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大川家具のブースにイームズ旧型「DAR」
九大の歴史的家具 廃棄から保存・再生へ

九州大学農学部の会議室で使われていた98脚の「DAR」が残っていた
脚部の接合部にショックマウントが使われている

 大川の「ふるさと家具」の展示スペースに九州大学で使われていたイームズ・シェルチェア「DAR」が展示された。
 チャールズ・イームズの代表作であるシェル・チェアは1948年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が開催したローコスト家具デザイン国際コンペのためにデザインされ、50年に発表された。
 当初はグラスファイバーで補強されたポリエステル樹脂(FRP)が使われていたが、現在はポリプロピレン樹脂製に変更され復刻されている。 展示された「DAR」は九州大学旧農学部の会議室で使われていたもので、FRPの座面にビニールレザーが張られ、裏にはハーマンミラーの刻印がある。
 98脚の「DAR」が残っており、九州大学総合博物館が保存している。その保存と活用方法の研究を進めている芝浦工業大学教授の新井竜治氏は「納品されたのは、アメリカでDARが発表されて間もない1956年と思われる。イームズに造詣が深い方が大学にいたことが想像される。半世紀以上を経て全98脚が九州大学総合博物館に回収されたことは、家具史研究と博物館にとって大変好ましい」と話す。
 イームズを研究している武蔵野美術大学名誉教授の寺原芳彦氏によると「発表されて間もないころに輸入されたとすると、相当貴重なものだ。そのころ日本でハーマンミラーを知るのはごく限られた人たちだった」という。
 同博物館准教授の三島美佐子氏は「什器レスキューチーム」を立ち上げ、九州大学キャンパス移転や建て替えに伴い廃棄の運命にあった歴史的な木製家具などの保存活動を続けている。回収した家具・什器は「DAR」をはじめ1000点近くに上る。三島氏は「塗装や木材、合板など木材加工の歴史を現物で知ることができる」と回収できた喜びを語った。今月から九州大学箱崎キャンパスの同博物館で一部が一般公開されている。

ヨコタウッドワークが九大の家具を使って作ったヒノキ製キャビネットも展示された

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