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★「オークヴィレッジ青山」始動 稲本正会長に聞く 国産材利用、まず意識改革が必要 使う雰囲気づくりを

「オークヴィレッジ青山」店内に展示されている国産広葉樹の無垢一枚板のテーブルを前に稲本正会長(右)と上野英二社長(左)

 2月1日にオープンした「オークヴィレッジ青山」(東京都港区)周辺地域では、東京都による「北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト」が進められている。青山にあった昔の雑木林を再現したという3500平方㍍の緑地が整備された同地域は、最先端の文化や流行の発信拠点として位置付けられている。森にはミズナラ、クリ、トチ、サクラなど家具の材料として知られる木も育っている。飛騨高山で持続可能なものづくりを続けるオークヴィレッジの青山店は、コントラクトの営業拠点であり、国産材の情報発信拠点になるという。新店舗の今後と国産材の利用について、同社の創業者である稲本正会長に聞いた。

 ―長年、国産材の利用に取り組まれていますが、青山もその発信拠点としてお考えになっているのでしょうか。
 その通りです。2016年に、林野庁の委託事業に協力して、国有林に広葉樹がどれくらい蓄積されているかを調べると、予想以上の量があることが分かりました。私は世界の森を見てきましたが、放っておかれても大きくなる環境の国は、それほどありません。民有林にもそこそこ広葉樹はあるはずです。
 ―ただ切り出すのは難しいのでは。
 製材も含めた流通に問題があります。木材市場についても調べましたが、何が問題かというと、旭川や岩手など頑張っているところがありますが、外材を使っているところが多いので市場が崩れてしまい、いい国産の広葉樹が集まる市場がほとんどないことです。私のところは、苦労して開拓したルートがありますが、多くの木工屋さんは、手に入りやすい外材を使うわけです。国産材の流通を良くしていかないといけません。
 ―そうすると、ある程度、国産広葉樹を使うようになれば、木材を出せるようになるのでしょうか。山に広葉樹がどれほどあるのか、分からないという声もあります。
 広葉樹を使う出口が見えてくれば、入り口からの線路を引き直せばいいわけですから。ルートが見えないから、皆さん使うのをためらい、製材所も売れないものは扱わないわけです。ニワトリが先かタマゴが先かという話になるわけですが、木材を使う側が頑張れば、入り口から出口までをつなぐ人が出てくるはずです。そこをどうするかです。日本の広葉樹を使うのは無理だと言い始めると、そういった雰囲気になってしまうので、そうではなくて頑張って使っていこうという雰囲気をつくらなければいけません。

生き延びる道は輸出

 ―家具新聞では国産材を使った家具の輸出促進について日本家具産業振興会に提案しました。輸出についてご意見を。
 今は経済状況が良くないので、国産材を使った家具の輸出については微妙な時期だと思います。それよりも、目の前の状況をどうするか、どう乗り切って生き延びるかという話も出てくると思いますので、丁寧に話しながら進めた方がよいと思います。一方で、目に見えて人口が減っていくわけですから、日本は家具を輸出しない限り生き延びることができないということは分かっているわけです。でも、それはロングレンジの話として、先を見ていかなければいけません。
 私は今、意識改革が必要だと思っています。そのために「脳と森を学ぶ日本の未来」という本を出したり、講演したりしています。木や木の家具に対する意識、国産材に対する意識がもっと高まっていけば、需要が増えて木材の現場とも徐々につながるようになります。意識改革がない中で政策を行うと失敗する可能性があります。
 ―外材の入手も難しくなっていますね。
 ツキ板もブラックウォルナットが集まらなくなって困っているという声もあります。家具メーカーは、いかに製品に付加価値を付けていくかが問われています。海外では家具に関して、車よりも慎重に買っているところがあります。フランスやドイツからデンマークまで、わざわざ買いに行く人もいます。ハンス・ウェグナーの「ザ・チェア」を作っているピーピーモブラー社は、サクラ、オーク、ウォルナットから最高級のマホガニーまでランクを付けて営業戦略を展開しています。デンマークの伝統を踏まえ、本当に丁寧に家具を作っています。この「オークヴィレッジ青山」でいろいろな方々とお会いしながら、私たちも勉強をして、北欧を越えたいと思っています。
 ―青山店でセミナーも開催されるのですか。
 今はコロナで難しいのですが、セミナーやコンサート、著名人との対談などもやっていこうと思っています。外にはこの地域の屋外ステージもあります。「ののあおやま」の開発に際して、「子どもから高齢者まで自然と共生した豊かな暮らしを目指そう」というコンセプトがありまして、周りにはたくさんの木が植えられています。私たちもその考えに沿ってイベントなどを開催していこうと思っています。

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