ニュース2024.10.06
――今回は「心の豊かさ」をテーマに、メイン会場は中心から広がるレイアウトになっていますね。
高山に残る「高山陣屋」には「榑(くれ)へぎ」の技術が使われています。スギなどを割いて作った板を並べて屋根や板張りに使う技術ですが、いまも数少ない職人が受け継いでいるその技術をテーマに、メイン会場では実際に宮大工による実演も行われます。また、昨年は土日に行った「飛騨つくり手市」が、今年は会期を通して開催されます。
今回のテーマである「心の豊かさ」は、飛騨デザイン憲章の第3条に掲げられています。第1条「自然との共生」、2条「人がつくる」、3条「心の豊かさ」、4条「伝統を生かす」、5条「永続性」…これらは全てつながっているのです。この憲章に定められていることは、まさにSDGs(持続可能な開発目標)といえるもので、私たちはそのサイクルの中でものづくりを行ってきました。自然から生まれるものを使って人が作る。さらに伝統技術を生かした豊かな生活。そういったことを連想していただければと思います。
ちょうど同じ時期に岐阜県で第39回国民文化祭/第24回全国障害者芸術・文化祭が開催されます。そこでも関の刃物など伝統技術が披露されます。フェスティバルでも関鍛冶の技術を受け継いだ職人に特注して作った「くれへぎ」の道具を展示します。こうした展示を通して、昔から伝わる飛騨の暮らしを知っていただければと思います。
――飛騨高山の国産広葉樹の利用はどの程度進んでいるのでしょうか。
国産材や地元の材料を使った商品開発も進んでいます。昨年は広葉樹活用サミットを開催しましたが、今年は「ひだ広葉樹活用シンポジウム」を20日に開催します。
広葉樹サミットは、10数年前から旭川を往来しながら開催しているものです。その当時からずっと国産材をしっかり使っていくための活動を行っています。国産広葉樹は、国有林も含めると、実際には資源として使えるものが多くあるのです。飛騨高山の場合、森林率は93%に上り、そのうちの約60%を広葉樹林が占めています。大径木も森の奥に入れば残っています。
そういったものを私たちが資源として管理しながら使っていくことが必要なのです。ナラ枯れなどで二酸化炭素やメタンガスの発生源になる前に伐って、光合成率も上げて、なおかつその材料を100年、200年使える家具にすることによって炭素を固定化する。そうすることによってLCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)を実現する。SDGsが言われる前から、私たちはそれを目指してやっていたわけで、「飛騨の家具」ブランドも10年保証の厳しい認定基準を設けています。
――白川代表は、飛騨に広葉樹の製材所がもっと必要であることを訴えていますね。
一番ネックになっていることがそこですね。今回もオープニングのトークセッションで高山の田中明市長を交えて製材所の課題や森林環境譲与税の活用について語る予定です。
県からは、県産材を使えと言われるのですが、使いたくても材が出てこなくて、出たとしてもパルプ材になってしまう現状を知ってもらうために今年の冬、河合孝憲副知事にお声掛けして視察に来ていただきました。私たち川下も県産材を使っていることを見せるとともに、使いたいという意思表示をしていかなければいけません。
一般消費者は、川上から川下までのストーリーをしっかりと伝えていけば、ある程度値が張っても仕方ないと理解してくれると思います。小径木であろうと、それをはいで、技術を駆使して天板1枚を作るストーリーがあれば、それが付加価値になります。そういったことを私たちメーカーはしっかりと示さなければいけません。
県や市にも林業の人手不足や製材所の設置をはじめ、しっかりと助成をしてほしい。製材所については、木材会社を誘致するのも一つの方法だと思います。行政がそこをどう考えるかです。
本当は国有林には大径木もあるですが、その森林資源の有効活用についても道を開いてほしいと思います。私としては、次の世代にしっかりとバトンタッチする活動を続けたいと思います。
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