ニュース2025.01.15
アメリカ広葉樹輸出協会(AHEC)は昨年11月26日、インテリアデザインと広葉樹をテーマにインテリアコーディネーターらを招いてセミナーを東京都千代田区の帝国ホテル東京で開催した。北海道を拠点に広葉樹を使った建築や家具を手掛けている建築家の川村弥恵子氏(TAO建築設計代表取締役)と箱物から脚物への転換を図り、デザイナーの小泉誠氏とタッグを組んだコレクションを発表している若葉家具(広島県府中市)の代表取締役社長である井上隆雄氏によるアメリカ広葉樹を活用した事例などが紹介された。講演に先立ち米国大使館農産物貿易事務所所長のエリック・ハンセン氏があいさつを行い、AHEC日本代表の辻隆洋氏がアメリカ広葉樹の合法性、持続可能性、環境への対応について説明した。12月11日号に続いて「アメリカ広葉樹インテリアデザインセミナー」の内容をお伝えする。
若葉家具(広島県府中市)代表取締役社長の井上隆雄氏は、2007年にAHECのエコファニチャープロジェクトに参画して以来取り組んでいる、アメリカ広葉樹を有効利用した家具作りについて話した。
同社の創業は1947年、井上氏の祖父が創業した。婚礼たんすで栄えた府中市にあって、そのたんすの低迷とともに転換を図り、ダイニング・リビングセットの生産にかじを切った。
しかし、たんす生産の街のイメージが浸透して販売先では「テーブルとか椅子は苦手だよね。あるいは、あそこが作ったから高いのではという見方をされていた」という苦労の時期があったという。その中でモダン仏壇は20年ほど前から取り組み、今も事業の柱となっている。
こうした転換の時期にAHECが主催したエコファニチャープロジェクト、そしてデザイナーの小泉誠氏との出会いがあった。同プロジェクトは、アメリカ広葉樹の節や白太(しらた)、色違いなどを有効活用して製品化まで持っていくことを主眼としていた。同社の場合、これがきっかけとなって、小泉氏とコラボレーションした「kitoki(キトキ)」の開発につながっていく。
井上氏は「メーカーや産地を超えてデザインを通じて販売先や異業種とのつながりが広がり、同じような価値観などを共有できるようになった」と当時を振り返る。「今は節や白太などをユーザーが個性として受け入れられるようになったがその時はまだそういった流れがなかった」という。
「kitoki」のアイテムは今や80近くに上る。デザイナーと作り手による協業、デニムの生地やスチールを使うなど地元ならではの異業種とのコラボレーションによってヒット商品を生み出していった。
箱物から椅子づくりに転換する当初「10数年前までは、もう全く椅子は手を掛けていなかった。もうできませんの一言。挑戦だった」と話す。その中で「小泉さんが『若葉家具さんならこれはできるよ』というものを少しずつデザインしてもらいながら、できる範囲からやり始め、今いろんな椅子ができるようになった」という。
井上氏は今後の同社の取り組みについて「暮らし方を提案する。ものを提供するのではなくて、それがあることで暮らし方や生活をどう実現するかを目指す」という。
「この家具を置きたいからこの間取りにするっていうのが実は、空間として本当は正しい」。住宅関連企業とも提携しながら「家具から家作りをしたいと思っている」と話した。23年4月にはショールームを改装して、空間と家具をしっかり見せた提案を行っている。
持続可能性に高い評価
米国大使館農産物貿易事務所所長 エリック・ハンセン氏
日本ではリフォーム市場がこの20年間で着実に成長しているが、一部の調査ではこの市場規模がすでに8兆円に達しているとの報告もあります。近年では、中古住宅や中古マンションの購入を選ぶ日本の住宅取得者が増えているということで、それに伴いリフォーム需要もますます高まっています。
今後の皆さまのデザインにおいて、ぜひアメリカ広葉樹の素晴らしい特徴を取り入れていただけると幸いです。
為替などの影響で広葉樹製品が高止まりしていることは十分認識しておりますが、プレミアム品質と持続可能性および効果的な森林管理のリーダーシップが適切に評価されていることをどうかご理解ください。
伐採量を超える成長
持続可能な広葉樹材
アメリカ広葉樹輸出協会日本代表 辻 隆洋氏
AHEC日本代表の辻隆洋氏はアメリカ広葉樹の合法性、持続可能性と環境への対応について話した。
アメリカ広葉樹の成長量は伐採量を超えており、森林が保有する資源量は増加の一途にある。AHECに所属する木材事業者は、海外への輸出時に、環境に及ぼす影響に関するデータとしてアメリカ広葉樹環境プロファイル(AHEP)を添付している。AHECは、米国農務省海外農務局の木材輸出促進プログラムの一環として、アメリカ広葉樹に関する情報提供と技術支援を行っている。
辻氏はまずアメリカ広葉樹が日本の改正クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用促進に関する法律)の合法木材供給事業者認定団体として認められており、AHEPなどを合法証明として利用できることを前置きとして、米国における森林経営の持続可能性について説明した。
アメリカでは人工衛星を使って広葉樹の分布量や蓄積量を集計している。立ち木量は、2017年で120~130億立法㍍。18年の統計で広葉樹の伐採量が約1億3000~1億4000万立方㍍に対して成長量は約3億立方㍍の2倍となっているという。
アメリカ広葉樹の場合、約8割の400~450万戸が個人の農家で、平均所有は約9・4㌶となっている。このため「森林認証を取りにくいシステムになっていることから、アメリカ広葉樹協会が合法証明などを発行させていただいてる」と辻氏は説明した。
欧州ではEUDRの発行が控えている。「それまではAHEPで十分対応できる」ことを強調した。またEUDRについては「第三者機関による色々なライフサイクルアセスメントと調査研究を行っており、3月末ぐらいをめどに発表する」と話した。
このほか、欧州の広葉樹のCLTやチェリー、オーク、ヒッコリーなど、アメリカ広葉樹を効果的に使った世界の事例が紹介された。
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