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旭川デザインウィーク出展リポート <上> 産地挙げ初のホテル提案

喜多氏がホテル向けにデザインした旭川家具が並んだ
デイジーバルーンの河田氏㊧と細貝氏。雪が解けて大地に溶け込み、それを木の根が吸い上げる自然の営みを表現した

 旭川デザインウィーク(ADW)が6月20日から24日までの5日間にわたって開催された。総来場者は1万6500人。メーン会場の旭川デザインセンターでは、産地の力を結集した初のホテル客室空間提案に注目が集まった。ADWのメーン事業となる旭川家具エキシビジョンには45社・団体が出展して新作や新提案を行った。各社ショールームや工場では、画期的なライフスタイル提案や化粧張りによる実験展示など、単なる新作発表の枠を超えた個性あふれる企画と北海道の豊富な食材を使った料理などで訪問客を迎えた。

各社で客室家具製作 建材・設備企業も協力

 2015年に装い新たにスタートしたADWには毎回、新企画が登場している。今年は、産地の9社が参加した「ホテルスペースデザインプロジェクト」が登場した。
 プロダクトデザイナーの喜多俊之氏がデザインし、空間デザイナーの成ヶ澤伸幸氏がバスやトイレなどの建材や設備、アメニティーグッズを選定してホテルの客室空間をデザインした。
 ADWはこれまで周辺地域を巻き込みながら、産地としての個性や姿勢を示してきた。今回のプロジェクトは、ビジネス戦略を意識した初の試みといえる。
 喜多氏は「新築だけでなく、リノベーションも意識しながらデザインした。世界を相手に愛着のあるクオリティーの高い客室空間を提案できる」ことを強調した。
 今回の展示の大きな特徴は、家具だけではなく実際にホテルの内装に使用されている建材メーカーや企業関係者が参加していることだ。産地の各社が、客室全体の提案に参加できるビジネスの枠組みを考えて企画された。
 壁は米ベンジャミンムーアペイントの塗料やサンゲツの壁紙から選定された。バスや洗面所、トイレは米コーラーの水洗器具などが使われた。マットレスはシモンズ、客室に必要な備品やアメニティーはJTB商事が協力して、細部まで協議を重ねて選定したという。
 プロジェクトに参加した家具メーカーは次の通り。いさみや、インテリア北匠工房、エフ・ドライブデザイン、カンディハウス、ササキ工芸、大雪木工、タイムアンドスタイル、匠工芸、メーベルトーコー。

雪解け水が家具に 白いバルーンが飾る

 細貝里枝、河田孝志の両氏のユニット「デイジーバルーン」による約8000個の白いバルーンが旭川デザインセンターを飾った。
 河田氏は昨年1月、初めて旭川を訪れた時の雪の印象が強く残った。「雪解け水が大地に溶け込み、それが家具になる。腰掛けた椅子の肘の木目に時間をかけて雪解け水が解け込んでいることを肌で感じた時にビジュアルが生まれた」という。
 制作には工場の職人たちも参加した。細貝氏は「とても器用で思った以上に早くインスタレーションが出来上がった」と感心していた。
 ディレクションを担当した青木昭夫氏は「産地の皆さんが木にとらわれずに勇気を持って臨む姿勢を表わしたかった」と狙いを語った。

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