ニュース2019.10.23
林政記者クラブ
林業・木材産業界の“隠れた功績”を発掘し、顕彰しているグリーン賞の表彰式が東京都千代田区の商工会館で行われ、佐藤木材工業代表取締役社長の佐藤教誘氏(北海道、76歳)が、林業界の意識変革、森林認証の普及にかかわる功績で表彰された。
同賞は、本社を含む林業・木材産業界のメディア9社が加盟する林野庁林政記者クラブが主宰、今年で60回目となる。同クラブ代表幹事の長谷川健敏氏(農林出版社)は「木材の高度加工、高性能林業機械化、さらには森林認証制度の普及とわが国の林業の発展に多大なる貢献を果たした」と授賞理由を説明した。
佐藤氏は「林業に携わる人たちと地域が誇りを持ってもらうことが認証取得の理由。認証材が建築物にブランド材として使われ、認証が当たり前のこととなるよう水準を上げ、国際競争力を上げるために林業機械のAI化に乗り遅れず、機械化をより一層推進する」と語った。
林野庁の本郷浩二長官は「まさに的を射た非常に大切なことに取り組み、林業の未来を切り開いた」と功績を称えた。
林業関係団体を代表して一般社団法人日本林業協会の前田直登会長は「幅広く木材産業の事業に携わり、先進的な取り組みは特筆に値する」と祝辞を述べた。
選考委員7団体を代表して一般社団法人全国木材検査・研究協会の山田壽夫理事長は推薦理由について「先駆的な取り組みをされた方であり、あきらめない粘り強さが受賞にふさわしいことだと思った」と説明した。
高性能機械普及に尽力
佐藤氏は、1943年、北海道生まれ。大学卒業後、 松下木材勤務を経て、66年に実父が経営していた北海道紋別市の佐藤木材工業株式会社に入社。1990年に代表取締役社長に就任した。同社はげたや割り箸の生産が主体だったが、93年にトドマツ間伐材の製材へ移行、同時に乾燥化も進め、2001年にはカラマツ等針葉樹構造用集成材の生産を開始した。また美しい白さと弾力が特徴であるトドマツとエゾマツの集成材も開発した。
素材生産の分野では、まず1992年に高性能林業機械のハーベスタを導入し、2007年にはハーベスタを5台所有した。そして、林内集材作業の効率化を図るため08年にドイツ・ヴエルテ社製の大型フォワーダを、11年にはフィンランド・ポンセ社製ハーベスタをそれぞれ導入し、林業専用大型ハーベスタを活用したハーベスタ・フォワーダシステムを作り上げ、北海道内のみならず全国の林業関係者や素材生産業者の意識を変革する上で大きな役割を果たし、わが国の高性能林業機械の普及に大きく貢献した。
森林認証の普及でも貢献は大きい。まず04年に社有林568・8㌶の「緑の循環」認証会議(SGEC)の森林認証を取得、同時に自社工場も「認定事業体(CoC)」としての認証を取得した。これはSGEC森林認証として全国で4番目。その後の追加で、現在は624㌶の社林が森林認証を受けている。
またオホーツク地域全体の森林の森林認証取得と製材工場などのCoC認証取得にも尽カし、現在、オホーツク地域では63万㌶の森林が森林認証を取得し、わが国では全国一の森林認証地帯を形成している。この認証林から生産されたカラマツ材が CoC認証工場で製材加工され、合法木材として来年開催される東京五輪・パラリンピック会場となる新国立競技場の大屋根に使われた。
さらには14年度に緑化功労者として農林水産大臣賞を受賞するなど、緑化部門でも功績が認められた。
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