ニュース2019.11.06
日本家具産業振興会は「安全・安心・環境」に配慮した国産家具を生産するメーカーを「国産家具マーク」の表示事業者と認定している。名古屋市中区大須の老舗家具店・タカラ屋家具は10年ほど前から国産家具を重点販売する方針を打ち出し、飛騨産業などのメーカーと協力して顧客に求められる国産家具の開発や、国産品の良さがよりわかりやすい店舗づくりなど、国産品の普及に力を注いでいる。タカラ屋家具の林宏一郎社長に国産家具販売のこれまでと今、今後の方針を聞いた。
輸入品からの脱却
当社の創業は大正12年、米屋でスタートし戦後、家具商に変わりました。
私が三代目の社長に就任したのは14年前、38歳の時でしたが、24歳で入社したころ婚礼ダンスが売れなくなって箱物から脚物に移っていきました。それと同時に輸入品が入ってくるようになりました。
当社も20年間、輸入品を取り入れていたのですが、10年ほど前に中国も人件費が上がって輸入品の単価が上がってきたところで「ここで国産の長く使える製品を売るべきではないか。国産品に舵を切ろう」という方針を打ち出しました。そのころは4万9800円の食卓セットを販売していましたから、いきなり40万円前後の食卓を売っても、お客さんに本当に買ってもらえるのだろうかという心配がありました。
しかし販売する側が、家具の本質や家庭にあるべき姿を伝えることによって、家具を家族の一員のような立ち位置にしていただけるだろう―そういった思いを共有していただける方が、少なからずおられるということが分かってきました。
時間をかけて説明
国産家具の販売は時間が掛かるのですが、基本的に良いものを販売するということで、値引きなどは極力抑えて、価格自体にもお客さまにご満足していただけるよう努力しています。
当社の販売スタイルは、座っていただいて品質を確認していただき、お客さまの家族構成などを伺った上で、何年ぐらい使う予定かも聞いて、お薦めするようにしています。滞留時間を延ばすことはとても大事なことなので、そういう点では、かなりゆっくりとお客さまとお話するようにしています。
最近は欧米のようにお父さん、お母さん、子供さんによって椅子が違ったり、かつての食卓5点セットのような同じスタイルの椅子が、4本ではなくて2本単位であったり、一本ずつバラバラとか、そういう選び方をする方もこの夏ぐらいから増えてきています。
それには椅子に座っていただいて「本当に座り心地がいいね」というとこまでいかないと決まりません。家族それぞれの方が納得いく椅子を選択できるようにするためには、同じメーカーで、できれば同じグレード、同じ品質のものをそろえるのが望ましいのです。
輸入との違い明確に
形は同じでも素材が違うことによって手触りが違うというふうに評価いただく方もいらっしゃるので、そのあたりの細かい違いも家具を選んでいただく楽しみになっていると思います。
また一般のお客さまは安価な輸入品も使われていると思いますので、金額の事は一切言わず「飛騨高山の国産ですよ」と違いを明確に分かっていただくところから始まります。椅子に座るのも食事などの目的ではなくて、椅子に座ること自体が、くつろいでいただけるスローライフの道具―そのような捉え方をしていただくように心掛けています。
やはり国産いいね
年齢的には50代の方が50万円台を買われ、30代前半の方が40万円前半ぐらいにちょっと素材落として購入されるというパターンも増えてきています。ただ素材を下げるという表現ではなくて、ブナには曲がりに強いなどの特性があり、素材それぞれの良さがあるので、そこをしっかりとお客さまにアプローチして、悪いものを買っているという印象を与えないように、お客さまに満足していただけるような販売方法を心掛けています。
国産家具マークの普及は、差別化として良いことだと思います。残念ながら業界への周知はまだ十分ではないと思いますが、セールストークの一つになりますので、ぜひ生かしたいです。
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