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★全木連「顔の見える木材での快適空間づくり事業」 次世代の森林を育成するために 木材の付加価値を高める事業を支援

センダンなど国産材を使った福岡・大川家具工業会の取り組み

 円安による輸入材高騰の中、家具業界では国産材利用の選択肢を視野に事業を進めるケースが増えている。全国約1万4500社の木材・木製品製造流通会社が加盟する一般社団法人全国木材組合連合会は、林野庁補助事業「顔の見える木材での快適空間づくり事業」を通じて国産材活用事業を支援してきた。本年度は6月に公募を行い、事業が進められている。同事業の支援によるさまざまな家具関連プロジェクトを紹介する。

 同事業は、林野庁補助事業の令和4年度建築用木材供給・利用強化対策の一環。建築材をはじめとして家具、内装材、建具など幅広い分野で地域に根ざした木材の利用拡大、普及活動を実施する、川上から川下までの分野横断的な連携グループへの支援を行っている。
 2021年に策定された森林・林業基本計画では、再造林等などで森林の適正な管理を図りながら、林業・木材産業の成長産業化に取り組むことにより、社会経済生活の向上とカーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」を実現していくことをうたっている。
 19年の国産材の利用量は3099万立方㍍まで増加し、同計画における20年の目標値3200万立方㍍をほぼ達成した。一方で、国産材の製材用材の利用量は微増にとどまり、20年の1500万立方㍍の目標値に対し、19年は1288万立方㍍だった。
 政府は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(木促法)」を改正した「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(都市の木造化推進法)」を昨年10月に施行し、木材利用を公共建築物から民間建築を含めたものへと広げようとしている。

多彩な地域とプロジェクトを支援

 全木連は、2019年から「顔の見える木材での快適空間づくり事業」を展開して、A材丸太及び地域材の利用拡大と普及活動の積極的な拡大に取り組んでいる。福岡・大川家具工業会(福岡県大川市)の国産材活用事業に支援が行われた結果、センダンなどによる新製品開発の成果につながった。
 19年度の事業で採択された一般社団法人ソマミチ(長野県松本市)は、木とともにあるライフスタイルを表現する製品として、アカマツ幅はぎ材テーブルを開発した。
 西川材の普及啓発・活用推進を行っているNPO法人西川・森の市場(埼玉県飯能市)は、福祉・保育関連事業者との協働による製品の試作に加えて、スギやヒノキを使った一般消費者向けの家具製品の試作を行った。
 20年度の事業に採択された一般社団法人京都府木材組合連合会(京都市)は、府内人工林の大径材の特性を生かした付加価値の高い製品開発と需要拡大に取り組み、保育園と連携して家具や遊具の開発を行った。
 古川ちいきの総合研究所(大阪市)は、高野材を用いた家具製品を開発するとともに、高野山の歴史や文化と組み合わせて地域一体型のPRプロジェクトを企画・実施した。。
 大阪の木材活用に取り組む「おおさか都市木循環プロジェクト」(大阪市)は、森と都市の継続的な循環を生み出すビジネスモデルの構築を目指して、家具を開発した。
 こうしてみると、実に多彩な地域とプロジェクトが採択されていることが分かる。森林・林業を持続可能な循環型の経営の軌道に乗せて木材の安定供給を実現するためには、木材の付加価値を高め、その資金を山に返すことが課題となる。地域に根ざした木材の利用促進は、山元の立木の価値を高めるとともに地域経済の活性化にも寄与し、次世代の森林を育成することにつながる。

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