優秀賞(2016年)。https://taokenchiku.com

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