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★企業の炭素固定に税制メリットを 政府への要望活動を展開する木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会会長・原口博光氏 「企業努力超えた問題を解決」

家具の国産材利用を確認するためIFFT/インテリア・ライフスタイル・リビング会場を訪れた原口会長

 森林・林業・木材産業に必要な政策を政府に提案している木の総合文化・ウッドレガシー推進協議会(LWCPC)。今年で設立5年目に入った同協議会は、木を植えるために伐る文化、木を育てる文化、木を適材適所に造材し加工し使う文化、森林の恵みをレジャーとして楽しむ文化、自然の恵みに感謝して神々にお祈りする文化を総合文化として守り育成する活動を続けている。10月に新たな木材利用促進法が施行されるなど、国産材利用は新たな段階に入った。同協議会は設立当初から日本産材利用に関するさまざまな提言を行ってきた。原口博光会長は今、「日本産材を利用して炭素固定に協力することについて、税制的なメリットが必要ではないか」と主張している。

 COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)を控えて、世界のあらゆる産業がSDGsに向けて持続可能性の下で発展していこうとしてます。その一つとして、二酸化炭素(CO2)の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにするカーボンニュートラルがテーマになっています。
 環境問題に対する企業の在り方が問われています。地球温暖化によって気温が上昇し、災害も増えていることは明らかです。大切なのは、自然の中でCO2を吸収する森と海であることは言うまでもありません。国土の67%を森林が占めている日本だらこそ、世界最先端の取り組みができるはずです。まずは戦後植林したスギやヒノキを伐っていかないと植林できません。そのためには日本産材をできるだけ使っていくことです。
 グローバルな視点で見ると、日本は狭い国土ゆえに環境の負荷が大きくなっています。それを国がきちんとヘッジ(回避)して、産業を育てていくことが必要です。第2次世界大戦後も鉄鋼や自動車、コンピューターなど国がバックアップして産業を育てました。そこには大きな資金が必要なわけです。それは企業の自助努力を超えたものです。原木の供給が途絶えることなく、いつも製材工場に流れるようにするためには、しっかりと国が予算をあてて森林を整備しなければなりません。
 ウッドレガシー推進協議会は今年で5年目になります。協議会のスタートと同時に木の総合文化(ウッドレガシー)議員連盟が発足しました。つまり木材産業を議連が応援して、予算を獲得するお手伝いをしましょうということです。ウッドレガシー推進協議会に加盟する林業・木材団体の要望書が形になって、そこに結果として予算をつけ、木材産業の振興に役立てることが私たちの使命です。
 自助努力で解決できない問題を提起して、情報を断裂させないことが一番大事なことですが、木材産業はそこが弱い。私たちは政治団体ではなく、企業努力を超えた問題についてグローバルな視点でリスクヘッジを行うことを国に提起して、会員企業の置かれている状況を少しでも改善することを目的とした団体です。
 政官民ではなく「民政官」。民があって政治がある。それをいかに実行するかというところで諸官庁があるわけです。ですから私たちは発足当初から、民政官が一堂に会した合同会議を開き、最初から住宅、公共建築、一般建築、家具、建具に積極的に日本産材を使っていくことを国民運動として提言しました。日本産材を使うことによって、消費者や企業にメリットがある形で環境に貢献できるような制度が必要です。
 欧州では炭素税が導入され、日本では2012年に地球温暖化対策税(温対税)が導入されました。排出量取引制度など世界的にカーボンプライシングが進んでいます。企業においても、日本産材を利用して炭素固定化に協力していることに対して、税制的なメリットが必要ではないでしょうか。
 今回のIFFTでは、カリモク家具さんが国産材を使った家具を一堂に展示しました。日本の家具のリーディングカンパニーならではの展示だと思いました。2年前にプレカットの大手にお邪魔した時、日本産材はまだ15%ほどで、ほかは外国産材が使われていました。地球温暖化によって海水が温まり、台風が起きやすくなったり、オゾン層が破壊されたりして地球全体が大きな災害に見舞われることが大きな問題になり、CO2を身近なところから頑張って固定しましょうと考える人が増えています。まだまだこれからです。
 ウッドレガシー協議会の会員として、信州でカラマツの循環型林業を行っている株式会社吉本さんが加盟しました。これで川上から家具の川下まで会員がそろいました。今後は製材会社も入ってもらおうと思っています。川上、川中、川下それぞれの産業が等しくそろうことによって、もっと効果的に動けるようになると思います。(談)

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