ニュース2022.07.11
時代の要請に応える国産材の安定供給体制の構築に向けて(共同行動宣言2022)
昨年来のいわゆるウッドショックに端を発し、国内において木材需給の逼迫が続いている状況に加え、今般のウクライナ情勢の影響により世界の木材需給がさらに不安定な要素を有してきていることにかんがみ、木材の経済安全保障の観点から国産材製品への転換を促進するとともにそれに応える国産材の安定供給体制の構築が必要となっている。
一方、国際的にはCOP26での共同宣言において、「2030年までに途上国での持続可能でない木材の伐採を無くすることへの取組」が100ヵ国以上の国々により採択されるなど、森林の持続性の確保が木材利用の前提とされてくる中、我が国においては長く続いている山元立木価格の低迷から森林所有者の経営意欲の喪失が進み、主伐後の再造林が放棄される等の深刻な事態が生じており、国産材利用に当たっては持続性の確保された木材以外は使わないという方向へのシフトを図ること及びそれを支えるための持続性の確保された国産材原木・製品の安定的な供給体制の整備が急務となっている。
こうした状況に対処していくには、山側による原木の増産、再造林の実行体制の確保とともに、それを支える国産材製品への需要側の取組が必要であり、このためにはお互いが強い信頼関係の下、供給者と需要者が一体となった取組を構築していくことが求められている。
2021年10月に施行された都市(まち)の木造化推進法を背景として、木材利用推進本部等による対策が始まり国産材の活用に向けての動きが国民全体に広まろうとしている状況の下、長きにわたり低迷し、持続性の確保に影を落としていた国産材価格の水準が回復しつつあること及びSDGsに言う「作る責任・使う責任」の概念の広がり等を契機として、適正な森林の管理、林業の持続性の確保を前提とした安定供給体制を山側と需要者側の連携の下で構築していく大きなチャンスを迎えている。
日本の森林が健全な姿で次世代に受け継がれていくため、持続性の確保された国産材の原木及び製品の生産、流通及び利用と国産材シェアの拡大を生産者・需要者が一体となって実現することに向けて、我々森林・林業・木材産業関係団体は率先して以下の行動を起こすことを宣言する。
記
1 海外市場の影響を受けにくく、木材需要に的確に対応できる需給構造を実現するため、都市の木造化推進法に基づく国産材のシェア拡大対策の一層の推進に対する働きかけを行うとともに国産材の安定的かつ持続的な供給体制を可能とするための原木及び製品の増産及び主伐後の再造林の着実な実行に向けた体制の整備に取り組む。
2 持続的な森林経営と、国産材の安定供給との両立を図るため、森林所有者が経営意欲を持って林業生産活動に取り組める持続性が確保された立木価格水準を念頭に、生産者と需要者が各々のコストを適切に転嫁することを前提とした生産・流通体制を築くとともに、「伐ったら植える」ことが約束された木材を消費者が選択し易くするための木材流通等における具体的な仕組み作りに取り組む。
3 2050年カーボンニュートラル、国土強靭化、地方創生などの国家的課題への対応を背景に、国産材原木・製品供給者と需要者間における相互の信頼関係をもとにESG投資などの社会的な動きも活用しつつ、国産材の優先利用と持続性の確保された国産材の原木及び製品の利用を支える国民運動の形成など国をあげた取り組みの構築に向けた働きかけを行う。
4 以上のような行動を支えるため、国有林を含む国、地方公共団体、産業界からの理解の醸成及び支援体制の整備に努める。
令和4年6月1日
一般社団法人日本林業協会会長
島田 泰助
全国森林組合連合会会長
中崎 和久
全国素材生産業協同組合連合会会長
日高 勝三郎
日本合板工業組合連合会会長
井上 篤博
一般社団法人全国木材組合連合会会長
菅野 康則
一般社団法人日本林業経営者協会会長
吉川 重幹
一般社団法人全日本木材市場連盟会長
守屋 長光
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