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★「誰から買うか」賢く選ぶ社会に 日本の森の価値を高めるために―ワイス・ワイス最高執行責任者・佐藤岳利氏に聞く

日本の伝統を受け継いだ暮らしの道具を販売するショップ「ワイス・ワイス トゥールス東京ミッドタウン店」(東京都港区赤坂)に7月、「家具コーナー&ギャラリー」が登場。佐藤氏が手掛けた全国の地域材の家具が並んだ

 森林・林業・木材7団体による国産材の安定供給体制の構築に向けた「共同行動宣言」(7月13日号詳報)に家具業界はどう向き合うか。全国に木材供給網を築いて日本の森から生まれた家具のプロデュースを手掛け、地域材利用の先駆として道を切り開いてきたワイス・ワイス(東京都新宿区)最高執行責任者の佐藤岳利氏に聞いた。

みんなで豊かになっていくために

 ―輸入材の価格が高騰し、それが国産材にも及んでいます。今、木材供給の現場で何が起きているのでしょうか。
 ワイス・ワイスは2008年11月、違法伐採の可能性のある木材を使わず、国産材を使っていく「グリーンカンパニー宣言」をデザイナーズウイークの会場で発表しました。事前にプレスリリースを200社ほどに送り、100人収容できる発表会場を用意したのですが、取材に来てくれたメディアはわずか2社でした。
 その時に強く思っていたのは、自分たちだけがもうかることばかり考えて、第三国の熱帯雨林を破壊し、未来の社会にツケを回すようなことはやめようと。これは後にSDGs(持続可能な開発目標)にも掲げられたことです。
 その宣言を発端として「地域社会と自然環境が豊かになる仕組みをつくるので協力してください。サプライチェーンをつなげていきましょう」と呼び掛け続けました。あれから14年。その間にパリ協定とSDGsが国連で採択されました。その波が、ようやく日本にやって来ました。
 先日、マルホン主催の講演会で「家具・内装の木質化、SDGsとロシアショックの視点から」というタイトルでお話ししました。その中で私は「ロシアショックで輸入材が高騰したから国産材を使おうというのはおかしい。いつまで高い安いで仕入れているのか」と訴えました。そんなことで動いていたら社会も環境も劣化の一途をたどります。
 自分が勝てば負ける人がいるのが競争社会です。そうではなくて、みんなで豊かになっていかなければいけません。そのために「誰から仕入れるのか」を考え、つながっていくことがとても大切なことなのです。SDGsやトレーサビリティーの根幹は、つながっていくことなのです。自分の行動が回りまわって、世界の熱帯雨林破壊に影響している。そうならないように、地域が良くなる購買行動、発注のやり方があるのではないか、ということです。
 ―今度は国産材もひっ迫するのではないかと心配する声もあります。
 輸入材の価格が上がったから国産材を買う、そして国内でも価格競争が起きる。それでまた輸入材が下がったら国産材を使わなくなってしまう。同じことの繰り返しです。「国産材だからいい」というのではなくて、再造林にきちんと取り組んでいる人や、三重の速水林業、宮崎の諸塚村、岩手の岩泉町など森林認証を取得している事業者のように、100年先の未来まで考えて一生懸命に循環型の森づくりをしているところを応援するべきです。

「共同行動宣言」とどう向き合うか?

 ―家具新聞は7月13日号で共同行動宣言を取りまとめた日本林業協会の島田泰助会長のインタビューを掲載しました。感想はいかがですか。
 まったく島田会長のおっしゃる通りだと思います。一字一句大きくうなずきながら読ませていただきました。共同行動宣言は立木価格まで踏み込んでいます。ウッドショックで木材価格が上がっても、山元にそのお金がいかないのは結局、1円でも安く仕入れて、1円でも高く売る価格競争を前提にしているからなのです。
 国産材の安定供給のためには、木材の発注側が川上の森林経営者や山を管理している会社と関係性を持つことが必要です。100年単位で企業経営を考えることは難しいと思いますが、森づくりは100年単位なのです。そうした意識で仕事をしていくことがすごく大切で、一緒に長期スタンスで考えることが必要であると島田会長もおっしゃっていますね。
 出所が不明確な木や違法伐採のリスクがある木を安く買うよりも、少々高くても健康な森づくりや森林認証にきちんと取り組んでいるところを応援する。その会社に勤めている社員が誇り持って仕事に打ち込めること。それが企業価値を高め、良い循環を生み出すことにつながります。
 ―島田会長のインタビューでは「家具業界が山の価値を引き出してほしい」という言葉もありました。それがまさに、これまでワイス・ワイスが取り組んできた事業だと思います。
 地域の木材を使うことによって、その地域にお金が回り、豊かになる。そのつながりを自分たちが支え、循環の一部になるというスタンスでメーカーさんが仕事をされると、すごくいい社会になっていくと思います。
 自分の購買行動による影響について、思いを馳せること。自分が使っている家具の原産国を知っていたとしても、どの地域で誰が管理して伐採し、どうやって運ばれた木材を使っているのか、ほとんどの人は知りません。
 こうした情報を伝えていない産業界だけが悪いのではなく、最終的には買い支えている一般生活者にも起因しています。1円でも安く買えることが賢い消費ではなく、本当の賢さとは、自分の購買行動がどのように影響するか想像できることだと思います。
 パームオイルを作るためにものすごいスピードでジャングルを切り開いたため、熱帯雨林が消滅してオランウータンが絶滅の危機にひんしている。そのパームオイルは、カップ麺、スナック菓子、洗剤や化粧品にも使われています。ではパームオイルが全て悪いかというと、そうではありません。サステナブルに管理をしてパームオイルを作っているプランテーションの経営者もいます。だからこそ、サプライチェーンを理解し、誰から買うのかが重要なのです。

子どもたちに伝える大切さ

 ―それを生産者や販売側も、一般消費者が分かるようにしないといけませんね。
 それを私たちは訴え続けているのですが、なかなか浸透しません。その情報を欲しがる消費者がいるのかどうかということもカギとなります。
 そこで私は子どもに教える大切さを感じて今、小中学校でSDGsについて教えています。先日、私の母校である青山学院初等部の5年生と6年生に授業を行ったのですが、その時は、観測史上最短で梅雨が明けた翌日で、40度を超える暑さを記録した地域もありました。私も汗だくで授業をしながら「この地球温暖化はなぜ起きているのか」と問い掛け、暮らしの豊かさと並行して、産業革命から二酸化炭素が増え続けていることをスライドを使って説明するとみんな食い入るように話を聞いて、その反応は大変なものでした。
 「おじさんの場合は、こうやって木を使う仕事を通じて、よりよい未来になるために仕事をしています。みんなも何か一つでも自分にできることがあるのではないでしょうか。よりよい未来、よりよい社会になるように意識し、行動を起こしたら絶対にいい世の中になるはずです。みんなで頑張りましょう」
 それはそのまま、大人にも伝えていくべきことであると思います。

 さとう・たけとし 1988年青山学院大卒、乃村工藝社入社、96年社内ベンチャー制度でワイス・ワイス設立。2007年「ワイス・ワイス トゥールス東京ミッドタウン店」開設、08年フェアウッドにシフトするグリーンカンパニー宣言を発表。全国に森と木材のネットワークを構築、フェアウッド研究部会を通じて日本の森の大切さを訴えてきた。21年「ワイス・ワイス トゥールス根津店」開設。地域材を使った家具はグッドデザイン賞、ウッドデザイン賞など受賞多数。全国の小中学校、大学でSDGsなどの授業を行っている。日本ウッドデザイン協会理事。

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