ニュース2018.09.19
産地やメーカーの垣根を越えて国産材利用について考える「国産材家具サミット」が9月5日、飛騨・世界生活文化センターで開催された。ゲストスピーカーにNPO法人フォレストリンク代表理事の白鳥芳洋氏を招き、メーカー5社による事例報告の後に、国産材利用の課題について意見を述べた。最後は「オールジャパンによる国産材家具の輸出」が焦点となった。モデレーターはJDN取締役ブランドディレクターの山崎泰氏。
山崎 国産材利用に取り組む中で、今もしくはこれからの課題をお願いいたします。
池田 カリモクニュースタンダードのブランドを認知させようと2009年から始めたのですが、消費者の情報のキャッチの仕方が変わってきました。なるべく身近なところに露出して使っていただき「これはいいな」と思っていただけるようにしています。これからは、興味を引くような情報をウェブに載せ、体感していただくところに力を入れていきたいと思っています。
染谷 国産材の材料を生かすには、デザインの力が欠かせないと思います。製造側もデザイナーの力を120パーセント発揮してもらえる環境づくりが大事。これからもデザインを追求していきたいと思います。
西塚 ロールプレスウッド(圧密成形加工技術)の認知が進み、市町村役場にも国産材の家具が入り始めています。これからは民間企業や家庭用の製品も増やしていきたいと思います。ただ屋内用は量的に限られるため、屋外で使う家具に国産材を使っていきます。
森野 針葉樹は飛騨、広葉樹は北海道や東北から集材しています。自治体から地域の材料を使ってほしいという提案が寄せられており、その材料を使って製品化するという地産地消のものづくりを推進しているところです。
野村 その地域ならではのお店づくりをやっているユーザーへの提案を加速させたいと思います。家具ならではの技術をサポートしながら、地域の大工さんや建具屋さんに作ってもらうことによって、ネットワークを構築していきます。
白鳥 耐久性や耐候性など、ユーザーの使い方にどれだけ耐えられるかというと、まだまだだと思います。ユーザーと製品を提供する側との歩み寄りの機会を増やしていくことが必要です。
山崎 自社だけでは得られないものもあります。どこと連携すればいいのでしょうか。
池田 森で働く方々と、「こういう材料がほしい」という私たちの間には情報の距離があります。情報集積のハブとなり、つないでくれる存在があればと思うのですが、私たちメーカーが働き掛けをする必要があると感じています。
染谷 北海道は広葉樹の比率が高く、その大半は国有林にあるため、簡単に切ることはできません。国に粘り強く働き掛けることによって、良質な広葉樹を使った家具作りを進めることが大きな課題であると思います。
西塚 私たちが国産材の針葉樹に取り組んだころに比べると、今ほど国産材の追い風が吹いている時はありません。私たちも国産材の必要性や使う意義について、メディアなどに自らしっかりと訴えていくことが必要だと思います。
森野 飛騨に広葉樹がどれくらいあるのか、ほとんど分かっていないため、調べてほしいと思います。旭川と同じく飛騨の広葉樹のほとんどは、国有林にあります。これも行政が積極的にやっていただけるとありがたく思います。
野村 ここ2、3年で国産材の出口づくりが加速しています。やはり、消費行動を変えていく必要があります。中でも子どもたちに伝えることに力を入れています。
白鳥 林産地と都市部の地域間交流を進めないと木材を使うこと自体が成り立たないと長く言われていますが、いまだにサプライチェーンがうまくいっていません。20年までが勝負だと思います。木は日本のオリジナリティーを発揮できる素材として非常に大切なものです。今後は、輸出も視野に入れてマーケットを広げていくべきだと思います。
山崎 最後に一言お願いします。
池田 これから秋にかけてカリモクニュースタンダードの新商品が出てきます。自分が座った椅子が国産材なのかなと思っていただけると、私たちとの距離が縮まってくると思います。
染谷 ここに参加している皆さんは競合しているわけですが、海外に輸出するときは「オールジャパン」です。日本の木材、技術、デザインで最高の付加価値をつけて、海外に発信していくことを目標にしたいと思います。
西塚 山形県民会館の椅子2000席を県産材でやろうということで今、始まっています。山に行けば太いブナもナラもあります。将来を悲観する必要はありません。先進国の中でも日本は国産材の輸出が進んでいません。白鳥さんのお話にもありましたが、輸出をしていかなければいけないと思います。
森野 西日本豪雨の水害で何が起きているかというと、林地残材が流れて、橋に詰まって水があふれています。私たちが家具として使うことが環境を守り、命を守ることにつながるという意識を持っていただけるといいなと思います。
野村 家具産地のほかにも、森はあるが加工する人がいない所がたくさんあります。地域づくりの手助けを、家具を通じてやっていきたいと思います。そうすることで、オールジャパンも魅力あるものになると思います。
白鳥 子どもたちが木に触れる機会を増やすためにも、都市部の小学校を木造化する動きをつくろうと考えています。昔は学校林がありましたが、自治体が連携して、子どもたちが家具用材の林の下草刈りをするような地域間交流のスキームをつくることができればと思います。
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