ニュース2018.06.06
経済産業省と特許庁は5月23日、デザインの国際競争力強化に向けた取り組みとして注目されていた「産業競争力とデザインを考える研究会」の報告書をとりまとめて発表した。「デザイン経営宣言」を表紙にうたった報告書では、デザイン経営の啓発、意匠法の改正、人材育成、補助制度や税制の導入などを提言し、経営へのデザイン責任者の参画や、事業戦略の最上流でデザインが関与する必要性にまで踏み込んでいる。
日本の産業力強化へ
新税制導入・意匠法改正も
研究会は、一橋大学大学院商学研究科教授の鷲田祐一氏が座長を務め、プロダクトデザイナーの喜多俊之氏、ロフトワーク社長の林千晶氏をはじめ、ソニー、サントリー、マツダなどの知的財産やデザインの専門家が参加していた。
報告書は、デザインを企業のブランド価値とイノベーションを実現する力になるものと位置づけ、「デザイン経営」の推進を提言。イノベーションは技術革新を表し、発明と同じ意味で使われることが多いが、報告書では「社会ニーズを利用者の視点で見極め、新しい価値に結び付けること」が本来の意味であり「デザインが介在してイノベーションが実現する」としとして位置づけている。一方で1990年代以降、海外に比べて日本は、意匠登録が遅れていることを指摘している。
デザインの投資効果として、4倍の利益や2・1倍の成長を遂げた海外企業の事例を挙げている。
さらに、デザイン経営を推進し、日本の産業力を強化するために政府が実施するべき政策として①デザインをめぐる環境変化についての情報分析および政策提言②産業界へのデザイン経営の啓発③意匠法の改正④高度デザイン人材の育成⑤海外からの人材獲得⑥デザインを移管する補助制度の充実、税制の導入⑦行政におけるデジタル・ガバメントの実践⑧デザイン思考を導入する効果が期待できる行政の有望プロジェクトの発掘―を提言した。海外からの人材獲得では、新たなビザの創設や取得条件の緩和にまで踏み込んでいる。
別冊として、意匠制度の課題や今後の検討の必要性に関する「産業競争力の強化に資する今後の意匠制度の在り方」、国内外企業におけるデザイン経営の具体的な取り組みに関する「デザイン経営の先行事例」もまとめた。
今後は研究会の成果を踏まえ、産業構造審議会の場で有識者や産業界などとの意見交換を進め、政策の具体化に向けて検討を進める。
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