ニュース2023.08.26
国内小売市場の縮小や、店舗・施設などコントラクトの業績が伸び悩んでいることもあって、家具メーカー各社は、アジアをはじめ海外輸出市場の開拓に力を入れている。船舶による輸送費高騰などが影響して2022年の家具輸出統計では、アジアへの輸出が増えている。パンデミックが終焉(しゅうえん)を迎えたいま、輸出戦略の再構築が急がれる。
日本家具産業振興会が財務省貿易統計をもとにまとめた2022年の家具輸出額は前年比7%増の849億3549万7000円だった。金属製家具は前年比20%減の42億9195万円だったが、木製家具は27%増の69億547万円と大幅に伸びている。
地域別にみると、アジア・中近東が前年比10・8%増え、コロナ前の2019年の輸出額に戻っている。特に木製家具は同27・0%増となった。
一方、欧州は大幅に落ち込み28%減、木製家具は15・8%、金属製家具は17・4%減となった。
輸出先ではアメリカがトップ、2位の中国は国内の景気後退が影響して前年比減となっている。タイ、インドネシア、マレーシアなど東南アジアへの輸出が伸びており、コロナ前の水準に戻っている。
木製家具は、中国が前年比56・1%増でトップ、台湾も同45・1%と大幅に伸びて2位に浮上している。
「出荷ベースでみると一時は8倍まで上がった船賃の高騰が欧州や北米への輸出に影響した」と話すのはカリモク家具海外営業部部長の松浦真吾氏。欧州では、引き合いが多いカリモクケーススタディを中心に、コレクションの幅を広げながら販路の拡大を図るなど立て直しを急いでいる。中国も景気の影響が見られるが、市場の規模からすると底堅いという。
同社の海外輸出の売り上げトップは韓国。最近では台湾も伸びている。タイ、インドネシアも富裕層をターゲットに人材を投入して販路拡大を進めている。ほかにもシンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなど「世界各国の輸出先の状況を見ながら偏りがないようにしている」(松浦氏)。ディーラーの育成に力を注いで各国の底上げを図りながら戦略の構築を進めている。中でも「コンテナでの送り出しを効率的に進め、物流コストを削減することが、輸出実績の安定化につながる」という。
カリモク以外でも、マルニなど多くの家具メーカーが海外需要の取り込みに意欲を示しており、アフターコロナで以前のような勢いを見せているミラノサローネやアジアで各国の展示会に参加するようになってきている。
海外での新たな拠点構築、ブランドとコレクションの浸透を図るための現地ディーラーの育成など輸出を軌道に乗せるには、先を見据えた息の長い戦略が必要となる。この円安は、新たに海外輸出戦略を構築するチャンスでもある。
22年の為替市場は主要通貨に対して大幅な円安となった。米ドルのレートは21年末の115・08円から、同年10月20日には1990年以来32年ぶりに150円を超え150・15円となった。
円相場は今年になって一時130円台と円高に転じたが、再び円安が進み、8月16日には米金利上昇を背景に今年最安値となる1㌦=146円台をつけた。
家具業界では関連各社とともに「家具インテリアリサイクル&リニューアル協議会」を立ち上げたが、木材家具の海外での需要の伸びと「二足の草鞋」で進む時代が来ているようだ。
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