ニュース2025.12.11
マレーシアの家具業界で米国による関税引き上げの不安が広がっている。木製家具輸出の過半が米国向けであることから政府は引き下げを求め貿易交渉を継続しているが、状況は流動的だ。業界は優遇措置を求めている。マレーシアメディアの報道を基に動向をまとめた。
マレーシアの木材産業を管轄するプランテーション・商品省傘下の木材評議会によると、米国は最大の家具輸出市場となっている。2024年の木製家具の輸出額は57億1000万リンギ(現在のレートで約2100億円)で、木製家具輸出全体の57・8%を占めた。
米関税について、家具メーカーらは当初から「突然かつ厳しい措置だ」と非難。国内最大規模の業界団体マレーシア家具評議会(MFC)は、マレーシアの信頼と競争力に直接的な打撃を与えると懸念している。
MFCは声明で、企業の家具受注が激減し、生産能力縮小や人員削減、事業閉鎖が急増する可能性が高いと警告。実際、多くの加盟企業で25年7月までに受注がキャンセルされたと報告している。
主要企業の株価下落
投資家の反応も冷ややかだ。マレーシア証券取引所では7月までに米関税が嫌気され主要家具メーカーの株価が下落した。ただ、株価下落の要因は関税以外にもある。マレーシアでは新型コロナウイルス流行後、物価高騰や高金利による借り入れコストが増加したことで消費者支出が圧迫され、家具販売が低迷している。輸出に不利なドル安傾向の影響も受けた。
主要メーカーでは木材加工から製品製造までを手掛け、売り上げの9割超を北米市場に依存しているリー・ヘン・インダストリーズの4~6月期決算が、4月に上乗せされた10%の一時関税により純損失925万リンギ(約3億4000万円)となり赤字転落した。同社は決算書の中で「米関税による世界的な需要低迷が、輸出業者が価格を引き上げたり維持したりする能力を制限し、利益にさらなる圧力をかける」と指摘した。
政府に優遇措置求める
米関税を巡っては、9月に新たな動きが出た。トランプ米大統領は29日、それまで19%としていた木材と製材に10%、キッチンキャビネット、洗面化粧台、布張り家具にそれぞれ25%の追加関税を課すと発表。10月14日から適用し、合意に至らない国については税率を布張りと木製製品が30%、キッチンキャビネットと洗面化粧台が50%に引き上げるとした。
マレーシアの家具メーカーらはこうした状況に業を煮やし、MFCを通じて政府に支援を要求した。MFCのデスモンド・タン代表は、新たに発表された関税について「(マレーシア政府が)短期融資、税制優遇、設備投資支援、輸出市場開拓といった措置を講じることで課題を乗り越えることができる」と述べた。
一方、国内最大の家具生産地として知られるジョホール州では、米関税が及ぼす影響の明るい側面にも目が向けられている。
同州の有力企業ミ・クアン・ファニチャー・センターのフィリップ・フォン氏は「世界的に原材料費が上昇すれば、国内の販売価格も上昇する。内需を促進することで、家具業界が後押しされる」と話した。輸出業者が米国からの受注減に直面した場合は、生産能力の一部を国内の市場に振り向けることで、消費者がより安価な製品を入手できるようになるだろうとも説明している。
また、同州ムアル家具協会のスティーブ・オン代表は、高関税が課されても米国からの需要は堅調に推移するとみている。トランプ氏の発表は一時的に市場を混乱させる恐れがあるものの、米国の消費者は依然として輸入品に頼っていることから、マレーシアの家具受注は減らないとしている。
輸出先の多角化急務
マレーシア政府からは、プランテーション・商品省のチャン・フンヒン副大臣によって「家具業界は輸出先の多角化を喫緊の課題とし、従来市場に過度に依存すべきではない」との考えが出されている。副大臣は9月にクアラルンプールで開かれた展示会で家具業界の関係者に対し、地政学的リスクの影響を受けにくい新市場を開拓する必要があると訴えた。
とはいえ、数十億リンギ規模の家具の輸出先を米国外に移すことは短期的には容易ではない。市場開拓を進めるために「開発、小売り、デザイナー、バイヤーまでを網羅する国内基盤を強化することが重要だ」と強調した。
その上で、家具業界の将来の競争力を決める大きな流れとして「持続可能性とESG(環境・社会・統治)」「デジタルトランスフォーメーション」「デザイン革新」の3点を挙げ、これらに取り組むことで国際市場で長期にわたる成長を目指す道筋を示した。
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