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日本産材100%の挑戦 「準備は着々」 コロナ禍の木材産業に求められるもの 木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会会長 原口博光氏に聞く

木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会の原口会長
要望の説明を受ける公明党副代表の石田祝稔氏(ウッドレガシーを推進する議員連盟共同幹事長)

 木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会(LWCPC)は11月13日、木の総合文化(ウッドレガシー)を推進する議員連盟の衛藤征士郎会長をはじめ、同連盟に所属する議員を招き、LWCPCの12企業・団体による要望を国に訴える要望活動発表会を行う。コロナ禍によって木材需要や輸出が停滞する中、木材産業の要望をとりまとめる原口博光会長に、LWCPCの活動の現状と今後の展開について聞いた。

 ―LWCPCが設立され4年目を迎えました。これまでの活動について教えてください。
 LWCPCは8月21日で4年目を迎えました。今年3月に日本の木の文化を世界に伝える「ワールド・ウッド・デー2020東京~ウッドレガシー~木の総合文化展」を開催する予定でしたが、残念ながらコロナ禍で中止となりました。
 イベントに向けて私は日本産材を100%使用することを訴えました。現状ではさまざまな制約があることもよく分かりますが、無理を承知で出展するみなさんにお願いしました。100%使用のコンセプトを打ち出して、木材産業に携わる方々に会って話を聞くと、大手の住宅会社でも日本産材の使用が15~40%という驚くべき数字であることが分かりました。
 挑戦することによってこそ、さまざまな問題が浮き彫りとなり、技術革新や、川上から川中、川下まで連携して需要と供給のバランスをとるための解決策が生まれ、新しい道が開けていくのです。

 ―今年はどのような要望活動を行ったのでしょうか。
 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で合板工場の不振が顕著となり、原材料であるスギやヒノキなどの丸太が入荷制限を受け、その結果、山元では出荷待ちの丸太の在留在庫が増えるという事態を招きました。素材生産業者は従業員の雇用を維持するために、売れ行きが悪いことを承知で、生産を続けざるを得ません。また各地の素材生産業者は、販売リスクの高い民有林から国有林の生産委託事業にシフトする動きも出ています。このため立木のコスト割れが心配される冬季に向けて、国有林野において生産事業から造林事業へ切り替える要望書を8月に提出しました。

 ―木材利用についてはいかがでしょうか。
 コロナ禍の今、住宅、家具や建具などあらゆる面で日本産材の木材利用に関する補助金や税制優遇策の必要性が高まっています。10月1日に提出した要望書には、窓サッシについて、アルミや樹脂製に変えて、自然に優しい日本産材使用の木製窓に補助金を出すなどの積極的な政策を要望しました。また、アルミか樹脂製に限定されている防音窓サッシに関して、木製サッシも加えることを盛り込みました。現在、来年4月の改正に向けて検討が進められています。

 ―参加企業団体に変化はあったのでしょうか。
 私が目指しているのは、木材の川上、川中、川下の連携です。全国に約6000平方㍍の森林を持つ川上の林業事業者、吉本(長野県佐久穂町)に参加いただいたことは大きな意味を持っています。同社は主にカラマツを切って植える循環林業を推進し、100年先を見据えた山づくりに取り組んでいます。先にお話した造林事業への転換に関する要望書も、吉本の油井正隆社長が非常に分かりやすく具体的に問題点を列記し、まとめていただきました。

 ―7月には建築家の隈研吾さんと、藤田代表取締役社長の藤田勲さんが協議会顧問に就任しました。
 きっかけは銘木収集で世界的に知られる藤田の藤田社長が、熊本県の青井阿蘇神社に建設される国宝記念館に、藤田コレクションから銘木を大量に寄贈したという日刊木材新聞の記事でした。この記事を読んで「すごい人がいるな」と思い、藤田社長に会いに熊本に出かけました。そこに展示されている日本の素晴らしい銘木に魅せられ600枚以上の写真を撮りました。藤田社長はLWCPCの活動に理解を示され、顧問に就任していただき、藤田財団が正会員として入会してくれました。藤田社長は国宝記念館を設計した隈研吾さんの、銘木をふんだんに使い日本の木の文化を世界に発信するという信念に共鳴して銘木を寄付したのです。その藤田さんの紹介で隈さんにお会いして私の思いを伝え、顧問就任をお願いしました。隈さんには今後、講演などもお願いしようと思っています。

 ―今後の活動については、いかがでしょうか。
 木材産業に従事している方々が日本産材を使っていこうという動きが広がっていますが、まだまだSDGs(持続可能な開発目標)や、「ESG投資」と関連付けて動いているところは少ないと思います。中小企業にとって、それを実際にやろうとすると難しいところがあるからこそ、国の助成が必要になってくるのです。今後の要望活動の柱として位置づけ、国に働きかけていきます。
 SDGsやESGをまず企業活動として位置付けて発信し、その具現化に向けて活動することで業界が活性化し、メリットが波及します。それが利他の精神であり、社会貢献になります。循環型社会の原動力には、モチベーションを発信する組織が必要です。その原動力は、変化し激動する市場です。当協議会は、利他、社会貢献の志がある人々が集い、SDGsの下に活動し、ESG企業として社会貢献に努力します。その基盤は会員拡大と組織強化にあります。

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