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全国5工房が同一デザイン 地域材生かし製作 フォレストヴォイスがクラウドファンディングで提供

全国5つの工房がそれぞれの地域材を使って製作した「森(きりん)/giraffe」
フォレストヴォイスの桃澤社長

 地域材を使った家具の専門店「フォレストヴォイス」(東京都渋谷区)は10月9日、同一デザインのオリジナル・スツールを全国5つの工房がそれぞれの地域材を使って作り、クラウドファンディング(CF)のリターンとして提供するという、これまでにない手法によるブランディングを開始した。

 フォレストヴォイスは、全国各地の工房が、その地域で産出された木材を使って作り上げた製品を、背景にあるストーリーとともにブランディングして販売している。
 代表の桃澤直彦氏は「お店のコンセプトと製品のストーリー性を明確に伝えるためにクラウドファンディングという手法を選んだ」と話す。
 CFのサイトでは、国産家具のほとんどが、国産材ではなく外国産材が使われていることについて「日本の森林やそれにかかわる地域・人々にとって大きな問題」と提起している。CFを通じて集まった資金は「日本の森とそれを育み守る人々、家具加工の技術を持続可能なものにするために活用する」という。
 同店初のオリジナル家具の名前は「森(きりん)/giraffe」。このほど発表されたウッドデザイン賞を受賞した。森と書いて木(き)林(りん)と読む。giraffe(ジラフ)は、キリンの英語表記。その名の通り、すらりと伸びた左右非対称の三本脚が、有機的な印象を与える。
 樹種はブナ、タケ、ケヤキ、クス、スギの5種類の無垢材から選ぶことができる。座面の形状に、5つの工房の特色が表れている。CFのサイトでは、それぞれのスツールの背景にあるストーリーを、動画を交えながら紹介している。
 デザインは新潟県糸魚川市の工房が手掛けた。「キリンが一歩踏み出したような形に見えたのでジラフと名付けた」という。同工房は樹種に糸魚川のブナ材を使用。「ナチュラルでピンク色。つるつるすべすべになる材種」で、熟練の職人がカンナ削りの匠の技を駆使して作っている。
 「竹の町」として知られる真備町(岡山県倉敷市)の工房は、孟宗竹(もうそうちく)を使用。縦割りした竹をミルフィーユ状に何層も重ねて作っている。
 神奈川県横須賀市の工房は、手作り椅子を専門に手掛けている。ケヤキを使い、独特の赤みのある色合いになっているのが特徴。
 福岡県大川市の工房は、大川家具の発祥となった伝統のタンス作りに使われているクスノキ独特の杢(もく)の美しさを生かしている。
 「吉野杉」ブランドの産地の一つ、奈良県東吉野村の工房は、軽さと温かさ、スギ独特の真っすぐな柾目の座面を特徴としている。
 リターン価格は1脚3万5000円、5脚セットで16万5000円(いずれも税込み)。CF大手「キャンプファイヤー」から申し込む。
https://camp-fire.jp/projects/

川上から川下までつなげる
「本物の家具を伝えたい」

 桃澤代表(55)は大手インテリア会社を退職した後に昨年、フォレストヴォイスを立ち上げた。
 30年を超える在職期間中、顧客への提案に採用される高級家具のほとんどは欧州製だった。「お客さまから国産家具のリクエストもありましたが、知られている国内メーカーはごくわずか。知っていたとしても、日本の木が使われていると思っている方がほとんどでした」
 「国産家具」の定義は、日本国内で生産されたもので、原材料までは問われておらず、外国産材を使っているメーカーも多い。林業の衰退を目の当たりにしながら「日本の木がこれだけあるのに、なぜ使わないのか」という疑問から専門店の立ち上げに至った。
 会社設立後は、全国の工房を回って、その地域の木材で作られた家具を選び抜いた。現在は10以上の工房ネットワークをつくり、個性豊かな家具を店頭に展示して個人向けに販売している。
 年内には材木商の歴史が香る江東区の深川に店を移転する。
 「林業の川上から家具製造・販売の川下までつながるビジネスモデルをつくり、本物の家具を伝えることができればと思っています」

富山のスギが立ち姿勢の体を支えてくれる「tatiisu(タチイス)」。2017年ミラノサローネ出展。ドイツデザインアワード受賞。デザインは荻山将也氏
座に横須賀のケヤキの一枚板を使った「波のスツール」。接合部には金物は一切使っておらずホゾやクサビで組んでいる

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