視点2019.05.15
なぜサローネ出展社のスタンドには、スケール感があるのか。単にブースの大きさだけではなく、そこに、したたかに計算された自社商品の「見せ方」の工夫が随所に見られる。
MISSONI HOME(ミッソーニホーム)は、「四季と自然」を新作とファブリックで絵画的に表現した。スタンドのエントランスは、中国の占いをモチーフにしたソファやクッションをストーリー性豊かに展示、奥に進むと黒と白を基調とした「冬」を、背後に張ったファブリックと新作ソファの張り地の色彩が見事な調和を図りながら表現した。同じように季節感のある色彩でまとめながら春夏、秋をテーマに新作を配置して、訪れる人たちを巧みにミッソーニの世界へと導いていた。高さを有効に使って新作の背景に張られたファブリックがスケール感を出していた。
ヴェネチアングラスを使ったラグジュアリー・シャンデリアやアーティスティックな照明をつくり続け、今年50周年を迎えたiDOGI(イドーギ)は、中央に噴水を配置して絢爛(けんらん)豪華にスタンドを飾った。宮殿のような階段を上った2階にも家具を並べた。照明を効果的に使ったテーブルの上には、細やかなクラフトワークでつくられた繊細で豪華なシャンデリアがまぶしく輝き、両者が一体となって、同社が得意とするラグジュアリー・デザインを全面にアピールしていた。
噴水をはじめ水を効果的に使う展示も見られた。バスルームからキッチンまで幅広く手掛け、ハイエンドのイタリアンデザインを発信しているBoffi(ボフィ)は、スタンドの周囲に水を張り、その上にリビングやダイニングを並べ、水上のコテージのような空間を演出して人目を引いた。
70周年を迎えたKartell(カルテル)のスタンドでは、ショーウィンドーのように22の小部屋に家具を並べた「KARTELL WINDOWS」を回遊しながら、同社の技術とデザイン、製品のバリエーションを堪能できた。中央には広い商談スペースを配置するなど、スタンドの構成を工夫していた。
ネットの世界がもたらした「SEE NOW、BUY NOW(いま見て、いま買う)」を重視して、新作をすぐに消費者が購入できることを表すビジュアルなカタログであることをこの展示を通じて表現しているという。サステナビリティーへの対応、高度な木材の3次元加工、マルチ・インジェクション技術などを製品を通じて見せる小部屋もあった。
日本は家具の品質、技術で海外に勝っている。デザインに関しても、若手の柔らかな感性が国際的な評価を得ている。展示の見せ方について知恵を絞れば、サローネでも、その商品をさらに際立たせ、ブランド力をアピールすることができるだろう。ただ、ミラノまでの出展にかかるコストを考えると、家具業界のなかでも単独で挑戦できる企業は限られている。
国家戦略としてのデザインの位置付けを明確にするとともに、その具体化が急がれる。国のバックアップの下で、総力を挙げてミラノで日本のデザイン力をスケール感をもってアピールする時が来ている。