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ミラノサローネリポート アルファスパッチオ代表・ハウジングプロデューサー奥村公子氏 
過去最高の来場43万人超す 展示に「おおらかさ」

カルテルのスタンドで発表された吉岡徳仁氏デザイン「MATRIX」
岩崎一郎氏がデザインしたアルペールの「kiik」

 4月中旬に開かれたミラノサローネ国際家具見本市(ミラノサローネ)には、188カ国以上から43万4509人と過去最高の来場者が訪れた。本会場のローフィエラ出展1841社、市内ショールームなどのフォーリサローネ参加1372イベントの中から、アルファスパッチオ代表の奥村公子氏に今年のトレンド情報とハイライトをピックアップしてもらった。

異次元の空間演出 絶滅動物のモチーフなど多彩

 今年のミラノサローネの来場者が、昨年に比べて9万人も増えるとは誰も予想しなかった。
 産業と行政の協力を前面に打ち出し、ミラノの文化と企業の魅力を同時にアピールした。ミラノサローネを運営するイタリア家具工業会社会長のクラウディオ・ルーティ氏(カルテル社社長)の卓越した手腕と、ミラノ市を挙げての協力体制が生み出した驚異的な数字だった。
 今年もサステナブル、エコロジカル、ミニマル、ナチュラルといった、あまり型にとらわれないおおらかさが漂う言葉がキーワードになっていた。屋内と屋外、ホームとオフィスといった相対する目的や機能を同時に満足させるデザインや素材も多く提案された。
 一方、展示の空間スタイルは、モダンな中に適度なラグジュアリー感やクラシック要素(レトロ感)をミックスしたスタイルが新たなスタンダードとなっていた。グリーンを取り込み、ナチュラルな素材とファブリックを生かしたスカンジナビアンスタイルは、サステナビリティー意識の高まりとも呼応して、若年層に人気。アフリカンモチーフや、ポップでカラフルな空間も多かった。
 【カルテル】毎年20号館のエントランスに大きなスタンドを構えるカルテル。今年は自社の家具をテーマごとに展示した。吉岡徳仁氏がデザインし、同社の技術の粋を集めた射出成形による3Dメッシュ構造のチェア「MATRIX」は5色展開。フィリップ・スタルク氏デザインの成形合板による「KINGWOOD」チェア(9デザイン)や、数年前からカルテルが手掛けているファブリックの新柄を発表。これまでの枠を大きく飛び越えて、常に新しいものづくりにチャレンジする姿勢を大きくアピールした。
 【アルペール】ベネトン本社のあるトレビゾで1989年創業、コントラクトユースの家具を得意としている。今年は900平方㍍の広いスタンドで「together」をキーワードに4つの空間展示を行った。岩崎一郎氏デザイン「kiik」は座面、テーブル、オットマン、カウンターテーブルなどを自由に組み合わせ、目的に合った多種多様な構成に変化するモジュラー家具。デザインとその影響力を意識した空間づくりを提案した。
 【モーイ】マルセル・ワンダース氏率いるオランダのブランド、モーイ。「A life extraordinary(特別な人生)」をコンセプトに今年も異次元の空間を創りだし、デザイナーのメーガン・グレール氏(ニューヨーク)、建築家グループのコンクリート(アムステルダム)、モーイワークスの3部構成で、それぞれの世界観を表現して見せた。昨年の巨大な昆虫のデジタルプリントに続き、今年は絶滅動物をモチーフにアルテが製作した壁紙で壁面を飾った。照明デザインには日本の三宅有洋氏も参加した。フォーリサローネの中でも他の追従を許さない魅力あふれる展示だった。
 【モローゾ】多くのデザイナーが参加して毎年新作を披露するモローゾ。今年はパトリシア・ウルキオラ氏がスタンドデザインを行い、新作とアーカイブデザインを組み合わせ、熱帯の小鳥をイメージさせる色使いでオアシスのような空間を創った。日本の布団を見てインスピレーションが湧いたというエドワード・バン・ヴリィエ氏デザインのソファには、生け花をグラフィカルに表現した張り地が使われた。
 【ミノッティ】70周年を迎えた、日本でもおなじみのブランド。昨年の1・3倍ほどのスペースで4人のデザイナーが今年の新作を発表した。会場内では巨大なマントルピースを再現、傍らにはソファ「ALBERT&LEI」のアーカイブ版が展示された。アートディレクターのロドルフ・ドルドーニ氏の代表作「ALEXSANDER」は、多くのパーツを組み合わせ、あらゆるニーズに対応できる満足度の高さを追究したソファ。エレガントでクラシカルなニュースタンダードデザインの風格がある。
 ミノッティ初の日本人デザイナーとして起用された佐藤オオキ氏デザイン「TAPE」は、コンパクトサイズのソファ・チェアで、金属パーツを使った脚部、アクセントのテープ使いがポイント。どことなく温かみやユーモアが漂う。
 【エルメス】レクサスやネンドなど、毎年ビッグネームが登場するペルマネンテ美術館。今年はエルメスホームコレクションの会場となった。8㍍を超す壁で囲われた7つの展示室にはハンドメードのモロッコタイルが張り込まれた。そこにエルメスのコレクションがスポットライトの中に浮かび上がり、カラータイルの美しさと相まってノスタルジックな空間が展開された。

建築家グループ、コンクリートによるモーイの展示

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