ニュース2021.07.26
工務店のベガハウスが開発した「竹籠スツール」。デザインしたのはプランナーの長田友紀氏。同氏はスツールの企画に当たり①外で使える②汚れに強い③味わいが増す④手軽に持ち運べる⑤スタッキングできる―の5点をクリアすることを決めたという。
そこから「軽く、水にも比較的強く、素材は伸縮性があって、地域性があるもの」と考えて、素材に竹を選び、「竹のしなやかさと丈夫さにチャレンジする」をプロジェクトテーマに掲げた。そして、竹をどうスツールにするか検討に入った。
★試行錯誤の日々を経て現れた救世主
竹をそのまま使うと和の印象が強すぎ、民芸品のようになってしまう。薄い合板にすると反ってしまうし、集成材は重くなる。そもそも座面にしたときの強度が心配。いろいろと検討を重ねたが、形がまとまらず一年が過ぎた。
長田氏は竹を断念し、ほかの素材を検討したことも。しかし、その『浮気』が再起のキッカケになった。スツールを製作するに当たって「検討も、検証も、愛も足りなかった」と気付いたという。
その後、竹を編んで強度と柔軟性を担保するというアイデアに行き着いたものの、編んでくれる職人さんがなかなか見つからない。しかし、あきらめることなく竹産業振興センターへ通い詰めた。そこで出会ったのが竹職人の川添浩史氏だった。
「鉄骨の脚に笊(ざる)を載せるイメージのスケッチを見せた時、川添氏は首を傾げたが『でも、やってみよう』と言っていただいた。川添さんは救世主です」と長田は振り返る。
★竹の座面や脚との接合など次々課題
長田氏は竹の編み方について学び、竹の良さを生かして日が当たったときに影が美しく出る鉄線編みという編み方に決めた。
その後も座面の歪みをどうするか、鉄の脚との接合部をどうするかなど、課題が次々と立ちふさがるが、座面の枠は「タガ」の技術を用いることで解決し、接合部分は「シンプルに鉄の枠にのせる」ことでクリアした。
スツールの鉄製の脚は岐阜県にある杉山製作所に依頼。スマートで丈夫なスタッキングができる脚となった。
★家具製作から得た大きな成果
「鹿児島が竹林面積日本一であることを、みなさんに知ってもらいたい。日本の竹職人さんや鉄の素晴らしい技術を広く伝えていきたい」という思いから、長田氏はコンペへの出品を決めた。その結果、英国のdezeenアワードのファニチャー部門で高く評価された。
長田氏は、家具デザイナーの村澤一晃氏から「周りの人を巻き込みながらひとつの家具を作っていく、こういう製作の仕方ができるのは彼女独自の力。その結果、海外のコンペでファイナリストになり、人々が作品を通じてベガハウスという会社に興味を持ったのは大きな成果」と評価を受けた。
村澤氏はベガハウスについても「普段、工務店のプランナーとして仕事をしながら、業務時間内に家具を企画し、製作、商品化まで至っているのは、工務店としてはとても珍しい」と、同社の活動を高く評価している。
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