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運送経験者は雇わない  ラストワンマイルの提案 ① ロジ・テックトーシン

ロジ・テックトーシンのドライバーと運輸スタッフたち。右から2番目は鵜飼眞史常務
鵜飼史郎社長

 コロナ禍による「巣ごもり需要」で家具の電子商取引(EC)の売り上げが伸びている。EC市場の拡大とともに、物流業界のドライバー不足も深刻化している。デジタル化の及ばぬエンドユーザーまでの、ラストワンマイルと呼ばれる最後の区間の課題を克服して、販促効果に結び付ける方法があるのか。70年近い業界歴を持つロジ・テックトーシン(神奈川県川崎市)の鵜飼史郎社長に聞いた。

納品に付加価値を
「運転できる納入技術者」養成


 ――物流業界に入ってその変遷を経験されていますが、今の業界はどう映るのでしょうか。
 物流といえば、倉庫、加工、ピッキングなど物を動かしそれを輸送することです。物流全体の中の今の運送会社の使命とは何かということを考えたときに、まず物を運ぶことが基本になるわけですが、さらに、BtoCにおける運送は、納品を伴うサービス業であると思っています。お客さまのところまで家具を運んで組み立て、据え付けるために運送する。私たちは、物を納めるために運送することを社是としています。
 BtoBの代表格であるコンビニエンスストアの定時配送も大切な輸送の一つです。しかし、私たちはその道を歩まない。お客さまのところで家具をセッティングして、毎日の生活に使えるようにすることを大切にして、そこに輸送を組み合わせる。単なる運送業ではなくて、納品サービス運送業であるという理念を持っています。
 従ってドライバーも運転免許があればいいというわけではなく「運転できる納入技術者」であることが求められます。個人の家庭や会社の心臓部に入ることもあるわけですから「お客さまに気に入られ、ありがとうと言ってもらえるドライバーであること」を大切にしています。
 ドライバーの採用に関しては厳格な基準を設けています。その中に「運送会社経験者は採用しない」という基準があります。その理由は、納品サービスを重視しているからです。求人も「運転手募集」をうたった広告を出すことはありません。初心者から育て上げることを心掛けています。しかし、こうした採用基準を満たす方は、20人に1人いるかいないかです。それだけ求人にも会社の理念を貫いています。
 ――ECに力を入れるメーカーも増えており、流通革命が進行しています。
 私たちの仕事もEC関連の運送が増えています。こうした物流の変革期の中で、やはり厳しい価格競争があるわけですが、私たちはそれに巻き込まれることなく、試行錯誤しながらも新しい商品と新しい流通をつくろうとしているところと一緒に仕事をしたいと思っています。
 大手の宅配業者のように、日用雑貨の運送の量をさばくところと、納品に重点を置いている私たちとは違います。私たちは量を追う仕事をするつもりはなく、家具や家電、介護機器、事務機などに特化して、取り扱う商品をできるだけ限定するようにしています。
 地方から見積もり依頼がある場合、首都圏の距離感がなかなか伝わらないことがあります。例えば、同じ神奈川県のため、川崎と厚木もそれほど変わらないと言われることがあります。運送業は人件費の塊ですから、時間と距離との戦いともいえます。それを理解していただけるところと、ぜひお仕事をやらせていただければと思います。
 私と同じような物流業者はいるはずです。日々の仕事に追われている中で、どこかで転換しなければと悩んでいる方もいるでしょう。お互いのノウハウを共有して、地域別に何社か集まって緩やかな協業体制(ユニオン)を組むことができれば、それが家具業界にとってもユーザーにとってもプラスになるはずです。
 ――これまで大手運送会社での激しい競争も経験されていますが、こうした経験を踏まえた上で今のロジ・テックトーシンの理念があるわけですね。
 私たちはお客さまの規模に関係なく全てにベストを尽くし、選んで良かったと言われるように心掛けています。納入日が決まっていれば倉庫保管料はかかりません。料金は地域・エリア別と商品別の運賃を勘案した体系を設定しています。以前はトラックをチャーターした方が安いのではないかと言われたこともあったのですが、早くからこうした料金制を採用して、結果としてEC時代に対応することができました。
 ――家具の修理依頼も増えてきています。修理やメンテナンスについても連携を深めていく必要があると思います。ラストワンマイルを担う運送業者の情報は非常に大切ですね。
 現場で働くドライバーは、エンドユーザーの生の声を聞いているわけです。物流業者はユーザーの要望をいつも承る立場です。家具の修理やメンテナンスも含めて、発注者とユーザーの間に立って情報を伝達することが大切だと思っています。


うかい・しろう 1931年三重県桑名市生まれ。54年南山大学文学部卒、四日市倉庫入社、63年東京支店開設のため川崎に転居、69年同社退職、東伸倉庫設立。2002年ロジ・テックトーシンに社名変更。


<会社概要>
株式会社ロジ・テック トーシン
本社・物流センター
 神奈川県川崎市宮前区馬絹2-2-31
 倉庫2階建て約1428平方㍍
営業センター
 神奈川県川崎市宮前区馬絹4-2-29
 東名川崎IC・国道246至近
 倉庫3階建て約1983平方㍍
電  話 044・877・6111
ファクス 044・854・8472
ウェブ http://www.to-sin.com/

ベテランドライバーが細心の注意を払って家具を積み込む
営業センターの3階建て倉庫

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