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★ここに注目!マレーシアMIFF2025 マレーシア国際家具見本市見どころ紹介

会場にスタッフが集まりMIFF30周年を祝った
FDCで最高賞を受賞したトー・ウェイ・ハング氏

 東南アジア最大級の見本市「マレーシア国際家具見本市(MIFF)」(インフォーマ・マーケッツ・マレーシア主催)が来年3月1日から4日までの4日間、マレーシアの首都クアルンプールで開催される。量から質への転換を図るマレーシア家具と発想豊かな若手デザイナーの作品が注目される。

➊進む量から質への転換
 会場は、マレーシア国際貿易展示センター(MITEC)とseka世界貿易センター・クアラルンプール(WTCKL)の2会場にわたり、10万平方㍍を超える17の展示ホールにホームユースの木製家具からオフィス家具までマレーシアのメーカーによるデザインが一堂にそろう。また、マレーシアの輸出の60%を占める家具の中心地、ムアールから数多くのメーカーが参加している。
 30周年を迎えた今年のMIFFは、15カ国・地域から715社が出展、12億8000万米ドルの受注を記録した。来場者数は2万人に迫り、海外からの来場者数は120カ国・地域から前年比6%増の5419人だった。
 マレーシアの家具業界は、量から質への転換を図ろうとしている。創設者でチェアマンのタン・チン・フアット氏は、30周年を記念したMIFF開催中に行った本紙のインタビューで「これからは、規模を追うのではなく、よいプラットフォームをつくりたい」と抱負を話した。
 「出展者の皆さんが、海外から求められるいいものを作っていると言われる展示会にしていきたい」と質の高い製品が集まる場にしていくことを明言した。バイヤーにとって、探しているもの、ほかにはない珍しいものがワンストップで見つかる見本市を目指しているという。
 ゼネラルマネジャーのケリー・リム氏も「規模を追うのではなく、サービスも含めて質に注目したいと思っている」と話した。来年もクアラルンプール国際空港まで出迎えるサービスも行い、入国審査では、ビジネスイベント専用レーンを利用してスピーディーな入国審査を受けることができる。
 また、初めての来場者にホテルの宿泊を無料で提供するバリュード・バイヤー・プリビレッジ(VVP)もスタートした。

❷発想豊かな若手のデザイン
 マレーシアの若手デザイナー育成に力を注ぐMIFF。毎年開催されている「ファニチャー・デザイン・コンペティション(FDC)」は、成長する若手デザイナーのエネルギーと豊かな発想力を感じさせる。
 今年のテーマは「Chair evolution」(椅子の進化)。2年前に大学を卒業、デザイナーで建築のアシスタントの仕事をしているトー・ウェイ・ハング氏の「MU―SHI」が最高賞に選ばれた。作品名は中国語で木を表す「MU」と石を表す「SHI」に由来する。「川に遊びに行った時に、木や石の形の面白さに感動し、それを皆に伝えてたくてデザインした」アシンメトリーでオーガニックなチェア。「これからもサステナブルな物を作っていきたい」と話した。
 FDCの審査員を5年間務めている三井デザインテック・フェローの見月伸一氏は「年々デザインとプレゼンテーションのレベルが上がってきて、これからが楽しみ」と話す。「MU―SHI」については「自然界のデザインをそのまま持ってきている。小川のほとりにある石に昔は座っていたというところに由来する考え方が面白く、今の時代の気分に合っている」と評価した。
 もう一つの見どころは、ブースの表現方法を競う「ベスト・プレゼンテーション・アワード」。出展者の中から、最高のプレゼンテーションとして認められた企業が表彰された。
 若手デザイナーの企画展示「xOrdinary Showcase」は、FDCの優勝者でもあるリン・ボ・チャン氏がキュレーションを行った。今年で3回目。環境に優しいライフスタイル製品に焦点を当てている。

❸一人当たりの国民所得アップ
 MIFFのオープニングセレモニーで来賓として招かれたジョハリ・アブドル・ガニ商品相は「2023年の木材・木材製品の輸出は13・2%減の219億リンギ(約6900億円)、家具の輸出は18・1%減の91億リンギ(約2800億円)となった。これは家具輸出の半分以上を占める米国の住宅需要の減少によるもの」と厳しい状況に触れ「MIFFが貿易を促進し、新たな市場に参入する上で重要な役割を果たしている」ことを強調した。
 さらに「国家農業政策2030(DAKN2030)では、木材・木材製品の輸出額を25年までに280億リンギ(8800億円)、30年までに328億リンギ(約1兆円)にすることを目標にしている」と述べた。
 マレーシアは今年、中国やロシアなど主要新興国で構成されるBRICSのパートナー国になった。同国だけでなく輸出に力を入れる東南アジアの国々は、米国市場の縮小によるリスクを避けるため、輸出先の多角化に動いている。
 一方、マレーシア国内の所得はアップしており、高所得国入りを目指している。国連による高所得の定義は、一人当たり国民総所得(GNI)が1万4005ドル以上。マレーシアの23年のGNIは1万1970ドルで成長を維持できれば27年にも達成できそうだ。マレーシア統計局が発表した2024年第2四半期(4~6月)月給の中央値は前年同期比5・6%増の2745リンギ(約9万6000円)だった。民族別では、華人系4200リンギ、インド系2664リンギ、ブミプトラ(マレー系と先住民族)2300リンギ、その他2100リンギの順となっている。首都クアラルンプールは3982リンギ(約13万9000円)だった。

❹日本からの出展が急増 注目されるジャパンパビリオン
 アジア家具フォーラム(阿部野育三代表理事)が取りまとめを行っているMIFFの「ジャパンパビリオン」に今年は日本から10社が参加した。
 出展企業はAKASE、アジア家具フォーラム、奥平、カヴァースジャパン、向陽技研、すえ木工、チヨダコーポレーション、パナソニックハウジングソリューションズ、フランスベッド、堀田木工所。ベッドやソファ、ダイニングセット、学習デスク、壁面収納、チェスト、移動式バスタブなど幅広いアイテムがそろった。
 アジア家具フォーラムによると、移動式バスタブやPALM LOOPボードを使用した学習デスクは、ほかにあまり類似の展示商材がないこともあり、多くの注目を集めたという。
 代表理事の阿部野氏は「出展した製品は、会場で売ることができますから、次の年もまた買いに来てくれるお客さまもいます。そこで商談が続いていくこともパターンとしてあります」という。
 MIFFはアジアのハブとして、世界に向けて輸出する足掛かりとなる見本市であることも魅力だった。訪れる来場者は120カ国・地域以上に上る。
 さらに、ここにきて成長著しいマレーシア国内市場の需要が見込めるようになってきたことも、出展メリットとして挙げられる。
 阿部野氏も「マレーシア家具のプライスゾーンは低めですが、国民の所得は上がって、需要が見込めるようになっています。日本の家具も買えない価格ではなくなってきているので、MIFFに継続して出展すれば、成果が出てくると思います。1回だけではなかなか結果は出ません」とアドバイスする。
 同フォーラムは毎年参加者を募ってMIFFに訪問視察団を派遣している。今年は前回の1・5倍以上となる32社63人が集まった。

毎年出展者が増えているジャパンパビリオン
人気を博したすえ木工のバスタブ
PALM LOOPボードを使用した堀田木工の学習デスク

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