ニュース2024.10.01
購入の補助・助成を要望
日本産木材の利活用で低炭素社会実現を目指す「木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会(LWCPC、代表理事会長・原口博光氏)」と「木の総合文化(ウッドレガシー)を推進する議員連盟(会長・衛藤征士郎衆議院議員)」は8月28日、日本産材家具(国産材)に関する政策実現委員会を参議院会館で開催した。
民政官による同委員会は今回で2回目。司会進行は同議員連盟共同事務局長の横山信一参議院議員(公明党国会対策委員長)が務め、同次長の山崎正恭衆議院議員(公明党)が議員連盟を代表してあいさつした。諸官庁からは林野庁、経産省、環境省、厚生労働省が出席して協議を行った。
カリモク家具とLWCPCはすでに同議員連盟に「日本産材家具の育成と振興政策に関する提案書」を提出。提案者として、カリモク家具取締役副社長の加藤信氏と取締役常務の白坂史丸氏が提案書について説明した。続いて政策実現委員長を務め、提案書の総括を行ったLWCPCの原口氏が、提案書の冒頭をまとめた同社相談役の加藤知成氏の「家具は文化のバロメーター」に始まり、インフラとして役割、人との関わりなど家具の本質を述べた文章の格調の高さと、家具に捧げた人生に敬意を表した。
カリモク家具と「木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会(LWCPC)」がまとめた「日本産材家具の育成と振興政策の提案」の冒頭は、カリモク家具取締役相談役の加藤知成氏による家具の本質論が展開され、中盤は職人育成の支援、日本産材家具購入時や家具生産者の補助金・助成制度、森林環境譲与税が家具まで及ばない現状を指摘している。
最後に総括として、森林の枠割と木材利用促進に関する明確な位置づけ、日本産材家具の市場がなぜ育たないのか、その取得に関する補助制度が皆無であることを指摘している。また広葉樹活用に関するさまざまな課題を指摘するとともに、政府に総合的に取り組むことを要望している。
■家具はインフラ
「現在、日本の家具・建具インテリア業界は、人手不足もあり、経営状態が厳しく、その上、減損会計が適用されると、更に厳しくなり、整備点検どころか金融機関にも見放され、廃業・倒産する店が増えつつあります」
提案書は、家具業界が置かれている厳しい状況の説明から始まり、家庭のインフラとしての家具の役割について強調している。また自然乾燥など木の養生に時間がかかるにもかかわらず「銀行からは『在庫が多すぎる』と言われ、キャッシュフローの経営時代では、家具屋は木材の在庫を持てないようになっています」。木工業はほかの産業と異なり「代続かないと初代が作った製品を直すところがなくなってしまう可能性があります」とメンテナンスの問題を指摘している。
■管轄は文科省ではないか
「家具は文化であり、建築は芸術です。法隆寺や永平寺も長い歴史の技術の伝承の中で今も残っています。日本の宮大工や左官職人らが継承する保存、修理、装飾などに関する技術が世界無形文化遺産として登録されました。家具屋もそれと同じように受け継がれてきた技術があります」
人の性格は家庭生活からできてくるものであり、家庭環境を形作るのが家具あるとして、経済や産業という視点だけで済ませることがでるものではなく、その管轄は「文部科学省の分野でもあるのでは無いでしょうか」と提起している。
さらに家具は修理して使うものであり、世代を超えて使うことによって「家庭の文化財に変身する」。そのために、職人や後継者の育成の支援策を求めている。
■日本産材家具購入の支援を
森林整備の促進は、地球温暖化対策における2030年度の温室効果ガス削減目標の達成や50年のカーボンニュートラルに貢献することが期待される一方で、日本産材家具の役割について政府の理解が進んでいない現状がある。
「国内において日本産材家具の市場育成が進まない日本は、世界のスタンダードとなるブランド力を持つ製品が育たず、輸出においても成功を収めることが困難となります。国家戦略として木製家具業界の成長に取り組むアジアの国々からも、いずれは追い抜かれることになるでしょう」
住宅取得に関してはさまざまな補助金、減税制度があり、各自治体でも独自の補助制度を設けており、日本産材を利用した木造住宅取得に関する補助金制度も実施されています。しかし現在、日本産材家具の取得を後押しする補助金、減税制度についてはない。
提案書では12年に行われた木材利用ポイントが、輸入材が主流だった木製家具業界が日本産材利用に踏み切る大きなきっかけとなったが、当初は木材利用量がすくないことから、ポイントの対象となってなかったという政府の木製家具に関する認識の薄さを指摘している。
「直接、家庭に於いて、木の質感を感じることができる木製家具は、日本産材利用のすそ野を広げる象徴的な役割があります。各々の家庭が地球の温暖化防止活動の当事しての役割をすることになります。それが暮らしの豊かさにつながることを、木材利用の量的側面から木造住宅のみに着目している政府、自治体の多くは、全く理解しておらず、このことが冒頭に述べた木製家具の文化が日本で育たない一因となっています」。提案書では日本産材家具購入時、日本産材を活用する家具生産者への補助・助成金の制度創設を要望している。
さらなる業界の参加を
木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会(LWCPC)代表理事会長の原口博光氏(政策実現委員長)は、愛知県にあるカリモク家具の本社を訪ね、加藤知成氏、取締役副社長の加藤信氏、取締役常務の白坂史丸氏と協議して提案書を取りまとめた。
「各省庁に要望を出して『検討します』だけでは成果が上がらない」と原口氏。政策実現員会はその名の通り、要望を実現させるために開催し、木製防音サッシの公的建物利用の道を開いた。
原口氏はLWCPCの立ち上げ当初から、家具業界へ参加を同協議会への参加を呼びかけてきた。木材会社など46社・団体が加盟する中で、家具業界からは1社にとどまっている。
「日本産材の規制を緩和しないと森林飽和が加速してしまう。国が補助して木材利用を進めるための策を講じるために、業界は声を上げていく必要がある」と原口氏は訴える。
今回の提案書は、いま家具業界が抱えている問題を総合的に国に突き付けた。これからその要望を実現していくために「さらなる家具業界の参加を期待している」と述べた。
※提案書はこちらからダウンロードできます。
カリモク家具・ウッドレガシー推進協議会提案書
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