ニュース2021.03.17
神戸大学大学院の黒田慶子教授は、巨木化して伐採された同大学キャンパスのエノキや、神戸市内の街路樹利用に関する研究を進めている。前号に続いて、街路樹そして里山といった都市近郊の木材利用の可能性について聞いた。
産業廃棄物になる前に
―街路樹の資源量はどれくらいでしょうか。
そもそもの伐った街路樹を再利用する前提がなく、産業廃棄物になっているのが現状です。役所に再利用を考える部署もなかったので、資源量について調査のしようがありません。もし使うとしたら、10~20立方㍍というオーダーであれば木材を出せるのではないでしょうか。
―使えるはずの街路樹の廃棄が進んでいるのですね。
一刻も早く再利用に取り組むべきだと思います。都市を整備する中で、伐らざるを得ない街路樹があります。それらを「循環して使える」と示すことが必要です。
神戸市の街路樹の丸太(直径60~80㌢)は、厚さ40~60㍉の厚板と20~30㍉の板に、一部は神戸市の公園用ベンチの規格に合わせて製材されました。そのケヤキの厚板をカリモク家具が購入されて、今後はその木でいろいろと試してみたいとおっしゃっていました。カリモク家具は、いろいろな樹種の国産材を使いたいと言われていますから、その中の一つとして街路樹を使っていただけるという感触があります。私たちは今後、伐採予定の街路樹の再利用を進めるために、その材積などを電子カタログにしようと計画を進めています。
銘木珍重が邪魔する
―神戸大学キャンパスのエノキからテーブルを作る際に「エノキなんて誰も使わない」と言われたそうですね(前号参照)。街路樹もそうですが、はなから使えないと思われているものが多いのではないでしょうか。
神戸大学キャンパスのエノキはダイニングテーブルやキッチンユニットとして使われ、神戸市役所ロビーのベンチテーブルとしても使われています。
使う木材についてチャレンジされている木工作家さんもいますが、乾燥して板になった木材を使っているので、その木の生の姿をご存じないという方もいます。一方、大手のメーカーさんは、量の確保が必要だということは分かります。
―エノキのテーブルは、海外でも喜ばれそうな個性的なデザインですね。
エノキの変色とは原因が異なりますが、菌類(カビの仲間)の感染によってできた帯状の黒い筋がついたスポルテッドが、欧米ではやっています。そのマーブル模様の板が珍重されて、テーブルやキッチンユニットなどに使われています。日本は銘木珍重の伝統がある一方で、それが邪魔して、木の欠点ばかり見えてしまうのだろうと思います。
最近では、それを個性として捉える人も増えていますが、洋家具業界にはやはりまだ「オークやウォルナットしか要らない」というような風潮があると思います。日本の植生はとても豊かで、その結果として里山は樹種の多様性に満ちていることを思うと、種類の少ない輸入材だけを珍重するのは、どこかひずんで見え、アンバランスだと思います。
情報の流れをつくる
―早生広葉樹のセンダンの植樹も進められています。
センダン一点張りではなく、里山には豊富な樹種のストックがあるわけですから、それらの利用に目を向けてほしいと思います。大切なのは、木材を使う側にいかにその情報を伝えるかということです。製材屋さんの頭の中だけにとどめるのではなく、どこでどれだけの木材を調達できるかという情報の流れをつくらないと絶対に駄目だと思っています。
―里山の広葉樹の資源量についてはいかがですか。
林野庁の統計に天然林としての蓄積量の数字はありますが、里山の持ち主が農家(農村集落)であることが多いため、具体的な本数や材積は全く把握されていません。里山の国産材を使いたいという企業も、定期的にどれほどの量を供給できるのか気にされます。
伐る側が「来年の冬にここを0・1㌶伐りましょう」というようなことを誰にも伝えずに「言ってくれれば出します」ということでは駄目なのです。この山にはこれくらい在庫があり、持続可能な森林管理の下で、どれくらいの木材を出せるかということを伝えるようにしなければなりません。情報をどう流すか、私は山の立木に電子タグをつけて、伐採前から電子カタログにして「在庫の見える化」に取り組もうとしています。家具業界も、情報の流れができるように国産材の利用を進めていただきたいと思います。
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