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海外出展に「手ぬぐいを」 老舗の小嶋与商店 油箪の伝統今も

小嶋与商店の小嶋社長と愛用の自転車
落語家や飲食店の手ぬぐい。バンドのライブや退職記念に手ぬぐいをプレゼントする人もいるという

 小嶋与商店は婚礼家具の風習が色濃く残っていた1925(大正14)年、桐だんすを陽光や蛍光灯による焼けや汚れから守る油箪(ゆたん)と鏡掛けの製造をなりわいとして小嶋与惣吉氏が創業した。今も浅草の下町に隣接する台東区寿を拠点に、京都から生地を仕入れ、裁断・縫製して家具店などに納めている。
 ほかにも、手ぬぐいや風呂敷、神棚に掛ける神前幕などの製造・卸・販売も手掛ける。
 与惣吉氏、2代目の与惣治氏の後を継いで3代目にあたる小嶋範之社長は「昔は家具屋さんが年始あいさつに手ぬぐいを持ってお客さんに配っていた」と振り返る。小嶋与商店の手ぬぐいをひいきにしている落語家も多い。浅草の飲食店がお客さんにプレゼントしたり、とびの頭(かしら)がお祭りの際に地元に配ったり、中には、退職記念に名前を入れて進呈するサラリーマンや、ライブの際に手ぬぐいを配るバンドも。
 浅草で染め絵手ぬぐいを販売している「ふじ屋」によると「外国人観光客の購入が増えている。桜や七福神などの絵柄が人気」という。「家具の海外出展の際に会社のロゴやブランドを入れて来場者に渡すと喜ばれると思う」と小嶋社長。新製品のお披露目の際、訪れた人たちに配るノベルティー(無料配布する記念品)としても使えそうだ。
 昔ながらのたたずまいを残す店の引き戸を開けると「物心ついた時にはすでにあった」という古いタイプの自転車が。かつてレースやスポーツ用自転車で知られ、競輪選手にも愛用者が多かった片倉自転車が作ったものだ。「子どものころはこの自転車が嫌いで、壊そうと思ったが壊れなかった」ほど頑丈だ。
 昔ながらの伝統や風習を大切にして、先代からの手仕事を絶やさず守り続けている。今もこの自転車に乗って得意先を回る。「質屋の前を通ったら、自転車好きの店主に呼び止められて写真撮影をお願いされた」と笑いながら話した。

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