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★【2023飛騨の家具フェスティバル】広葉樹活用へ飛騨から発信

大勢の聴衆にあふれ会場は熱気に包まれた

 10月21日から25日に岐阜県高山市で開催された「飛騨の家具フェスティバル」のメイン会場では22日、関連プログラム「広葉樹活用サミット2023in 飛騨」が行われた。同サミットでは主な発起人である長野麻子氏(モリアゲ代表)と林千晶氏(飛騨の森でクマは踊る取締役会長、Q0代表取締役社長)に加え、岡田明子氏(飛驒産業代表取締役社長、飛騨木工連合会副理事長)、及川幹氏(広葉樹活用コンシェルジュ)、松原千明氏(木と暮らしの制作所取締役)が登壇し、松本剛氏(飛騨の森でクマは踊る代表取締役)の進行で、それぞれ広葉樹活用を起点とする森、地域、ものづくりの未来のあり方について語った。

 同サミットは、日本の森林面積の約6割を占める天然林の中でも広葉樹に焦点を絞り、地域資源として活用し、林業や木工産業の促進につなげていくことを目的に開催した。冒頭あいさつに立った長野氏は、林野庁勤務時代に広葉樹の特性を生かした開発に興味が湧いたと話した上で「政府の手が届きにくい部分に光を当て、森林活用の多様性を維持することが林業や関連産業の活性化につながる」と説明。天然広葉樹林が豊富な飛騨から地域資源の見直しを図り、全国各地に波及させていきたい考えを示した。
 林氏は「木材産業は男性が支えてきたが、森を大切にするために性別は関係ない」と述べ、女性参加も促す形で「従来とは全く違う視点で木材の価値を追求していく」と強調した。
 その後に行われたプレゼンテーションでは岡田氏、及川氏、松原氏が、飛騨を起点とする広葉樹活用で今後の活躍が期待される取り組みを紹介した。
 岡田氏は、飛驒産業が26日に正式発表する前の情報として、同社が飛騨市と進めていた木材の低温乾燥技術の実証実験で確証を得たことから、高山市奥飛騨で温泉熱を利用する低温乾燥設備を備える栃尾工場を新設、稼働させる決定をしたと明らかにした。
 栃尾工場では、源泉温度68度の温泉熱で山水を温め、パイプを通じて乾燥室の熱源として供給する。これを利用する低温乾燥では、広葉樹を家具材とするために要していた乾燥時間を大幅に短縮できるのが特長。従来は天然乾燥に10カ月、さらに人工乾燥に4~5週間かけていたが、最長6週間で完了する。温泉熱を利用することで化石燃料からの転換を図る。乾燥した木材は近くの上宝工場で製材する。同工場は製品を最終流通させる過程の川中の役割を担う。
 岡田氏によると、飛驒産業の国産材の利用率は2021年時点で9・6%。栃尾工場を稼働させ広葉樹の活用を増やすことで、これを30年までに30%まで高める計画だという。
 及川氏は、広葉樹の流通に向けて「地域風土に根差した民芸品的な木材製品の創出を目指している」と方向性を語った。民芸品の「地域素材で用途を満たす」要素を産業規模で実現させる。そのためには、素材の特性と需要の双方をすり合わせた開発が重要で、地域木材業者らと拠点を立ち上げ、情報を集約させている。また、効率的で合理的なサプライチェーン(供給網)を構築する一方で、専門・分業化した人たちをつなぎ関係性を築いた上で、最終利用者まで届ける仕組みを整える必要があると指摘した。
 松原氏は、木と暮らしの制作所の理念「森と木と暮らしをつなぐ」の下で掲げる目標の一つである地域材の流通を促進させるため、作家と協力して家具開発を行っている。これまで小径木を利用したテーブルをはじめ、さまざまな樹種の家具をセミオーダーできるパッケージシステムや、乾燥時に割れた木材をあえて見せるデザインを考案したことなどを挙げ、広葉樹を流通させるには「(これまでの)概念を取り払って無駄なく使う」「この場所だからできることを考える」「木の魅力を最大限に引き出す」などが大切だと話した。

左から長野麻子氏、岡田明子氏、林千晶氏
左から及川幹氏、松原千明氏、松本剛氏

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