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★日本発 素敵な暮らしを世界へ 総合プロデューサーの喜多俊之氏が語る合同開催の舞台 Gift Show&LIVING&DESIGN特集②

2022年、ギフト・ショー会場にプレイベント展示ブースが登場。カンディハウスや桜製作所などが出展し、日本の竹や木材を使った喜多氏の作品も並んだ
喜多俊之氏

 海外の素敵(すてき)な暮らしを日本にも普及させようとプロダクトデザイナーの喜多俊之氏は「LIVING&DESIGN」を立ち上げた。ギフト・ショーとの同時開催で「LIVING&DESIGN」はどう変わり、日本の暮らし産業の発展に向けてどう貢献していくのか。喜多氏に聞いた。

 ――ギフト・ショーとの同時開催に至った経緯は。
 例年20万人もの来場者を動員するギフト・ショーで展示された特別エリア「RENOVETTA」(リノベッタ)を監修したり、アドバイザーとして参画したりと以前からギフト・ショーとは関わりが深かったのですが、そのころから同時開催の提案をいただいておりまして、機が熟して今回の同時開催に至りました。
 中国をはじめとするアジア諸国では国策としてデザイン立国を目指しています。日本も暮らしの中にデザイン性の高い家具などを取り入れるようにならなければ、アジア諸国のペースについていけない。国際的にも日本の家具が注目されるきっかけづくりが必要です。
 LIVING&DESIGNは大阪で開催していた時も、海外のメディアに取り上げられて注目されていました。このたび、2月のギフト・ショーでプレイベントブースを出展した時も反響が大きく、皆さまから多くの期待の声が寄せられました。9月のギフト・ショー開催がさらなる飛躍のきっかけになればと思っています。
 ――これまで、LIVING&DESIGNなどを通じて呼び掛けてきた暮らし産業の発展とは。
 欧州では1960年代後半に、家庭の主婦が主役となり、自宅にお客さまを招くためにインテリアを選ぶ習慣が広がりました。特にイタリアではその文化が発展して今日のデザイン大国の基盤となったのです。当時、日本は戦争で焼け野原になった国土の復興期で新築住宅が次々と建てられていました。一方、欧州は国土が荒れたものの基本的に住まいはインテリアや内装に手を加えたリノベーションで対応したので、インテリア産業が早期に立ち上がったわけです。
 戦後の狭い住宅が多い日本では、お客さんをもてなす「よそ行きの家具」を購入するという発想がなく、日常生活を中心としたライフスタイルが主流になっています。たとえ狭いマンションに住んでいたとしても、デザイン性の高いインテリアに囲まれた生活をすれば「素敵(すてき)な暮らし」を実現することができます。それが暮らし産業の発展につながるわけです。
 低価格な家具だけではなく、本来求められるはずの良質な家具で暮らし産業を活性化させれば、経済を発展させることができるのです。コロナ禍の中で、痛いほど日常生活の大切さが分かった方も多いと思います。今こそ、素敵な暮らしの考え方を世界レベルに持っていく時です。
 素敵な暮らしとは、なにも高級品に囲まれた生活ということではなくて、素敵な感性を持った普通の人たちの暮らしのことなのです。良いものを作り、輸出立国としての活路を見い出す時期に来ています。
 ――SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが活発化してきたことも、素敵な暮らしのきっかけになるのでしょうか。
 SDGsにあるサステナビリティーは本来、日本古来の文化として培われてきたものです。江戸時代の文化はその最たるもので、もったいないとか、ものを無駄にしない生活を私たちは古くから教えられてきました。だからこそ日本は、世界にサステナビリティ―を発信できる土壌を持っているのです。
 山林に伐採期を迎えた針葉樹があふれ、竹林が整備されずに荒れていることから、私は以前から針葉樹や竹を使った家具のデザインに取り組んできました。日本ならではのものづくりとライフスタイルを発信して、国際社会の先頭に立ってサステナブルな文化を発信していくべきだと思います。
 ――ギフト・ショーとの相乗効果は。
 50年ほど前にイタリアにわたり、彼らの暮らしぶりを見て、いつかは日本も素敵な暮らしが実現する時代が到来すると思っていましたが、なかなかそうはなりませんでした。では自分から動こう、と始めたのがLIVING&DESIGNです。10年以上の歳月を経て、このたび、ギフト・ショーの芳賀社長からのお声掛けもあって、東京で同時開催することになりました。
 ギフト・ショーは例年20万人もの来場者数を誇る国際見本市です。生活を舞台で例えるとしたらギフト・ショーは、雑貨をはじめ小道具が数多く出展されています。では、生活の大道具は何かというとやはり家具や水回りです。それらがこれほどの規模で、同時に見られるイベントは世界でも数少なく、国際的にも大変ユニークな見本市になります。
 日本は素晴らしい文化を持ち、世界でも有数の職人たちがそろっています。家具産地で、これからの家具製作に取り組んでいる皆さまもぜひ出展していただければと思います。そして、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)して刺激し合い、消費者のニーズに応える家具とは、素敵な暮らしとは何か、ぜひ一緒になって研究してほしいと思います。家具産地に行くと、若手の方々もとても頑張っていて、その頼もしい姿をたくさん見てきました。私も仲間に入れてもらって頑張りたいと思います。

きた・としゆきき 1969年からイタリアと日本でデザインの制作活動を開始。家具、家電、ロボット、家庭日用品に至るまで、多くのヒット製品を生む。作品の多くがニューヨーク近代美術館、パリのポンピドーセンターなど世界のミュージアムに永久収蔵されている。シンガポール、タイ、中国などにおいてデザイン活性化の顧問を務め、日本「グッドデザイン賞」審査委員長など、国内外のデザイン産業の要職を歴任。大阪芸術大学教授。2011年イタリア「ADI黄金コンパス賞(国際功労賞)」。17年イタリア共和国功労勲章コンメンダントーレ叙勲。18年「知財功労賞」受賞。

2009年初開催でイタリアの建築家、アントニオ・チッテリオ氏が基調講演した
2015年、グッドデザイン賞(Gマーク)の受賞作品が会場に並んだ
2019年、日本全国の家具産地へと出展が広がっていった

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