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旭川デザインウィーク出展リポート <上> デザイナー 喜多俊之氏が語る「デザイン・未来」

喜多俊之氏

 ADWの「ホテルプロジェクト」を手掛けたデザイナーの喜多俊之氏が「デザイン・未来」をテーマに語るスペシャルトークショーが6月20日、旭川市大雪クリスタルホールで催された。喜多氏は「デザインが世界で脚光を浴びている。アジアではデザインを国の資源として考えている」と前置きして、イタリアでの活動や伝統工芸の取り組みについて語った。
 喜多氏が1960年代に初めて訪れたイタリアは「暮らしをもっと素敵(すてき)にしていこう」という活気にあふれ、リノベーション産業が発展していた。100年以上前に造られた建築の外観を残しつつ、内装やインテリアは近代的な意匠を施したリフォームが進んでいた。ミラノサローネの始まりとなった「サローネ・デ・モビーレ」もリノベーションの見本市として始まった。
 もう一つ、イタリアのインテリアが発展した理由として喜多氏は「貧富に関係なく、素敵な暮らしをすることを当たり前に考え、住まいを社交場として人生を楽しんでいた」ことを挙げた。
 喜多氏はイタリアで、カッシーナとのコラボレーションでヒット作を次々と生み出した。「ウィンクチェア」は、スタッフと議論しながら作り上げ、80年のサローネで発表された。フルリクライニング機構に自動車の技術を取り入れるなど80年代の新しい時代を予感させた。「ヒットするかどうかは、ユーザーが決めること。使う人の身になることが重要」と当時を振り返り語った。
 開発に4年をかけて97年に発表された「DODO」は、「10年後の未来を綿密に考え、ホームオフィスが普及し、高齢社会になることを想定しながらデザインした」という。「カッシーナではテクノロージーと職人技のコラボレーションが重要視された。職人には、気持ちを込めてモノをつくるスピリットがあった」
 喜多氏は70年代から、和紙を使ったLED照明をデザインするなど日本の伝統工芸の活性化に取り組んでいる。組立式茶室「2畳結界」は、伝統工芸を駆使しながら、親戚、友人たちを招いた日本古来のハレの行事を取り戻すためにデザインされた。こうした組み立て式和室のリノベーション空間への活用も考えているという。「日本の集合住宅のリノベーションが家具・インテリアの大きなテーマになっている」ことを強調した。「大切なのは気を込めてつくること。ものづくりの優しい気持ちが世界に伝わればと思う」
 最後に「旭川は活気がある。素晴らしい職人たちのものづくりの情熱が大きく育ち、世界への日本の暮らしの発信基地となるだろう」とエールを送った。

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