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★【モクコレ2023ステージ講演から】ワイス・ワイス フェアウッドを常識に~国産材を活用したものづくり~

野村由多加氏
諸塚村の小学生によるCMビデオ

ワイス・ワイス コーポレートコミュニケーション部リーダー 野村由多加氏

 フェアアウッドは、伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材・木製品です。2009年からフェアウッドを積極的に活用してきたワイス・ワイスは、日本各地の林業地に直接足を運び、クライアントに対して木材利用の意義や効果、地域材による空間づくりの素晴らしさなどを丁寧に伝え、森と人を結ぶコーディネーターの役割を担ってきました。
 「作り手よし、使い手し、社会よし、未来よし」の"四方よし"を実現するため、地域や企業に愛される家具や空間をつくる具体的なプロジェクトをご紹介します。
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 ワイス・ワイスは1996年創業。皆さまに家具、インテリア、建築、雑貨などを提案し、豊かな暮らしをつくっていく会社です。2008年にグリーンカンパニー宣言をし、国産材への切り替えを進めてきました。
 家具は、合板や無垢材、MDF、金属などさまざまな素材を使います。どこから来た材料なのか、だれが作っているのかを考えると、1つの製品は100人の手によって作られています。たくさんの方が関わっているものとして、作る責任、使う責任をしっかりと啓発しながら家具を作り、売っていこうということになりました。
 弊社が他の家具メーカーさんと違ってるところは、大きな自社工場は持たず、素材が取れる地域に行って、その近くで加工する形をとっています。ウッドマイレージで、できるだけ近い工場、産地をつなぎながら作ることでCO2排出を削減していく。そんな形でやっているので家具業界では異端児といいますか、珍しいメーカーです。
 東日本大震災後に栗駒という宮城県の被災地に行き、現地の方たちとスギを使った家具開発を行いました。スギは柔らかく、空気を含んで、座った時にお尻が温かくホッコリします。手触りもスギならではの心地良さがあるのですが、スギで椅子を作るのは難しく、そういう意味では先進的な取り組みとなり、発表した製品は数々の賞をいただきました。

森と人を結ぶコーディネーター

 一方、家具への広葉樹の利活用はなかなか進んでいない現状があります。そもそも日本の林業は針葉樹をメーンに植林してきたので、広葉樹を大量に手に入れようとすると、いくつもの山から少しずつ寄せ集めて製材する必要があったり、いろいろ難しさがあります。広葉樹の活用はこれからの大きな課題であるかと思います。
 また木材になるまでの期間、山のサイクルを、お客さまに分かっていただくのが大変で、「早く早く」、「一週間後に見積もりくれ」とか、そういう方々に工程などをきちんと説明しなければなりません。たとえば乾燥してある材があれば半年。さらに人工乾燥まで行っていれば2~3カ月で数十脚の椅子ができます。伐採から始めると半年~1年以上かかるわけです。
 そうしたことを理解していただいた方と一緒に、木をたくさん使ったオフィス空間や、木材家具の温かな空間がある高齢者サービス付き住宅などに取り組んできました。
 弊社を応援していただいたパタゴニアさんには、それまで米国から調達していた材料を日本に切り替え、その調達のパートナーとして弊社を選んでいただき、顔の見える木材を投入しました。
 またスターバックスさんは、各店舗の一番大きなテーブルを「地元テーブル」と名付け、地元の素材または地元の職人たちと作って約60店舗に納めました。
 群馬県上野村では、都心から移住した木工作家の人たちと木工品のマーケットづくりを一所懸命やっています。家具や木製品だけでなく地域全体の産業の活性化を目指して村の人たちとネットワークを組み、自治体とも一緒になって取り組んでいます。

村の子どもたちに励まされて

 ワイス・ワイスが長く関係してきた地域に宮崎県諸塚村があります。2012年に村自体がFSC認証を取得した日本初の自治体です。ここでは江戸時代からシイタケ原木を栽培しており、原木が太くなり過ぎるとシイタケ栽培には適さないということで、これを使って家具を作れないかと弊社に相談がありました。
 シイタケ栽培など複数の事業をやりながら暮らしてきた人たちなので、林業に対する意識が高く、子どもたちも教育でこれを継承しています。
 たとえば大人たちにインタビューしたビデオを1年間かけて作っていますが、その中で子どもたちは「林業の持続は地球の持続です」と言っています。子どもたちが、そういうことを自分で吸収して、自分の言葉で伝えていることに驚きました。
 私自身も諸塚村の小学校6年生の女の子から「あなたのやりがいは何ですか」と質問されたことがあります。「それは、つながりです」という話をしたのですが、彼女はそれを持ち帰ってCMビデオを作りました。タイトルは「林業はヒーロー」。(ビデオを上映)
 この映像を見ると私は泣きそうになりますが、皆さんいかがでしたでしょうか。(会場から拍手)小学校6年の女の子が先生と一緒に作ったCMですが、これにすごく励まされました。
 きょうのタイトル「フェアウッドを常識に」というのは大きなビジョンですけれども、それは一人ひとりに関わってくることですので、今できること、さらに子どもたちの未来のためにできることを皆さんと一緒に考えていきたいと思っております。

 ◇講師プロフィル
 のむら・ゆたか
 1981年長野県生まれ。2011年ワイス・ワイスに入社。全国の林業地、製材所、木工所、工場などへの直接訪問を重ねることで関係を構築し、国産材・地域材を使った家具づくり、空間づくりを行う。営業・企画・広報と幅広く担当し、サステナブルで豊かな暮らしを提案している。

パタゴニア横浜関内ストア
スターバックスの「地元テーブル」
宮崎県諸塚村のFSCファニチャー

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