ニュース2024.10.06
飛騨の匠の伝統と技術の祭典「飛騨の家具フェスティバル」が10月19日に開幕する。飛騨の家具フェスティバル実行委員会と協同組合飛騨木工連合会が主催する同フェスティバルは、岐阜県高山市の飛騨・世界生活文化センターをメイン会場に、同市と飛騨市の各社ショールームで新作が披露される。テーマは、飛騨デザイン憲章第3条「心の豊かさ ~こころ豊かに暮らす~」。今回はメイン会場の中央に、飛騨の広葉樹活用事業などを展開する「飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)」と石原愛美氏(プフ設計)、大竹絢子氏(ソヂ)二人の建築士のコラボレーションによるテーマブースが登場。全国で唯一残る江戸時代の役場「高山陣屋」に保存されている「くれ材」と「飛騨の家具」の素材の多様性を最大限に生かしていかに「心の豊かさ」表現するかが大きな見どころになる。広葉樹活用をテーマにしたシンポジウムをはじめ、10本を超えるトークショーなどのプログラムも組まれている。今回は森や家具工場、製材所を巡るツアーも組まれている。企画全体の統括は岡田明子氏(飛驒産業社長)が行った。
江戸時代に郡代・代官が治政を行った場所で、御役所や郡代・代官役宅、御蔵などを総称して陣屋と呼ばれる。
飛騨代官は1777(安永6)年に飛騨郡代に昇格し、当時3カ所あった郡代役所(関東・西国・美濃)と並んで幕府の重要な直轄領となった。
幕末には全国に60数カ所あったと言われている郡代・代官所の中で、高山陣屋は唯一歴史の面影を残している。
年貢米などを保存した陣屋の御蔵(おんくら)の板ぶき屋根は、くぎを使わずに板を木の棒と石で押さえる「石置長榑葺(いしおきながくれぶき)」というふき方によってつくられている。材料には、油分を多く含み、水をはじく利点を生かしてヒノキ科のネズコが利用された。5年単位で上下・表裏を返して20年もの間、素材を生かすこの工法を現在も守り続けている。「くれぶき」は古くは民家にも使われたが、時代の移り変わりとともにトタン屋根などに代わっていった。
テーマブースは、高山陣屋に保存されている「くれ材」約600枚が使われ、2方に配置。会期終了後返却し、高山陣屋の屋根として葺(ふ)かれる。残りの2方に配置された什器には、飛騨木工連合会の8社が提供した家具の脚部50本以上を使い、天板を乗せて「飛騨つくり手市」や飛騨古川にあるヒダクマ「FabCafe(ファブカフェ)」サテライトショップのコーナーを形作る。
「くれ材」の寸法は、半くれ、長くれといった規格がある。それぞれの木が持つ繊維の流れ、職人の手から伝わる力の違いなどによって表情が変わる「微差」があるという。
8社による飛騨の家具の脚の形もそれぞれ個性的にデザインされている。ヒダクマ取締役CMOの井上彩氏は「くれ材を近くで見るとその細やかさが分かり、遠くで見るとボリューム感がある。見る距離による多様性が心の豊かさにつながると思う。脚物家具産地の飛騨地域、それらが持つそれぞれの個性とくれ材から多様性と豊かさを感じてもらえたら」と話す。
屋根などに使われる板材が「くれ」、それを作る技術は「くれへぎ」と呼ばれる。「くれ材」のテーマブースを実際に作るのは、宮大工で日本伝統建築技術保存会認定技術者でもある高山市の川上舟晴さん(こうこう舎代表)。会場での実演も行われ、実際に来場者が参加して作るワークショップも開催される。
また、関刃物とコラボレーションして作ったくれへぎの道具も展示する。いずれも主催は伝統技術の継承に取り組む「技の環(ぎのわ)」。同時期に岐阜県が開催している第39回国民文化祭/第24回全国障害者芸術・文化祭と連動して今回のテーマブースの企画を持ち込んだ。
19日には「飛騨の匠と関鍛冶の技を継ぐ~高山陣屋のくれへぎ技術の継承~」テーマにしたトークショーも予定されている。
テーマブース内では、飛騨の広葉樹活用や伝統技術の継承などをテーマにしたトークショーが行われる(3面参照)。昨年のフェスティバルで開催されて多くの来場者が集まった「広葉樹活用サミット」に続いて20日に「ひだ広葉樹活用シンポジウム」が開催される。
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