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★世界初の技術で捺染を簡易に ミマキエンジニアリング「TRAPIS」によるファブリックの革新

昇華転写インクジェットプリンター「TS330-1600」
顔料転写対応の高プレス圧転写機

 産業用インクジェットプリンタや3Dプリンターなどを製造するミマキエンジニアリング(長野県東御市)は、世界初の次世代捺染(なっせん)システム「TRAPIS(トラピス)」の販売を開始する。11月20日から22日までの3日間、東京ビッグサイトで開催されるJAPANTEXに出展する。
 従来の捺染は、熟練した職人の経験や技術に加えて、製造工程で大量の水を使うため、ある程度の生産規模が必要となる。「トラピス」の構成は、専用インクジェットプリンターと高プレス圧転写機のたった2台。専門技術や知識がなくても、簡単にプリントできる。従来の方法と比較して廃水を最大90%削減し、二酸化炭素排出量を最大92%削減することができるという。
 トラピスは1種類のインキで、麻や綿、ポリエステル、ナイロン、混紡繊維などの生地にプリントできる。8色のインキを搭載し、特殊コーティングされた紙にまず絵柄を出力する。受理層にインキを乗せ、転写機で熱と圧力をかけて受理層を生地に乗せる。
 「イラストレーターなどで作成したデザインを読み込み、好きな生地にサンプル印刷することも簡単にできる」と同社営業本部グローバルマーケティング部担当部長の林宏和氏。同社は以前から、Tシャツなどに絵柄を転写する昇華型プリンターを開発・製造してきた。「その技術を結集して発展させたのがトラピス。大型捺染システムとしては世界初の技術」と同担当部長の原田智充氏は強調する。
 従来、大型設備が必要だった捺染がたった2台の機器で、しかも一人で仕上げることができる。例えば、家具メーカーや販売店が、顧客の注文した絵柄をその場でプリントすることも可能となり、よりオーダーメードな世界をトラピスは実現できる。まさにインテリアのファブリックのデザインと販売を大きく変える可能性を秘めている。

転写で幅広い生地に対応

 ――なぜインキを変えなくてもいいのでしょうか。
 林 インキの成分は捺染顔料と同じですが、コーティングをほどこした特殊な転写紙を使うことによって、インキを変えなくてもさまざまな生地に対応できるようになりました。
 ――従来の昇華転写印刷とどこが違うのですか。
 林 紙を使うのは同じですが、染色のやり方に違いがあります。トラピスはコーティング材を生地に転写します。昇華転写は紙の染料に熱をかけてガスにして繊維に浸透させています。昇華転写は以前からある技術です。
 ――開発で苦労されたことは。
 林 いろいろな生地に印刷できることはわかっていたのですが、実際に印刷するとどうなるのか、最適な転写の条件が生地によってどう変わるのか、というところが一番苦労したところです。
 ――家具業界のビジネスを変える可能性を持った技術だと思います。
 原田 捺染は水を使い職人の知識が必要となるため、事業を継承する難しさがあります。簡単に染めることができるというところに、必ず需要があるだろうと経営トップが確信を持ち、ブラッシュアップしながらプロジェクトを進めたのは、まさに先見の明だと思います。これから、プリント業界に限らず、家具・インテリアやアパレルなどいろいろな業界にアプローチしようと思っています。

木目生かした印刷でテーブルにオリジナルデザイン

 同社の創業は1975年。80年代に案内板や車体などのサイングラフィックスを手掛けるようになる。90年代には屋外広告看板の製作に使われるインクジェットのグラフィックプリンターの開発を手掛けるようになり、産業プリントにおいて数々の革新的な技術を開発した。2000年代にテキスタイル関連の、環境負荷や職人が育たなければ産業が終わってしまう事業承継に着目、製造技術を革新する環境に優しいデジタルプリンターの開発を手掛けた。
 カリモク家具は、UV硬化型インクを使った同社のフラットベッド・インクジェットプリンターを採用。木目が透けて見えるオリジナルプリントの製品を作っている。
 

プリントされた紙とその絵柄の紙を転写機にかけた麻の生地
トラピスで出力された生地を張った家具のサンプル
原田氏(左)と林氏(右)

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