視点2019.06.19
中・高級家具の小売りの低迷が続いている。大塚家具の5月の店舗売上高は前年同月比18・4%減と6カ月連続マイナスとなり依然、厳しい状況下にある。それは業界の氷山の一角とも言えるもので、ファストファニチャーによる市場の席巻や、ライフスタイルの変化などの構造的な要因にどう楔(くさび)を打つか、各社は苦戦しながら考えている。
大塚家具は国内の店舗と売り場の再編を図りつつ、ECやプライベートジェットなどのコントラクト展開、バーチャルショールーム、スローファニチャーの会の結成といった多面的な戦略を次々と打ち出している。
それは業界再生に向けた挑戦であり周りの業界各社にとっても、今後の業界の指針を示す実験的な試みとして、その行方を見守っている。
もう一つ、同社にとって逆風となっているのが、メディアの報道だ。興味本位の報道は、ブランドイメージに大きな影を落としている。それは、この国のインテリアへの関心の低さを表しているようにも見える。
伝統的な職人技と誠実なものづくりの精神(クラフトマンシップ)の価値を広く伝えていくスローファニチャーの会は、同社の取引先に限らず、広く門戸を開いているという。家具の業界の現状を考えれば、それが業界全体の利益につながるのであれば、垣根を越え、遺恨を捨てて、この動きを広げていく必要があるのではないか。