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★【長澤良一セミナー採録 クラシック塗装③】春慶と黒田辰秋の漆塗り

長澤良一氏

 キャピタルペイント東京駐在所所長の長澤良一氏(79)を講師に迎えて東京都立城東職業能力開発センター(足立区)で開催された木工家具塗装のプロのための「木材塗装セミナー」(東京木工塗装技能士会主催)を振り返る。

 みなさんにお配りした資料は、東京都立産業技術センターの村井まどかさんが書いた「温故知新 洋家具のクラシック塗装」です。この資料は、業界誌「塗装技術2023年12月号」に掲載されたもので、前述したW.E.マーチン著「furniture finishing textbook」をベースとして、斎宮武勒先生の弟子の一人、戸山顕司語録など参考にして書かれています。この資料を見ながら、塗装の「温故知新」について解説していきます。
 いわゆる塗師屋(ぬしや)のご先祖さまは、江戸時代の幕末にあるという話を見たり聞いたりすることがあると思いますし、文献も残っています。鎖国していた日本に黒船が来航して開国したころに塗料も伝わりました。この資料に書いてあるのは、それ以降の話です。
 明治に入って多くの洋館が建てられ、それにともない洋家具の需要が増加しました。その修理の仕事から始まり、明治10(1877)年に横浜、芝(東京)、神戸で製作が始まりました。要は交易のある港があるところから、洋家具も作ろうじゃないかということで国産の家具が始まったわけです。
 明治初期の高級家具塗装は、漆による春慶塗と拭き漆が主として行われてました。木材塗装研究会メンバーで元岐阜県生活技術研究所の村田明宏先生の研究ノートによると、岐阜県の飛騨高山、ほかにも秋田県の能代、茨城県(水戸)の粟野と併せて「日本三大春慶」と言われています。
 飛騨春慶塗は下地を明るい黄色や真っ赤に染めてその上に透明の漆を塗っているんです。何の木かわからないような塗りではなく、木目を生かした代表的な塗り方とされています。私も春慶塗の作品をいくつか持っていますが、使えば使うほど味が出てきます。
 もう一つの拭き漆は、今で言うとオイルフィニッシュのようなものですが、特に漆がしみ込んだ導管は黒くなるのが特徴です。
 一番有名なのは漆芸家・木工家の人間国宝、黒田辰秋さん。一度はその作品を見てください。黒田さんのすごいところは、自分でデザインをして木を選び、家具を作って、塗りまで全部自分でやってしまう。その黒田さんは、黒や赤などの色漆もやりますが、得意としたのが拭き漆でした。
 塗っては拭き…私たちだと5、6回でもう十分となりますが、黒田さんはそれを何十回も繰り返すので、その仕上がり具合は、刷毛(はけ)で塗ったようになります。そして、よくケヤキ材を使用していますが、世界最高の環孔材といわれるケヤキは、その大きくて深い導管に漆が溜まり、真っ黒になります。そうして木目が引き立って見えるのが黒田さんの塗りの真骨頂なのです。

※前回連載はa href="https://kagunews.co.jp/page/detail/6627">こちらで御覧になれます。

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