ニュース2020.10.07
2019年度の森林白書は、持続可能な開発目標(SDGs)を冒頭に大きく取り上げ、日本の豊かな森林資源を持続的に利用していくことが環境から経済までを包括した目標を掲げるSDGsに貢献すると強調している。SDGsへの関心が広がる中、家具業界でも、さまざまな技術的な課題を克服して地域材を利用する動きが活発になっている。そのきっかけとなった事業が、一般社団法人全国木材組合連合会(全木連)の「顔の見える木材での快適空間づくり」。住宅や家具製品などの設計・開発支援、展示会開催やキャンペーン実施などを通じ、数多くの企業・団体が事業の公募に参加して、日本の木材利用の未来を拓(ひら)く成果を上げている。
日本の森林面積は国土の約3分の2を占める2505万㌶。このうち約4割に相当する1020万㌶は人工林で、終戦直後や高度経済成長期に伐採跡地に造林されたものが多くを占めている。その半数が一般的な主伐期である50年生を超え、本格的な利用期を迎えている。
この豊かな森林資源を「伐(き)って、使って、植えて、育てる」サイクルを通じて利用することは、災害から守り、豊かな水をたたえ、地球温暖化を防止する森林の「多面的な機能」を維持するとともに、林業・木材産業を通じた山村地域の振興を図るためにも大きな課題となっている。
このほど公表された木材需給表によると、輸入材を含めた2019年木材の総需要量は、木造住宅着工戸数の減少などが影響して4年ぶりに減少した。一方、木材の国内生産量は10年連続で増えて3098万8千㌧、木材自給率は37・8%と9年連続で増えているが、増加の大半は安価な発電燃料用となっている。
こうした流れの中で、全木連は地域材の利用を促進するために、林野庁の補助事業として構造材、内装材、造作材、家具、建具など幅広い分野で実施企業・団体の公募を行い支援を続けている。2019年からは「顔の見える木材での快適空間づくり」として、A材丸太の付加価値を高める利用拡大と普及活動の拡大に取り組み、今年も事業が進められている。
日本家具産業振興会、ゼロファーストデザイン、丸松銘木店が2015年、IFFT/インテリア・ライフスタイル・リビング(IFFT/ILL)に出展した国産材家具の展示ブース「日本の木 ニッポンの家具」もこうした木材利用拡大事業の一つ。家具業界の国産材家具が一堂に集まったIFFT/ILLでの初めての展示が実現し、国産材時代の再来を印象付けた。
飛騨高山では、スギ以外の針葉樹材を活用した新たな家具の開発、川上の林業、川中の製材、川下の家具製造・販売が連携した製品開発などがこの事業の支援を受け、サプライチェーンのモデルが構築された。
大川では、国産早生広葉樹のセンダンを利用した家具の開発を支援して、新たな製品開発のみならず、原料の安定供給と林業者の収入確保を目的としたセンダンの植林拡大にまで結びついた活動が続いている。
このほか、住宅分野での木材需要拡大を図るため、工務店、製材業者、素材生産業者、家具製造業者などの連携による、地域材の活用をテーマにした展示会などの開催、地域材を利用したモデル的な住宅開発、地域材活用キャンペーンの実施、地域材を利用した住宅、木製家具などの優良事例集の取りまとめなどを行っている。
「顔の見える木材での快適空間づくり」の事業の詳細はhttp://moku-expansion.com/
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