ニュース2025.10.15
アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)は9月8日、このほどまとめた欧州森林破壊防止規則(EUDR)に対応した合法性認証プログラム「American Hardwood Assured (AHA)」の概要を都内のホテルで発表した。欧州へのアメリカ広葉樹製材の合法性証明となるAHAの内容について、次号にわたって紹介する。
(写真撮影・提供:ウッドミック)
日本では2025年4月に施行された「改正クリーンウッド法」により、木材を取り扱う事業者は販売する木材の情報収集と伝達、その合法性の確認などが義務化された。一方、欧州では13年より欧州連合(EU)木材規則(EUTR)が施行され、25年末からEUDRが施行される。同協会日本代表の辻隆洋氏は、こうした背景をふまえて、今回の発表に至るまでのAHECの合法性に関する調査研究の取り組みについて説明した。
AHECは08年4月、07年から取り組んだ米国東部・中西部地域でのアメリカ広葉樹の合法性に関する調査研究結果を発表、19年10月には17年から再度行った合法性と持続可能性に関する調査研究結果を報告、さらに23年9月にはEUDRに対応する方策について、同協会の方針を発表した。
会場には林野庁、日本家具産業振興会、全国木材組合連合会、森林総合研究所、全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会、日本木材輸入協会、木材・家具業界の関係者らが出席、同協会国際プログラムマネジャーのトリップ・プライヤー氏と環境政策担当ディレクターのルパート・オリバー氏がAHAの概要を説明した。
今こそ米国の木材を活用する時
アメリカ広葉樹輸出協会国際プログラムマネジャー トリップ・プライヤー氏
アメリカ広葉樹輸出協会国際プログラムマネジャーのトリップ・プライヤー氏は「アメリカ広葉樹の米国の森林の持続性」について説明した。プライヤー氏は、アメリカ広葉樹の世界市場へのマーケティング戦略を担当している。同氏の家族が営んでいるノースカロライナ州の製材会社は50年以上前、日本のウイスキーメーカーにホワイトオーク樽材を輸出したことがあり、日本への造詣も深いという。
プライヤー氏は100種類以上あるアメリカ広葉樹のうち20種類以上が活用されているという樹種の豊富さと、アメリカの広葉樹林の約3分の1を占めるレッドオークとホワイトオーク、約1%の希少なウォルナットの植生、150年前にほとんど伐りつくした後に、科学的なアプローチと戦略的な伐採によって再生した米国東部の森林開発の歴史などについて説明した。1950年代と比べると今は立木量が改善しており、樹齢61年以上のより大きな樹種を伐採しているという。
広葉樹の立木量は140億立法㍍で毎年1.5億立法㍍ほど増えている。森林面積はスペイン、フランス、ベルギー、オランダを合わせた面積、日本の面積の約3倍に相当する。
アメリカの森林の特長は、ほかの国に比べて民有林が多く、全体の90%を占めていること。一方で木材製品の製造を目的として森林を所有しているところは少なく、限られた量を伐採している。このため、森林認証を受けているところは全体の4%ほどになっているが「だからといってサステナビリティーではないことを意味していない」ことをプライヤー氏は強調した。
森林のオーナーの平均所有面積は27㌶。製材所が木材を集めるためには、「何百ものオーナーから買い付けるという複雑な状況がある。このため原産地のトレーサビリティーが課題となっている。木材はさまざまな所から集材しているため、AHAは米国の森のサステナビリティーを示す重要なプログラムとなる。蓄積している炭素を大気に放出せずに木材の中に閉じ込めて活用するのが木材製品を買うということ。今こそ米国の木材を活用する時」と訴えた。
世界最大級の広葉樹輸出国である米国の2024年トータル輸出額は約20億㌦だった。中国への輸出は減少しており、カナダ、ベトナム、メキシコ、EUと続いた。「EUへの輸出量はそれほど大きくない。EUDRに準拠しないと私たちの木材がほかの国に輸出されて、最終製品になってEUに輸出されることになる」という。
中国への2017年のアメリカ広葉樹製材輸出は、240万立法㍍だったが20年には125万立法㍍に減少。中国に多く輸出されていたアメリカ広葉樹製材は、ほかの国に輸出されている。
日本への今年上半期の輸出は増えており「特にウォルナットとレッドオークはその美観やサステナビリティーを納得いただける樹種。ホワイトオーク、ウォルナット以外にレッドオーク、アルダー、アッシュにも関心が高まっているのがうれしい」と語った。
改正クリーンウッドAHECが認定団体に
米国大使館農務担当公使 ジーン・ベイリー氏
AHAの発表に先立ちあいさつした米国大使館農務担当公使のジーン・ベイリー氏は、日本に赴任して1年になるが「素晴らしい職人技と美しい家具を見てきた。アメリカ広葉樹を見事な家具に変える素晴らしい技術は本当に驚くべきもの」と日本の家具業界に賛辞を送った。
アメリカ広葉樹の簡単で使いやすい合法性プログラムとしてAHAを紹介するとともに、改正クリーンウッド法の下でAHECが合法性認証を担当する認定団体として公式に指定されたことに謝辞を述べた。
「多くの日本企業がEUを含む海外市場への輸出を積極的に拡大していくなかで、EUDR を理解することは、新しい規制を乗り越え、グローバル市場での成功を維持するためには不可欠」とその重要性を訴えた。
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